第18話:事件発生! そして再び俺が無双する
翌朝、俺は学校に向かっていた。
モモやクラスメイトとのコメディな日々が続くと思いきや
途中で商店街を抜けたあたりで違和感を覚える。
「な、なんだ……?」
道端に人だかりができている。
どうやら付近のペットや野生動物が怯えたように鳴いているらしい。
さらに数人の学生が「なにこれ……怖いんだけど」と口を揃えている。
足元を見れば、アスファルトに妙な亀裂が走っていた。
まるで地面を引っ掻いたような跡だ。
どう考えても普通の動物ではなく
何か“異世界的”なモンスターの仕業としか思えない。
◇◇◇
学校では、その噂で持ちきり。
「朝から謎の爪痕? 幽霊? UMA?」みたいな感じで盛り上がっているが
俺は心当たりがある。
謎の少女が使役する魔物か
あるいは異世界の怪物が紛れ込んでいるのかもしれない。
「モモ、大丈夫? 怖いなら先に帰ってていいぞ?」
「いえ、私も一緒に行きます! ここで逃げるわけには……」
モモは“勇者の家系”だという自覚を少し持ち始めているらしい。
頼もしいけど心配でもある。
◇◇◇
放課後、俺たちは怪しい気配を探って商店街の裏通りを歩く。
すると、スピーっと細く鳴く声が聞こえた。
視界に入ったのは、得体の知れない“獣のようなシルエット”だ。
体の一部が黒い霧のようになっていて、明らかにこの世界の生物じゃない。
「やば……やっぱ魔物か!」
周囲にはちらほら一般人もいる。
もし襲われたら大惨事だ。
「レイさん、どうします? あれ……すごく不安定な魔力を感じますけど」
「こうなったら倒すしかない。被害が出る前に俺がやる!」
◇◇◇
俺は左右の手を構えて一気に魔物に駆け寄る。
相手も気づいたのか、鋭い爪を振り下ろしてくる。
だけど今の俺は恐れない。
“謎の力”を脳裏にイメージし、聖なる光を手のひらに凝縮させる。
「くらえ……!」
手を突き出すと、白い閃光が魔物の前脚を吹き飛ばす。
これで終わりと思いきや
奴は黒い煙を撒き散らしながら背後に回り込もうとする。
「まだ足掻くのか!」
再度、右拳に“力”を宿す。
チート能力か勇者の力か、詳細はわからないが
とにかく凄まじい力が沸き起こる。
大きく拳を振り下ろし、魔物の身体を真正面から砕く。
ビシィッ……! という嫌な音とともに、魔物は消え去るように霧散した。
「倒した……?」
周囲を見回しても、残骸は何も残っていない。
異世界の怪物にしてはあっけないが、二度と暴れられないだろう。
◇◇◇
「レイさん……すごい」
モモが駆け寄ってくる。
周囲の野次馬や通行人も「え、何が起こったの?」「今の光は……?」
と騒いでいるが、直接見た人は少ないようで、うまく逃げ切れそうだ。
俺は息を整え、「無事でよかったよ」とモモに微笑む。
すると彼女は「はい……」とホッとした顔。
一度深いため息をつく。
異世界要素が地球に溢れ出すのは勘弁してほしい。
だけど、もし誰かが困るなら俺が動くしかない。
「よし、もうこんな奴らは俺が片っ端から倒してやる」
力強い決意を胸に、俺はモモと一緒に現場を離れる。
近くにいた人々は、ただ不思議そうにこちらを見ているだけだ。
◇◇◇
夜、帰宅した俺に、父さんが雑誌を読みながら笑いかける。
「お前、ちょっと疲れてるな? 今日はまた何かやってきたのか?」
「な、なにもなかったよ……」
心配かけたくないし、そもそも説明が面倒すぎる。
父さんはゲームを中断し、母さんをチラッと見る。
母さんは「ご飯できてるわよー」と平常通りの様子。
俺は「はーい」と答えながら
頭の片隅で「この人たちに話したらどう反応するのかな?」と思う。
でもきっと信じてくれないか、あるいは笑って終わりだろう。
そんな能天気な家族を眺めつつ
俺は胸の内で“次はどんな事件が起こるのか”と気を引き締めていた。
黒衣の少女や魔物の謎も残ったままだし、まだまだ戦う日々は続きそうだ。
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