第10話:帰ってきた地球!
目を開くと、そこは間違いなく日本の住宅街。
見慣れた電柱とコンビニの看板、そして車の往来。
まるで夢でも見てるんじゃないかと疑いたくなる光景だ。
「……帰ってきた? マジで……!」
俺は思わず大声を上げてしまう。
通行人が何事かと振り返るが、特に干渉してこない。
地球の平和な空気が肌にしみるようだ。
「ここが……あなたの世界なんですね」
隣を見ると、少女はやや怯えた顔で周囲を眺めている。
そりゃそうだ、車や電線なんて、あっちの世界にはなかっただろうし。
「とりあえず、俺の家に行こう。場所的にあの角を曲がれば……
すぐにうちの家がある!」
落ち着かない気持ちで近所をキョロキョロ確認する。
頭の中では父さんと母さん
それにじいちゃんとヒメさんがどう反応するかを想像して胃が痛くなる。
「えっと……俺、もしかしたら見た目が変わってるかもしれないし。
あと君のことをどう説明すればいいのか……」
鏡で自分の姿を確認していないけど、異世界で長時間生活したし
謎の“謎の力”を使いまくってたから、ちょっと心配だ。
実際、髪の色が少し茶色くなってたり
瞳の奥に光があると言われたりしてるし……
地球の人が見たらビビるかもしれない。
「私のことは……あなたの知り合いということに……」
少女が苦笑する。俺も思わず苦笑いだ。
とにかく、帰ってきたはいいものの、問題は山積みだ。
◇◇◇
歩いて数分、ようやく自宅が見えてきた。
何事もなかったかのように建っている家を見て、無性にホッとする。
ちゃんと帰れたんだって、実感が湧いてきた。
「どうする?」
少女が首をかしげる。
「うちだから別にピンポンしなくていいんだけど……
一応、礼儀として押すか」
こんな当たり前の会話ができることが、ちょっと幸せだな。
でも、心臓はドキドキだ。
父さんや母さんの顔を久しぶりに見ると思うと
不安と嬉しさがごちゃ混ぜになる。
意を決して玄関のチャイムを押す。
カランコロンと足音が近づき、ドアが開く。
そこに立っていたのは――俺の母さんだった。
相変わらず優しげな笑みを浮かべ、エプロン姿で。
「……レイ? それにそちらは……?」
母さんが目をぱちくりさせている。
俺はなるべく自然に笑みを作り、「ただいま、母さん」と言ってみた。
「ちょっと……どこに行ってたのよ!」
母さんは驚きのあまり、エプロンを握りしめるが
すぐに、ほっとした顔になる。
次の瞬間、バタバタと奥から父さんの声が聞こえてきた。
「レイか!? おいおい、探したんだぞ!」
父さんまで出てきて、こっちを見て硬直している。
「お前、またなんか面倒なことになってんじゃないだろうな……」
言い方は雑だけど、目は明らかに安堵しているのがわかる。
よかった。ちゃんと家に戻ってきたんだ。
でも、この一瞬で頭の中に“どう説明しようかな”という思考が巡る。
そしてそばにいる少女を見やって
「えっと……彼女はその……」と口ごもってしまう。
「はじめまして……で、いいんでしょうか?」
少女はペコリとお辞儀をする。
両親はそろって目を丸くするが、母さんが優しく笑ってくれた。
「ええ、はじめまして。ゆっくりお話を聞かせてね」
俺は心底ホッとしつつも
これからの説明が大変そうだなと胃がキリキリする。
しかも、俺自身の外見がどう変わってるか不安で仕方ない。
鏡を見たいけど、なんか怖い。
とりあえず家に上がって、少し休もう。
◇◇◇
こうして俺は、異世界で出会った少女とともに
再び地球の生活に足を踏み入れた。
もちろん問題は山積みだ。
彼女をどう紹介するかもだし、自分の使える謎の力のことも……。
だけど、少なくとも何もかも諦めるほど絶望じゃない。
「よし、まずは家族会議からだな……」
家に戻ってきた安心感に包まれながら、俺はそうつぶやく。
どんな大波乱が起きようと、もう逃げるつもりはない。
勇者として、あるいはただの高校生として。
この家での新しい日常が、また始まるのかもしれない。
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