第12話 ダンジョン屋台ンゴ

ダンジョン。

大地に寄生する生きた洞窟。

凶悪なモンスターや罠が無数に存在し、冒険者が命がけで潜る場所である。

もちろんリターンがある。

金銀財宝、鉱石、魔法・技能スクロールなどなど。

命知らずの冒険者たちは今日もダンジョンへ潜る。


そんなダンジョンにも休憩スペースが存在する。

悪意や憎悪、殺意などを持つ者を受け入れない聖域、『セイフティーゾーン』である。

万一悪意ある行動を取ったものは脳に凶悪な魔素が充満し廃人になる。

魔物も例外ではない。

オリーブ領の西南にある中級ダンジョン『オレーフノキダンジョン』。

低階層地下3階にある『セイフティーゾーン』。

そこには謎の音を鳴らし、料理を振る舞う屋台がある。


ンゴです。


ミィア「天津飯3つ、チャーハン4つ、餃子8皿入ったにゃーー!!」


どみん「はいよ!てんちゃ3、ハン4、ヤキ8!」


天津飯は2500円、チャーハン2500円、焼き餃子×5ヶが1000円とか言うダンジョン仕様の値段にしてるのに飛ぶように売れている。

ミィアたんが冒険者達から注文を聞いてンゴに伝えて、陰魔法で食器を運んで片付けて、会計と料理以外は全部やってくれるので滅茶苦茶助かっている。

影魔法で食器の片付けと商品の運びと冒険者を並べるのを併用して器用に行っている。

欠伸混じりにゴロゴロしながらやってるから本当に凄い。

冒険者達からも癒やしとしてかなり大好評。

結果大盛況である。


ミィア「本当は労働なんてしたくにゃいけど、まかないを豪華にしてくれるから許してやるにゃ!」


そんなミィアたんには【業務マーケット】から取り寄せた2kgの冷凍とりももから作る唐揚げや油淋鶏、カレーや生姜焼き、麻婆豆腐、春巻きなどなどをまかないと称して試食をお願いしている。

