第14話 急襲の放課後と不穏な衝突

 放課後、俺は真琴と一緒に下校するつもりで昇降口へ向かっていた。最近はクラスでも“横領犯”呼ばわりが少し減ってきたが、そのかわり「鳳さんといつも一緒にいるよな?」という微妙な視線も感じる。

 そんな周囲の目も気にしないフリをしつつ、靴を履き替えていると、突然後ろから荒い声が響いた。


「おい、阿久津! ちょっと来いよ!」

 振り向くと、そこには相沢と数名の取り巻きが。瀬良の姿はないが、険しい顔つきでこちらを睨んでいる。

「なんだよ、いきなり…」

「うるせぇ! いいからこっち来い!」

 そのまま腕を掴まれ、半ば強引に昇降口の外へ引きずり出される。真琴が「やめて!」と声を上げるが、相沢の仲間が道を塞いでいる。


「なんでこんな急に…」

「阿久津、お前ら、何してるんだ? あんまり瀬良先輩を舐めてると痛い目見るぞ」

 相沢の息が荒い。どうやら何か焦っている様子だ。

「知らないね。むしろそっちこそ何企んでるわけ?」

 俺が強い口調で返すと、相沢は舌打ち。

「黙れ…俺だって、好きでこんなことしてるわけじゃねえんだ。けど、瀬良先輩に逆らうと後が怖いんだよ」


 その言葉に、どこか悲痛な響きを感じる。相沢だって“被害者”の一面があるのかもしれない。だが、今はそんな同情をしている場合じゃない。彼らはあくまで俺たちを潰しにかかっているのだから。


「なら、なおさらバカらしいだろ。あいつの言いなりになって、お前は何か得するのか?」

「うるせぇ…!」

 相沢は持て余すような苛立ちをぶつけてくる。そのとき真琴が少し離れた位置から声を張り上げた。

「相沢くん、私たちと瀬良くん、どっちが正しいかなんてもうわかってるでしょ? そんなのに付き合うのはやめなよ!」

「う…っ」

 相沢が言葉に詰まった瞬間、取り巻きの一人が割り込んでくる。

「何言ってんの? 鳳さんこそ犯人じゃないの? 昔からイイ子ぶってたくせに」


 ますます声を荒げる取り巻き。真琴の表情がぐっと引き締まる。

「私のことはともかく、阿久津くんは絶対やってない。証拠も用意してるし、近々みんなに見せるつもり。……そしたらどうなると思う?」

 ピタリと空気が止まる。相沢の顔から血の気が引いたように見えた。彼らだって内心は薄々感じているのだろう。瀬良が真っ黒だってことを。

 「いいか、ここで手を引くなら、まだ遅くないよ。私たちは無実を明らかにするだけ。あなたたちをどうこうしたいわけじゃない」

 真琴が静かな口調で言うと、相沢は苦悶の表情を浮かべ、そして振り切るように吐き捨てた。


「…今さら後に引けるかよ。俺らもやるしかねぇんだよ。瀬良先輩が勝てば問題ない。……邪魔するなら、遠慮なく痛い目に遭わせる」

 そう言い残して、相沢たちは足早に立ち去る。こちらが証拠を握っていると知りながらも、瀬良を裏切れないのだろう。


 昇降口前に残された俺と真琴は、ほっと息をつきながら視線を交わす。

「大丈夫? 無理に腕を引っ張られてたみたいだけど…」

「平気平気。それより、この感じだと近々瀬良たちが何か仕掛けてくるかもな。あっちも追い詰められてるってことだ」

「そうね。……なんだか嫌な予感がするけど、私たちも準備しとかないと」


 校門を出る頃には夕焼けが濃く染まり、冷たい風が頬を撫でる。相沢の動揺した表情が頭に焼き付いて離れない。

 瀬良への恐怖と、自分の保身と、後戻りできない焦り。それが彼らを縛っているのだろう。

 (でも、どれだけ抵抗されようと、もう止まらない。あいつらは俺たちをはめた罪を必ず償わせる)

 心の中でそう誓い、強く拳を握った。もはや冤罪を振り払うだけでなく、瀬良が振りまいてきた数々の悪行を白日の下に晒すときが近いのを感じる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る