第11話 一方その頃・召喚者達①
黒鉄流古武術、古来琉球空手が由来だと言われる秘伝の武術。
国の要人警護や上級国民のボディガードをしたりしてる。
アタシはそんな古流武術を学んでいる。
急所、グラップリング、投げ、打撃、蹴り、全て網羅し命を奪うために最少の選択をする為の武術。
6 歳のある日、親父に連れられて『冠水流兵法』という武田信玄っていう有名な殿様の隠密とか言うなんか凄い血筋らしい。
親父の恩師らしくてちょっとした田舎まで車でドライブだ。
ひかる「冠水中華食堂?」
食堂に入ると「いらっしゃい」とシブい声のじじいと、その後ろにちょこんと顔を出す可愛らしい自分と同じ年のくらいの男の子が居た。
げんじろう「
こうじ「源二郎さん!ご無沙汰してます!…っとそっちの坊っちゃんは?」
どみん「ど、どみん…です…」
こうじ「もしかして、お孫さん?すると
げんじろう「ああ、つい最近までこの子のの存在すら知らなかったがな。わしに連絡が来たときにはやせ細っていた…まぁそんな事はいい。本題は…『天狗』の引き継ぎか?」
こうじ「いや、話が早いっす。逢乃宮財閥からお達しが来ちゃいまして…」
げんじろう「ほぉ、現役は大変じゃのう。募る話は食事の後にでもしようか?後ろの子が暇を持て余しとるぞ?」
ひかる「親父、腹減った」
こうじ「はぁ、誰に似たのやら。じゃあチャーハンとラーメンセットをお願いします」
げんじろう「はいよ。どみん、お皿の準備をしてくれるかね?」
どみん「うん、わかった!」
せっせと手伝いをする男の子とげんじろうと呼ばれていたじーさんが提供したチャーハンは普段スーパーのお惣菜で食べるソレとは全くの別物で、とても美味しかった。
げんじろうじーさんと親父はなんか難しい話をしていたのでどみんという男の子と自然と遊んでいた。
交流も多くなり、同年代ということもあって自然と仲良くなっていった。
アタシが住んでる地域と違って自然が豊かで、少し歩くとどみんが私有地だという山があった。
かけっこしたり取っ組み合いをしたり。
そしてどみんという男の子は見た目によらずとても強い。
他の子なら勝負にならないほど実力差があるのに、こいつはなかなかにしぶとくて、負けそうになることも結構ある。
そのたびに「お前はどんくさいからどみんじゃなくてどんちゃんな!」とか「アタシより弱いくてダサいから語尾のンゴって付けろww」とか言って、「お前はブサイクなんだから前髪長くして目立たないようにしろ!」なんてイキっていた。
まぁ「ひーくんひーくん」って後ろからついてきて
当時から可愛らしくて惚れていたと思う。
ある日、山に親父に内緒でどみんと一緒に登った日があった。
どみん「ひーくん?ここから先は危ないってじーちゃんが…」
ひかる「なんだよ情けねーな!アタシが居るんだからびびんなよ!」
私はこの当時、山の脅威を知らなかった。
日は夕暮れ。
時間が経つにつれて静けさと不気味な雰囲気がアタシを恐怖させていく。
遠くで鳥が「ぎゃあぎゃあ」と鳴くと身震いがした。
どみん「ひーくん?大丈夫…んご?」
ひかる「うるさい!黙ってついてこい!このまま頂上だって登ってやるよ!」
どみん「お日様が沈む前に帰ろうよ―――あっ!」
目の前に居たのはイノシシ。
身長は80cmぐらいの大きさで、当時のアタシ等と大差なかった。
ひかる「へっちょうどいい!アタシの拳でぶっ殺してやる!」
どみん「駄目だよ!興奮させちゃ!」
どみんの忠告も聞かないで未熟なまま野生動物に喧嘩を売った。
結果―――
ひかる「がぁッ!?」
イノシシの突進を避けきれず右肩に重症。
地面に這いつくばり相手を見上げる。
痛み、後悔、野生への失念、そして右手にまとわりつく自分の血が死を感じさる。
「あぁあ、あぁあ」と声にならない呻きを上げ失禁しながら震えるしか出来なかった。
しかし目の前にアタシが見下していた情けない男の子は静かに立っていた。
イノシシとアタシの真ん中に位置取る様に。
逃げるように叫ぼうと思っても口に出すことが出来ない。
そんなアタシと違ってどみんは冷静に相手を見ていた。
猪「びぎぃいいいい!!」
獣の叫びと共に突進してくる。
どみんは―――当たる直前にその辺の木の枝をイノシシの片目に突き刺して、自ら倒れるようにして避けつつ足払い。
結果、足場の淵から離れてイノシシは山の斜面を真っ逆さまに落ちていった。
辺りは真っ暗になり、アタシはどみんの背に背負われて下山している。
情けなくて申し訳なくて、でもどみんの背中は温かくて…頼もしくて。
親父には肩に怪我を負ってるにも関わらずぶん殴られたり色々あったけど無事に帰ってこれた。
どみん「またねひーくん」
ひかる「気が向いたら会ってやってもいいぜ」
この時にはもう完全に好きだった。
それから半年色々遊んだけど、最後まで自分が女だということを話せなかった。
どみん「バイバイひーくん、元気でね……」
ひかる「次に合うときはアタシの方がつよくなってるからな!そん時はアタシと—――」
―――それから10年、
ひかる「はぁッ!どんちゃんが去年退学!?どういう事だよこのデブオタクゴラァ!!」
まっちゎん「ひ、ひぃ!?降ろしてぇござるーー!!」
中学3年になったアタシはどみんの中学に転校してきた。
スタイルには自信あるし、化粧だって覚えた。
幼馴染が実は女の子で、ドキッドキで、二人の距離は急接近。
手を繋いで、デートして、キスして、その先も…ってはずだったのに!
この目の前の松岡とか言うオタクデブの話だと去年に暴行事件を起こして停学、そのまま退学だとよ。
ひかる「ふざけんじゃねぇーーー!(ドゴッ!!)」
まっちゃん「ほげぇ!?壁を貫通…隣のクラスが見えるでござるよ!?」
あーあ、最悪だぜ。
もういいや、この学校にいても仕方ねぇ
親父から『天狗』の手伝いでえあお嬢様の護衛をやってくれって言われてたしそっちに行ってやるか。
あれ?えあ嬢様が襲われた事件って去年とかだっけ?
まさかね…
それからなぁなぁでお嬢様中学にいったり、エリートばっかのつまんねぇ高校に入れられたりで面倒だったがこの護衛の仕事は金払いがいいし、将来どんちゃんとそういう関係になった時に必要だからな。
ついでにはやととかいうお坊ちゃんも守らないといけねぇとか、国家匿名防衛組織『天狗』ってのは面倒事ばっか押し付けやがる。
ん?足元が光ってねぇーか?―――!!??
―――おいおいどうしたよマジで?
突然別の場所に出たじゃねぇか…
えあ穣とはやと坊っちゃんは無事だな…あ!?ああっ!?
ひかる「(やっぱり、どんちゃん!?な、なんでこんなところに?ってか、今だに前髪伸ばしてたかよ〜!アタシとの約束を今だに―――もう両想いじゃねぇか!ってか身長高くなって顔もキュってなってるし…どうしよ!?どうしよ!?なんて声かけたらいいの?なんかアタシの事気づいてないみたいだし?まぁまだ男だと思ってるから仕方ないけど…あれ?今アタシ臭いっけ?やべぇ、こんなんじゃどんちゃんに引かれちまう…)えあ穣、まずは湯をいただかねーか?部活の遠征で汗臭くないっすか?」
えあ「一理あります。どみん様に臭い女だと思われたくないですしお城の人に聞いてみましょう」
ひかる「え?どみん様?」
―――アクシツコレステ城 大浴場―――
ひかる「はあ゛っ!?ざっけんじゃねぇ!オメーがどんちゃん退学の原因かよ!!」
えあ「まさかひかるさんがどみん様の幼馴染とは思いませんでした。あの時、お父様に恨みのある輩に襲われていたところを助けていただいたのです!運命の出会いでしたわ♡」
ひかる「寝ぼけんな!どんちゃんはなぁお前みたいな腹黒なんて―――」
えあ「あら、腹筋バキバキの褐色ギャルを好きそうには見えませんでしたけど?」
口喧嘩が白熱して互いにのぼせてしまい、フラフラと客間に帰ると―――
はやと「えあさん、ひかるちゃん、大変だ!どみんくんが追放されたらしい!」
ひかる・えあ「「は?」」
外れスキルだとかいう理由で追放しただと!?ふざけやがって…。
ひかる「アイツ等に目にもの見せたやる。黒鉄流皆伝の力を思い知りやがれボケが!!」
えあ「お待ちなさいひかる!情報が足りません。この世界の事、仕組み、地理、それにスキルとかいう事も解りません。それらの情報と煽動をしてから行動をしましょう。闇雲に動いても仕方ないでしょう。搾れるだけ搾ってここぞのタイミングで目にもの見せてあげましょう?フフフ…」
はやと「……やっぱりえあさんはかわいいなぁ〜」
待ってろどんちゃん!
絶対に助けに行くからな!
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