その全てが大好評なので、本当に現地の人に受け入れられるか心配でとりあえずメニューは天津飯・炒飯・焼餃子の3つにしぼってやっている。


モブ冒険者男「ありえねぇ!?こんなうめぇのに銀貨3枚(3000円)で食えるとか!?」


モブ冒険者男「卵とライスとかいう高級食材で銀貨3枚でお釣りがもらえるのにとんでもない旨さだ!スプーンが止まらねぇ」


モブ冒険者女「あーあ、この焼餃子っていう料理香辛料多くてめちゃくちゃに美味しいのにお酒が無いなんて…」


どみん「お酒なら出せるンゴ」 


冒険者達「「なにィッ!?」」


最近ンゴのスキルレベルが3に上がったのだ。

屋台の設備はビールサーバーとトイレ、更にスペースが広くなり、業務マーケットは遂にお酒を解禁した。

といってもンゴはお酒舐めたことあるけど何が美味しいのか解らないだけどね。


どみん「でもここダンジョンの中だからお酒出してもいいのか困ってるンゴ」


モブ冒険者男「出せぇー!!それで死んだらそれまでだ!」


モブ冒険者女「ちなみにお値段は?」


どみん「うーん、銅貨6枚(600円)ってところンゴね」


モブ冒険者女「まぁ結構するわね。でも頼もうかしら、焼餃子に合いそうだし…」


どみん「そうンゴ?ちょっと待ってて…――…おまたせしたンゴ、生一丁!(ドンッ!)」


モブ冒険者女「ごめん、滅茶苦茶安いわ。この量考えてなかった…え!!冷えてる!とりあえず、ゴクッ―――ッあ゛あ゛ぁ!!凄!最高じゃんコレぇッ!!」


モブ冒険者男「ちょお!おまえね!ずるいじゃん!!俺にもそのビールってやつ1つ、いや2つくれ!」

モブ冒険者男「こっちは1つ」

モブ冒険者女「私にも1つ頂戴ー!」


どみん「みんな頼むけど大丈夫ンゴか?この後まだ潜るンゴよ?」


モブ冒険者男「…もういいでしょ、これ飲んだらさ…もう良いでしょ?帰ろう」


モブ冒険者仲間「「賛成!!ビール!ビール!」」


リーン「オイッ、後ろがつかえてんだよ!早くしろや!」

ミレディ「そーよそーよ!」

チャンコ「ちゃちゃす!(やくしろよボケが!の意)」


どみん「また来たンゴ?ちょうどカウンターが空くから待っててンゴ」


パーティ銀斧「「おう!」」


ちょっと前にお世話になったB級冒険者パーティの銀斧の皆さんが来たンゴ。

と言ってもンゴがダンジョンで屋台を出すきっかけはチャンコさんだった。


チャンコ「ちゃす(魔力供給には慣れた?の意)」


どみん「ンゴ!おかげさまで。ミィアたんから魔力を供給してもらえて、ようやくガス水道電気が自由使えるンゴ!」


なんと、ミィアたんはオーダー食器運びだけでなく魔力供給を従魔契約の魔力模様ルーンを通して行ってくれている。

情けないけど、ミィアたんがいないとなんにもできないのが現状。


チャンコ「ちゃす(まぁこんなチャーミングとは言え、一国を滅ぼす程の力を秘めた伝説魔獣だから造作もないでしょうの意)」


どみん「へぇ~、やっぱり凄いンゴ。それはそうととりあえず生3丁」


リーン「さてさてどんなもんかな〜ゴクゴク……ぴゃぁああああ!!やっべ!?悪魔の飲み物じゃねぇか!アーシはこいつのせいで死んじまう未来がみえたよ!?」


ミレディ「かああああ!喉越し最高!冷えてるから飲み応えが合って、餃子との相性が神がかってる〜(ゴクゴク)」


チャンコ「もちゃもちゃ、ゴクゴクゴク」


リーン「おいどみん!コイツはとんでもねぇ物だぞ!ハーフドワーフのアーシから言わせても極上の雫に尽きる。コレを知ったらいつもの酒はドブみてぇなもんだガハハハ!!」


冒険者だからなのかビールを解禁した瞬間飲むわ飲むわであっという間にビールが無くなってしまった。

【業務マーケット】でなぜか樽(鉄)が売ってたのでそれで交換しているが、本当にすぐに無くなってしまう。

冒険者たちがイベント会場ぐらい大きなセイフティーゾーンのスペースを酔いつぶれて埋め尽くす頃にようやく閉店することが出来た。

最後のお客様であるギルドマスターのドインさんと話しながら売上を数える。


どみん「1…10…100…1000!?……1254銀貨(1254000円)??お、おごご…昨日も30万稼いで震えたけど、お酒で100万越えちゃったンゴ。営業は5時間なのに…もう怖いンゴ」


ドイン「フ◯ッキンボーイ!!馬鹿かお前は!こんな美味くて安くて量もあって高級食材使ってダンジョンの中で…このぐらい稼げて当然だぜ!地上でもこの品質の料理だしたら5倍はするからな?むしろお前は本当に稼げてるのか?」


どみん「食材とかもろもろの経費を差し引いて、利益ざっくり85%ぐらいンゴ…」


ドイン「ブワハハハ!フ◯ック!!ウィンウィンじゃねぇか!」


どみん「ンゴ…」


終始上機嫌なドインさんを帰して就寝の準備をする。

【屋台召喚】の屋台のスペースが広くなったことと、トイレが付いたおかげでいちいち地上に帰らなくても良くなった。

身の汚れなどは【クリーン】とか言う誰でも使える生活魔法とか言うやつでお風呂に入らなくても良い。

寝る時はミィアたんと寄り添って毛布一枚あればモフモフフカフカで布団で寝るより心地良い。

それにしてもドインさんは開店してからここ数日毎日来るけど、仕事の方は大丈夫なのだろうか?


???「ようやく見つけたぜンゴ野郎!」


突如の声に振り向くと、何時ぞやの風のイケメンと盾の大男の人が居た。


ヨコズナ「閉店…してた(しょぼん)」


イグル「ダーディラードの最年少で神童の俺様イグル・シルフィードはわざわざテメェを探してやったのさ」


どみん「え、なんでンゴ?」


イグル「リベンジに決まってんだろ!まぁここだとなんだな?1週間後オリーブ中央広場で決闘ってのはどうだ?」


どみん「出来ればお断りしたいンゴ」


イグル「決闘を断ったら地の果てまで追いかけて斬りかかるだろうなぁ?さてどえふるよ?」


どみん「人の話聞かないンゴねぇ…。とりあえずミィアたん用のまかないたくさん作ったから食べてくンゴ?銅貨5枚にしとくンゴ?」


ミィア「にゃッ!出来たにゃ!タケノコごはんと春巻き!」


ヨコズナ「いただきますッ!!」


イグル「おまっ!?…まぁいただいてやるぜ?」

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