第2話 脱獄ンゴ①
「牢屋に入るRPGは名作でござる」
などと親友のまっちゃんと話した事があったのだが、まさか自分が入ることになるなんて…トホホ。
更に一週間後にはギロチン!?どうなってるンゴ!?
とりあえずよく山で遊んでいたンゴならば、このようないつでも食料がない状況では体力があるうちに動いたほうがいいと判断したンゴ。
どみん「うーむ……」
とりあえず牢内を隈無く見渡す。
古臭いからなーんか脆い場所ないかな〜って思ったのに…すごくしっかりしてるンゴ。
補強をした後がいくつかあって、ここって特別な囚人を入れるとそういう…?
???「誰だ」
ギョッとして背後の声の元に振り向くと銀髪長髪の美少年が居た。
生気が無く儚げで、やけに艶がある。
どみん「ほ、他にも人が居たンゴ?」
ローザス「(ンゴ?)私はローザ…ス、……ローザス・オリーブという。君は…冠水
どみん「な!なっ!なんでンゴのキラキラネーム知ってるンゴ!?それ、じいちゃんが市役所に提出して改名してくれたって聞いてるンゴ!」
ローザス「?ああ、‘シヤクショ’が何かわからないが僕のスキル【鑑定】で見たんだ」
どみん「へぇ〜便利ンゴねぇ〜…!そうだ、スキルってどう使えばいいンゴ?」
ローザス「それは教会が…君は異世界人だったね。頭の中で念じるだけでいい。でも―――」
どみん「【町中華】!!【町中華】!!何も起こらないんご〜」
ローザス「人の話は最後まで聞くっ!「ンゴ…」いいかい?スキルっていうのはあくまでも指標、事象を起こすには『コマンド』という神の指針を理解し、それを念じなければだめだ」
どみん「『スキル』、『コマンド』、何だか俗っぽい神様ンゴね〜」
ローザス「ちょっ!?『豊穣神ツイフェ』様を否定するような事は言わないように!特に教会の人には特に!っと話がそれた。例えば僕の【鑑定】スキルには【スキル鑑定LV7】と【人物履歴LV5】がある。【スキル鑑定】はスキルの特性と特徴の理解、【人物履歴】はその対象の人格と経歴の理解…といったものだ」
どみん「そんなホイホイあったばかりのンゴに教えていいンゴ?『スキル』って会ったばかりの人に教えていいものじゃない気がするンゴよ?」
ローザス「僕には【人物履歴】があるからね、君がどういう人間でろりこんあにめ?なるものが好きな事までわかっているよ」
どみん「ひゃっ!?恥ずかしいンゴ〜」
ローザス「(うーん、【人物履歴】には『冠水流兵法』免許皆伝と書かれていて、相当に強いらしいけどそう見えないな…)とにかく、僕は君を信用していいと判断した。だから君の『スキル』について教えてもいいと思ってる。ただし―――」
どみん「ただし?」
ローザス「ここから脱獄したい。このままだと僕は7日後に処刑されてしまうんだ。力を貸してほしい…」
どみん「ンゴと同じって訳ンゴね。協力するンゴ」
ローザス「…うん、あっさりだね。でも助かる!なら話は早い、君の【コマンド】は…【屋台召喚LV1】と【業務マーケットLV1】?えっと…【屋台召喚】はコマンドレベルにおおじて調理施設の召喚!?それと【業務マーケット】はスキルボードの操作で…異世界の商品を現地の金銭で自由召喚!?と、とんでもないスキルだぞこれ!?」
どみん「業務マーケットはンゴのお店でもかなりお世話になってるから試してみたいンゴ。でも現地の金銭っていうことは、この世界のお金、この世界のお金ンゴ…(まぁイベント後そのまま召喚されたから100円玉が3枚くらいしかないけど)」
「ふむ」といったローザスさんが靴底をいじくっていると、中から金貨を取り出す。
ローザス「これを使って構わない」
どみん「ンゴっ!いいンゴ?」
ローザス「全ては渡せないけど、一枚ぐらいなら。代りにもし本当に異世界から物を取り寄せられるなら、マーケットというぐらいだから何か食べ物を頼めないか?」
どみん「ガッテン承知ンゴ!」
さっそくンゴは「【業務マーケット】」と心で唱える。
すると目の前に光る10インチぐらいの光るタブレットが登場、これがスキルボードと言うやつなのか?
そこには
<<<<<<<<<<<<<<<
ユニークスキル【町中華】
コマンド 【屋台召喚LV1】
▶ 【業務マーケットLV1】
現在 ・冷凍食品 ・酒 ・日用品 ・青果 ・生肉 ・パック商品 ・乾物+缶詰 ・惣菜 ・??? を禁止。
LV2に到達時に ・冷凍食品 を解禁。
▶ ドリンク
常温商品
チャージ
>>>>>>>>>>>>>>>
という表示が浮かんだ。
どみん「おぉ〜。どれどれ、この常温商品は調味料、菓子パンとおにぎり、レトルト…って卵まであるンゴ!?金額は日本と同じンゴね。うーん、チャージでいいンゴ?」
『▶』でチャージを選択。
中心に自動販売機の小銭口のような表示になったので、先ほどもらった金貨を入れてみると右上の¥0の表示が¥10000の表示に変わった。
小腹が空いていたので、ドリンク→スポーツドリンク500mg85円✕2と
常温商品→厚皮5個入(菓子パン)クリーム162円✕2を購入。
すると「ポンッ」という音と謎の煙幕とともに、なにもないところからビニール袋が現れる。
その中に500mgペットボトルと菓子パンが2個ずつ入っていた。
どみん「ンゴーー!すごいンゴーー!!」
ローザス「虚空から物が?ん、これを僕にくれるのかい?この透明の中に入ってるのは濁った水?こっちは…パン?食料なのか…、とりあえず食べよう、はぐっ―――」
ローザスさんが菓子パンを一口するとカッと目を見開き、すごい剣幕でンゴに問いかけてくる。
ローザス「どっ!?どど、どっういうことだ!?これは上品な白いパン!!しかも甘い!そしてこの中に入ってる黄色いカスタードクリームは更に甘い!!美味しいし美味しすぎるけど、なんで?こんな高価なものを?もっと質素な物で良かったんだぞ!?」
どみん「ンゴ?これ1パック、162/10000円ンゴよ?」
ローザス「んへ?つまり…約銅貨2枚!?(100円=銅貨1枚)うっそ!?だって、ねぇ?王都の小洒落たレストランならこれほど芳醇な甘みのパン一個で銀貨1枚(1000円)はするよ!異世界はそんなに豊かなのか!?」
どみん「まぁ、日本の食事は豊かンゴか?もしかして不味かったンゴ?」
ローザス「そんな馬鹿な!?こんなに美味しいものわたくし、久々に食べましたよええッ!―――ごほん、久しぶりにまともなものを食べてちょっと興奮してしまった…もぐもぐ、ゴクゴク―――ってぇ!?この飲み物甘くて冷えてて旨ーーーー!!」
飛び跳ねて喜んでくれるのは嬉しいのだが、言葉遣いなり、何だか妙に内股だったり、ローザスさんは2丁目の人なんだろうか?
それはそうと…
「もう一つの【コマンド】もやってみるンゴ!【屋台召喚】!!」
スキルボードで設置ポイントを指定して、いざ召喚。
「ドボン」という音と大量のなぞ煙幕と共に中から手押しのラーメン屋台が現れる。
「うげっ」と仰け反るローザスさんを横目にンゴは好奇心のままにずんずん中に入りこむ。
中は狭いのだけど、中華包丁や万能包丁、寸胴、中華鍋、強力ガスコンロ、水道キッチン、炊飯器や冷蔵庫、さらに電子レンジやクーラー、コンセントまで綺麗に配置されていた。
カウンターの上には折りたたみの椅子✕5まで置いてあり、もう店を出す寸前というぐらい準備満タンである。
「でも、水とか電気やガスってどうなンゴ―――あばばば」
水道を出した瞬間、妙な感覚に襲われる。
頭痛のような?頭を後ろに引っ張られるような不思議な感覚。
不思議そうにしていると
ローザス「どみん殿、あまりその魔道具で水を出すと魔力が枯渇して倒れてしまうよ?」
と言われた。
ファンタジーンゴね。
兵士「貴様らーーー!!何をしている―――」
ふと外から先程の兵士の一人が鬼の形相でこちらに向かってきた。
「そこを動くな!」と言って牢の鍵を開けてくれたので―――
兵士「―――なぁ!?」
飛び捨て身で兵士が右手に持っていたロングソードを捌きつつ、右足で首に引っ掛け、左足で腰を崩す。
崩しの勢いままに後頭部を地面に叩きつけるように倒し、先程忍ばせた右足で首の気道を締めつつ
兵士「はがっ―――」
地面と離さず顎を打ち込むと骨は砕けるが脳は揺れない。
地面と少し離してバスケットボールを弾ませる様に打ち込むとよく揺れる。
立ち上がり一歩下がりながら、ロングソードをすくい取り、正眼に構えつつ※残心。
兵士はビクビク震えながら白目を向き鼻血を出している。
「―――え?」
スキルボードで屋台を消し、キョトンとしているローザスさんに言う。
「さ!逃げるンゴ!!」
※残心 動作を終えた後も気を緩めず相手に対して意識を残す事。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます