うそつき

白芯木 波音与

うそつき

家族はいない

父親も

母親も

兄弟も

姉妹も

みんな 私を指差し言い切った


橋の下で拾った子

車に乗せて攫った子

誰にも似ていない 不実の子


だからこそ

優しい気持ちで育ててくれた

血の繋がりが無くたって

命の一つに代わりはないもの


うそつき


本当に

他人の子なら川へ流していた

本当に

攫った子なら客間に飾っていた

本当に

不実の子なら殺していた

本当は

未来に繋ぐ希望の子


家族はいらない

父親も

母親も

兄弟も

姉妹も

みんな みんな うそつきだから


子どもはいらない

たくさんたくさん うそついて

澱んで

腐った

毒の水

砂に混ぜた 泥人形

そんな子 一人でたくさんだもの


誰にも似てない 蝋人形

鏡に写る 泥人形

私は私に うそついた

私が私に うそついた

そろそろ うそが尽きちゃった

そもそも うそに飽きちゃった


だから

ううん

だからこそ


優しい気持ちで育てよう

血の繋がりが無くたって

命の一つに代わりはないもの


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うそつき 白芯木 波音与 @halberd1561

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る