第27話:レイの身体に異変!? その正体は何だ…?


 「……何だ、この妙な感じは。」


 朝方、集落で眠りについたはずの俺――黒辻レイは、違和感で目を覚ました。


 身体中にダルさが残る程度ならいつものことだが

 今日は明らかに“それだけじゃない”何かがある。


 右腕の内側あたりが、うっすら光っている気がする。


 布団をはだけて確認してみると

 そこには薄い紋様のような“あざ”が浮かんでいた。


 モヤッとした光を放っているように見えるが、痛みはなく

 でもぞわっと肌が泡立つような奇妙な感触がある。


「何だこれ……こんなの、いつできた?」


 呟く声に、横でまどろんでいたイリスが目を開けた。


「……レイ、うるさい……朝っぱらから何してんの?」

「いや……ちょっと見てくれよ。腕に変な模様が……」


 イリスは少し不機嫌そうな顔でこっちを見やり、あざを見つけた瞬間

 眉をひそめる。


「なにこれ……? 魔法陣……ってわけじゃないわよね……」

「わからん。でも、痛みとかはないんだ。

 触ってみても温かいような気がするだけで……。」


 ただ事じゃない予感はある。


 俺の“謎の力”が変化しているのだろうか? 

 それとも闇の王が仕掛けた呪い? 


 頭の中で疑問が渦巻く。


 イリスも、そっと指でなぞりながら小声で言う。


「これは……なんだか“光”の気配がある。

 あんたの力が強化されたみたいに感じるけど、私にも詳細はわからないわ。」

「そっか……」



◇◇◇



 寝起きで変な現象に悩まされていると

 集落の人々が朝の支度を始める音が聞こえてきた。


 仕方なく、紋様を隠しながら納屋を出る。


 イリスも少し考え込んでいるようで、口数が少ない。


 子供たちや老人グラードが「おはよう!」と笑顔で迎えてくれるけど

 正直、今はそれどころじゃない。


 昨日の闇の王の手下による襲撃で、みんなが不安を抱えているはずなのに

 その表情に暗さがないのが救いだ。


「レイさん、イリスさん、本当にありがとうございました。

 お二人のおかげで怪我人も出ずに済みましたよ……」


 グラードがそう言いながら、簡単な朝食を差し出す。


 パンのようなものと野菜スープ。

 イリスはふと辺りを見回すが、今のところ襲撃の気配はないらしい。


 その静けさが逆に落ち着かない。


 俺は右腕のあざを意識しつつ、食事を手早く終えた。



◇◇◇



 食後、イリスと共に集落の外れを巡回する。


 昨日の手下――ビロックなる男が再度襲ってくる可能性もあるし

 何らかの備えを考えなきゃいけない。


「……あざについて、何か思い当たる節はないの?」


 イリスが唐突に聞いてくる。


 昼間の巡回をしながら、俺も考え込んだが、やはり思い当たることはない。


「異世界転移したからか、俺のチート能力が進化してるのか……

 でも、まさか魔王の血とかそういうのじゃないよな?」


 冗談っぽく言ってみたら、イリスがビクッと肩を揺らす。


「ま、まさか……。それはないわ。

 あんたは“勇者の力”を使いこなすタイプでしょ。魔王の血とは真逆だと思う。」


実はそこに大きな因縁がありそうだけど、俺は知る由もない。



◇◇◇



 やがて、その日も夜になる。


 集落では皆が交代で見張りを続けており、俺たちも協力することにした。


 イリスと並んで見張り台に登ると

 星すら怪しい紫がかった光を放つこの世界の空が広がっている。


「ねえ、レイ。正直、あんたはこの集落を守り続ける気なの? 

 それとも地球に帰る方法を探すために動きたい?」


「そりゃ帰りたいさ。

 でも、こんないい人たちを見捨てるわけにはいかないだろ?」


 イリスは微妙に顔をしかめるが、何も言わない。


 すると、唐突に右腕のあざがピリピリと痺れ、薄い光を放った。


「うわっ……まただ」

「大丈夫? 発光が強くなってるみたい……。

 やっぱりあんたの力が高まってるんじゃない?」


 イリスが額に手をやり、何かを考え込む。


 俺は腕を握りしめる。


 妙に頼もしいエネルギーが溢れてくる気もする。

 ほんの少し、戦闘力が上がりそうな予感があるが……油断はできない。


「……まあ、悪い方向に変わらなければいいけどな。」

「そうね。もし変な力でもあんたが強くなるなら悪い話じゃない。」


 その言葉を聞き、俺は小さく笑った。


 どんな不安も、今の俺ならなんとかできそうな気がする。


 この力に思い当たることは無いが

 あざが導く力がきっと俺をさらに強くしてくれるはずだ。


 そう思いながら、俺は夜空を仰いだ。


 この世界で、どんな運命が待ち受けているのだろうか。

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