第13話 揺れる協力者と気になる噂の裏側
昼休み、いつものようにクラスを抜け出した俺は、校舎裏で鳳(おおとり) 真琴と落ち合う予定だった。ところが、その行きがけに、思わぬ人影が視界に入った。
「……彩花?」 壁際でスマホを握りしめ、やけに落ち着かない様子の元彼女。近づいて声をかけると、彼女はびくっと肩を震わせた。
「阿久津くん…ちょうどよかった。あの…この前はごめんね、変なこと言って」
「別に。俺のほうこそ、きつい言い方したし」
微妙に気まずい空気が流れる。そんな俺たちを遠巻きに見ている生徒がいるのも気になるが、もう気にしていられない。
「それで、なんか進展あったの? 瀬良について」
俺が小声で問うと、彩花はそっと視線を伏せてから答える。
「実は、あれから瀬良たちが色々焦ってる雰囲気を感じるの。『なんでこんな噂が広まってるんだ』とか、『ヤバい情報を握られてないか』って…」
「ふーん、やっぱり動揺してるんだな」
予想どおりだ。俺と真琴が手に入れた証拠がまだ公には出てないが、誰かしらがリークしているかもしれない。あるいは瀬良自身が後ろ暗いことを自覚しているから不安になっているのか。
「瀬良は『余計なことしたら許さない』って感じで周りを牽制してるんだけど、それで相沢くんもピリピリしてて…。私、本当はもう一緒にいたくないの」
「じゃあ、はっきり断れば? あいつらとは距離を置くって」
当たり前のように言うと、彩花はしゅんと肩を落とす。
「そうしたいけど…怖いんだ。瀬良の取り巻きに何されるかわからないし。私、何もできないし…」
「何も…ね」
正直、俺も彼女がどこまで本気か疑っている部分はある。でも少なくとも、彩花の怯えが嘘に見えないのも確かだ。
「わかった。無理に切り出さなくていいから、もしあいつらの会話で『文化祭の金』とか『データ』とかが話題になったら、こっそり教えてほしい」
「うん、わかった。実は、瀬良のスマホ画面に『領収書』みたいな文字が見えたときがあって…何か探してるみたい」
彩花がそう言い終える前に、角を曲がってきた真琴が合流する。
「ごめん、遅くなって……あら、彩花さんも?」
「えっと…ごめんなさい、邪魔だった?」
「ううん、いいの。阿久津くんと話してたのね。私もね、ちょっと気になる噂を聞いたの。誰かが匿名で学校の掲示板に『瀬良が実行委員の金を勝手に使った証拠がある』って書いてたみたい」
「それって、倉木くんが書いたのかな?」
俺が尋ねると、真琴は首をひねる。
「本人は否定してた。もしかしたら、私たちの周囲の誰かが、ちょっとずつ瀬良の悪事をリークしてるのかも。あくまで噂レベルだけど、ますます瀬良が追い込まれてるのは確か」
彩花は戸惑いの表情を浮かべて口を開く。
「私、どうしたらいいのかな。もし『瀬良が犯人』って確定して、あの人が全部バレたら…きっと報復もあるし…」
「怖いなら無理しなくていい。でも、手を貸してくれたら、私たちも助かる」
真琴がやわらかい口調で言うと、彩花は少し安堵したように頷いた。
「じゃあ、聞こえたことがあったらまた報告する…あんまり期待しないで」
「ありがとう。気をつけてね」
そう言って見送ると、彩花は急ぎ足で立ち去っていった。
「さて…あの子、どこまで本気かしらね」
真琴は彩花の背中を見つめつつ、小さくため息。俺も同感だけど、今は人手が多いほうがいい。瀬良たちに近づくのは彩花だけだろうから。
「まあ、上手く乗っかるしかないだろ。あいつらが怪しい動きをしたら、すぐに叩ける準備をしておく」
「うん。私たちも、そろそろ証拠を本格的に公開する段取りを決めないとね」
真琴の言葉に頷く。掲示板の書き込みやSNSの噂は徐々に火がつき始めた。ここでタイミングを誤らず、一気に瀬良を追い詰める。
その日の午後、俺と真琴はこそこそと対策を練りながら、クラスメイトや放送委員の倉木に協力を仰ぐために動き回った。確信が少しずつ膨らみ始めると同時に、瀬良たちの反発がさらに強くなる予感もする。
(でも、もう逃げない。この機を逃せばずっと冤罪のままだし、何よりあいつらのやりたい放題を許すわけにはいかないんだ。)
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