第19話:少女と激突──だけど、やむを得ない共闘!


 放課後の町外れ。


 俺――黒辻レイは、気配を探るように辺りを見回していた。


 先日退治した謎の化け物と、闇の力を持つ少女の影が頭から離れない。


 「今度こそちゃんと話ができればいいんだけど……

 あいつ、まともに話し合う雰囲気じゃなかったしな」


 つぶやきながら路地を進むと

 背後から聞き覚えのあるツンとした声が聞こえた。


「ねえ、あなた。探しものは終わったわけ?」


 振り返ると、そこに立っていたのは黒い服装を身にまとった“あの少女”だ。

 杖を片手に、警戒心むき出しで俺を睨んでくる。


「お前……この前の」

「はいはい、説明不要。私もあなたを探してたところだし」



◇◇◇



 俺と彼女は互いに一触即発の空気。


 少女が杖を構えると、闇のエネルギーがじわりと立ち昇る。


 周囲に生ぬるい圧が広がり、通行人がいないのが不幸中の幸いだ。


「何が目的なんだ? こんなとこで人を襲っても何の得にもならないだろ」

「襲う? 私はただ探してるの。“魔王の血”……っていう存在をね」


「“魔王”? なんだそれ……よくわからないけど

 こっちの世界にはそんなのいないと思うぞ」


 少女は「ふん」と鼻で笑う。


「あなたが知らないだけ。まあいいわ、とりあえず邪魔するなら容赦しない」

「ちょっと待て、俺は別に邪魔なんか……」


 そこで、遠くから低い唸り声が響いた。


 焦げたような異臭が漂い、闇色の獣のような化け物が姿を現す。


 明らかに異世界の怪物だ。

 俺たちを見つけると、一気に牙をむいて襲いかかってきた。


「くっ、またこいつ?」


 少女が舌打ちしながら杖を振る。



◇◇◇



 瞬間、闇エネルギーが獣の横腹を刈り取るように放たれた。


 だが化け物は鋭い爪を振りかざし、反撃してくる。


 俺は咄嗟に光の力を右手に集中させ

 ビシッと衝撃波を放って怪物を弾き飛ばした。


「……あんた、また変な光を使うのね。まるで勇者っぽいけど」

「勇者? いや、よくわからないけど……

 とにかく、こいつを倒さないと危ないだろ」


 少女は少し渋った顔をするものの

 怪物が暴れれば自分も無事じゃいられないことはわかっている様子だ。


 結果「仕方ないわね……少しだけ手を貸す」とぼそっと言い

 俺たちは“やむを得ず”共闘をする流れになった。



◇◇◇



「はああっ!」


 少女が魔力の塊を撃ち出すと、獣の背中が大きく抉れた。


 吠え声が響き渡り、次の瞬間には俺の衝撃波がそこへ追撃。

 合わせ技で獣は怯んだものの、しぶとく暴れ回ろうとする。


 少女が「もう一回!」と杖を振りかざすが

 獣が跳びかかってきて距離が詰まる。


「危ない!」


 俺は光の刃を放ち、獣の動きを強引に止める。


「あと一撃……!」


 少女は一気に黒い電流のような魔力を解放し、獣を包み込む。

 同時に俺が右手を前に突き出し、白い光でとどめを刺す。


 ビシィッ! という爆音のあと、化け物は黒い霧になって消滅した。



◇◇◇



「ふう……終わったか?」

「ま、まあね。あんた、あれだけの力をどうやって……?」


 少女は不満げに唇を噛むが、俺の実力を認めざるを得ない様子。


 しかし、勝手に歩み寄ってきて「さっきの攻撃、何なの?」

 と問い詰める気は満々みたいだ。


「さあ? 俺もあんまりわかんない。とにかく、そういう力があるだけだ」

「へえ、そう……。“勇者”の類かもしれないわね。面倒そう」


 そうつぶやくと、少女は杖をしまい、そっぽを向く。


「これで終わったわけじゃない。次に会ったら容赦しないんだから」


 俺は困惑しつつ、「ちょっと待てよ、もう少し話が──」

 と声をかけようとしたが、少女はまたもや闇の布を展開してスッと姿を消した。


「……ほんとに気まぐれなんだな」


 すぐに追いかけたい気持ちもあるが、路地にはその姿が見えない。


 結局、黒衣の少女との衝突は、わずかな共闘で幕を下ろした形になる。


 俺はため息をつき、散らばった化け物の痕跡を誤魔化しながら

 その場を後にすることにした。


 頭の中には「魔王の血……?」という謎がぐるぐる回っている。

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