第16話
むしろ今までおんぶに抱っこ、はたまた完全にのしかかっていた状態から解放されて清々しているんじゃないだろうか。冗談だけど。これはさすがに卑屈すぎるし優しい悟はきっとそんなことは考えない。
入れたての緑茶を息を吹きかけながら冷ましてこくんと一口飲みこむ。やっぱ羊羹のこってりした甘さを堪能した後は緑茶のこの苦味だよね。濃いめに入れたこの感じがたまりませんな。
わたしがお茶を飲んでいる間飯田くんは何かを考えている様子だったので口は挟まずに待機の構えを貫く。決して聞くのが面倒だったとかではない。断じて違う。
空になった湯呑みを置くと同時に「なぁ、」と声をかけられたので目の前の飯田くんに視線を向ける。
ふざけた様子はなく神妙なさまは普段のイメージとはかけ離れていて何か変なものでも食べたのかと思わず勘ぐってしまった。
「俺、今の今まで羽野が欲しいとか言ってて情報とかそれなりに持ってるけど実はちゃんと会ったのって今日が初めてだったんだよ。」
「発言だけ聞くと危ないよ。ストーカーっぽいよ」
「茶々入れんな」
「すみません」
ここは確かにわたしが悪かったと素直に謝れば「なんだ。変なものでも食ったか?」と訝しげな表情とともに言われた。飯田くんも大概紗衣と変わらず失礼である。
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