第28話:闇の王の本拠へ突入!?


 翌朝


 集落に新しい情報が舞い込んできた。


 先日襲撃してきたビロックの一味が

 「闇の王の城」へ戻ったらしいという目撃談だ。


 さらに、闇の王がこの地を本格的に支配するため

 近いうちに大軍勢を繰り出すという噂まで聞こえてきた。


「このままじゃ、また集落が危ない……」


 俺は老人グラードと相談し、イリスとともに闇の王の本拠を叩くことを考える。


 イリスも黙ってうなずいた。


「どうせいずれ衝突する運命なら、こっちから行く方が早いわ。

 捕捉される前に仕掛けてやりましょう」


「よし、決まりだ。準備して出発しよう。

 皆さんは守りを固めて待っててくれ……絶対に戻るから!」



◇◇◇



 こうして、俺とイリスは魔物の巣窟とも言われる闇の王の本拠を目指し

 足を進める。


 道中、崩れかけた城門や朽ちた廊下を抜け

 雑魚モンスターを次々と撃破しながら進むのだが――驚くほど順調だ。


 腕の“あざ”からくる熱が時折感じられ

 俺はこれまで以上に“能力”を使いこなせている気がする。


「はあっ!」


 光の衝撃波で魔物の群れを一掃。


 イリスが「まるで雑魚掃除」と感嘆するほどの効率だ。


 俺も自分の体が軽く感じる。


 やっぱりこの腕の紋様には、俺を強化する作用があるとしか思えない。


「なんかすごいな……今までより魔力? 

 じゃなくて、力の流れが明らかにスムーズになってるんだ」


「ええ。危なっかしいけど、頼もしいわ。」


 イリスは顔をそらしてそう言うが、彼女の杖さばきも相変わらず見事。


 二人で連携すれば、このまま勝てる気がする。



◇◇◇



 本拠の奥に進むと、大きな扉がそびえ立っていた。


 重厚な造りで、まるで最終エリアを思わせる。


 イリスが杖を一振りして魔法陣を展開するが

 扉はロックがかかっているらしい。


「ここが闇の王の玉座の間……ってわけね。どうやって開ける?」


 イリスが眉をひそめる。


 俺は軽く肩を回してから、右腕の紋様に呼びかけるように力を込めてみた。


「だったら、このチート能力で直接ブチ破るまでさ!」

「はあ? なに無茶言って……」


 イリスが止める暇もなく、俺は全力で衝撃波を放つ。


 ――ドゴォォンッ!!


 凄まじい轟音とともに扉が歪み、中央からヒビが走る。


 そのままバラバラに崩れ落ち、門が開いた。


 イリスは呆れ混じりに目を見開く。


「本当にブチ破るなんて……馬鹿か、あんたは」

「いや、通れりゃいいんだろ? 細かいこと言うなって」



◇◇◇



 扉の先には荘厳なホールが広がり、闇の魔力が漂っているのが肌で感じ取れる。


 そこに待ち受けていたのは、先日襲撃にきたビロックとその手下数名。


 それに加え、黒いローブを纏った一際オーラのある者たちが並んでいた。


「よう、ガキども。よくも俺の邪魔をしてくれたな……

 闇の王様の命令で、ここでお前らを血祭りに上げてやる!」


 ビロックが斧を構え、仲間たちが笑い声を上げる。

 しかし、奥の影から低い声が響いた。


「貴様ら、その紋様……まさか“ヤツ”の引き金だというのか……!」


 見ると、ローブの幹部の一人が俺の腕のあざを凝視して憎悪を滲ませている。


 「光**……!」などの単語が小声で飛び出すが、

 俺とイリスには何を意味するかまったくわからない。


「何言ってるか知らないけど、黙って倒れてもらうぞ!」


 俺は構えを取り、闇の一団と激突。


 イリスも同時に魔法を展開する。



◇◇◇



 ビロックや幹部たちは手強く

 いくつもの暗黒魔法が空間を歪ませるように襲いかかる。


 ホールの床が抉れ、柱が倒壊するほど激しい衝撃。


 イリスが素早くジャンプして避けるが、逃げ場が狭い。


「ここでやられちゃたまらん……!」


 俺は右腕のあざから伝わる熱を信じて

 光のオーラを全身に纏うイメージを強く描く。


 強化された謎の力が、ブワッと輝きを増す。


「な、なんだその光は!?」


 ビロックが目を剥く。


 幹部らは「やっぱり“ヤツの引き金”か……!」と苦々しい声を上げる。


 俺自身も、これが何なのかは理解できていない。


 ただ明らかに“力が湧き上がる”感覚がある。


「いくぞ……っ!!」


 一息で距離を詰め、ビロックを殴り飛ばす。


 斧が弾け飛び、彼の体が壁にめり込むほどの衝撃。


 さらに幹部の黒いローブがどれほどの呪文を放ってきても

 イリスの黒雷と俺の光の衝撃で容易にかき消せる。


 俺とイリスの連携は抜群だ。


 彼女が後方支援する合間に、俺が前衛で無双。


 幹部の一人を蹴り飛ばし、もう一人を光の衝撃波でダウンさせ……

 敵はもはや惨敗状態だ。


「ば、ばかな……闇の王様に伝えねば……!」


 ビロックはボロボロの姿で、よろよろ立ち上がりながら逃げていく。


 幹部らも尻尾を巻いて退散。


 俺は追いかけようかと思ったが

 ホールが崩れて危険なので追撃は無理そうだ。



◇◇◇



「ふう……何とか勝ったな。でも、闇の王は……いないのか?」


 ホールの奥を覗いても、それらしき気配はない。


 結局、この城は手下たちの出先だったのかもしれない。

 イリスが杖を収めながら、腕のあざを指さす。


「レイ、その……腕、大丈夫? さっきすごく光ってたけど」

「うん、やっぱり熱い感じはあるけど、何ともない。

 むしろ前より調子がいい気がするし……」


 謎の力が覚醒したらしいが、具体的に何なのかわからない。


 光**?後半は良く聞き取れなかったな。


 わからないことだらけだが

 とりあえず一つわかったのは俺がますます強くなったということ。


 イリスもまんざらではなさそうに見える。


 互いに言葉を交わさないが

 この世界で生き残るには大きな武器になり得る……そんな空気だ。



◇◇◇



 周囲の敵は消え、闇の王の本拠らしき場所は荒れ果てた残骸と化した。


 「闇の王を倒すまでまだ時間がかかるかも……」とイリスが呟く。

 だけど、俺はその目をまっすぐに見返して言う。


「そいつがどれだけヤバいやつでも、これだけの力があれば勝てる。

 俺たちなら、きっと……!」


 あざの輝きが微かに増して、右腕の奥で高揚感が満ちる。

 何の因果か知らないが、きっと“次の戦い”はもっと大きなものになるだろう。


 それでも、俺は新たな力を頼りに戦い抜いてみせる。

 

 ――決して諦めない。


 地球へ帰るためにも、ここで終わるわけにはいかないのだから。

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