第16話:謎の少女と偶然接触――激突の危機!
夕暮れ。
俺はコンビニで夜食を買ってから帰ろうと寄り道していた。
モモは「私も着いて行きたい!」と一瞬言いかけたが
家の宿題(?)があるとかで留守番。
結果、俺は一人で袋を提げて街を歩いている。
「まあ、平和なもんだよな……」
つい数週間前まで異世界で大立ち回りしてたんだから、この落差はすごい。
そう思いながら、ふと路地の奥に人影を見つける。雰囲気がやけに不穏だ。
◇◇◇
近づいてみると、黒い服を着た少女が路地に倒れ込んだサラリーマンらしき男を睨みつけていた。
「ひっ……勘弁してください……!」
男が震えながら後ずさる。
少女は不機嫌そうに言い放つ。
「うるさいわね。ちょっと道を教えてって言っただけで、なんで逃げるわけ?
ここじゃみんな私を怖がる。意味わかんない」
その声や態度は冷淡で、ただならぬ気配を放っている。
「あのさ……何してんだよ?」
俺はつい口を挟んだ。
すると少女はギロッとこっちを睨む。
「は? あんた誰?」
「そっちこそ、こんなとこで人を脅してどういうつもりだよ」
「脅す? 道を聞いてただけよ。なのに逃げられたの。私、そんなに怖い?」
少女は小柄な体格ながら、周囲の空気を支配するような迫力がある。
まるでこの前対峙したモンスターのような……
俺の直感が警笛を鳴らす。
「悪いけど、ここじゃ普通、そんな強引なやり方しないんだ。彼だってビビるさ」
「ふーん……やっぱりこの世界ってやりにくいわね。
私が“魔力”をまとってるせいかしら?」
彼女の目が妖しく光る。
俺はすかさず身構える。
◇◇◇
「どうやら、あんた……普通じゃないわね。さっきから私を見て怯えてないし」
少女が杖のようなものを懐から取り出す。
周囲の空気がピリッと張り詰める。
「怖くないと言えば嘘だが……俺も少し前まで“異世界”にいたしな。
あんた、この世界の人間じゃないだろ?」
少女の瞳が大きく揺れる。
「どうしてそれを知ってるの?
まさか“魔王の血”――いや、それはまだ早いわね……」
何か勘違いしてるっぽい。
でも、このまま放置したら通行人が危険だ。
俺は袋を地面に置き、両手を構える。ここが地球だろうが関係ない。
俺は自分のやれることをするだけだ。
「アンタが悪さするなら、黙って見過ごすわけにはいかない。俺が止める」
「ふっ……いいわよ。面倒だけど、ここで叩きのめして情報引き出してやるわ」
◇◇◇
言い終わると同時に少女が杖を振りかざし、漆黒のエネルギー弾を放った。
咄嗟に俺は右手にイメージを集中。
以前、異世界で使った“謎の力”を思い出し、光の壁を作り出す。
激突と同時に轟音が路地に響き、埃が舞う。
「何……防いだの? 地球人のくせに……」
少女が目を剥く。
俺は苦笑しながら、衝撃で痛む腕を振る。
「そうそう甘く見んなっての。
お前が誰かは知らないけど、俺は別に雑魚じゃない」
再度、少女が奇妙な言葉で呪文を唱えると、杖の先に暗い雷撃が集まる。
空気がバチバチ音を立て、路面が焦げるような臭いが漂う。
けれども俺は動揺しない。
前に一歩踏み出し、右手を構えて光の刃を創り出す。
「うわっ、本当にやり返してくるわけね……!」
少女の顔に軽い焦りが見えた。
とはいえ向こうも簡単にやられるほど柔ではなさそうだ。
◇◇◇
その時、一台の車がこの路地に入ってきそうになったのか
クラクションの音が鳴る。
少女は「マズい、目立ちすぎる」と吐き捨てるように言い、呪文の発動を中断。
俺も「やべ、一般人に見られる……」と慌てて身構えたが
少女はすかさず闇の布のようなもので自分の姿を隠してしまった。
「今日はやめ。あんたの顔は覚えたからね!」
冷たい声だけが路地に残り、気づいた時には彼女の姿はかき消えていた。
「くそ……逃げられたか」
俺は光の刃を消し、肩で息をしながら佇む。
遠くで車が通り過ぎて行き、“さっきのド派手なバトル”を見ていないらしい。
幸運だ。
「なんだったんだよ……。あの娘、本当に魔法みたいなの使ってたし……」
ハルじいちゃんや俺が巻き込まれた事件とも繋がっているのかもしれない。
しかし手がかりは得られぬまま、彼女は姿を消した。
◇◇◇
俺はとりあえずコンビニ袋を拾い直し、帰りの道を歩き出す。
さすがに今のトラブルは疲れたが、誰もケガをしなかったのが救いだ。
家に着いたら桃に「何かあったの?」と聞かれるだろうけど
どう説明しようか……。
「まあ、そんなに気にしなくていいか。俺が守ればいいんだし」
決意を新たに、コンビニのビニール袋を握り締める。
次にあの少女が現れても、絶対に負ける気はしない。
――その確信と同時に、俺は歩みを早めた。
そして、闇の中で再会を誓う謎の少女と、異世界の存在を意識しながら
俺の日常は新たな局面を迎えようとしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます