第3話 脱出ンゴ②
SIDE ローザ・オリーブ
ローザス「勇者召喚など正気の沙汰ではありません!魔術師10人分の命を使って異世界から現住人を拉致して自国のために戦えなどと―――」
ボンボッボ「黙れ小僧!貴様がオリーブ公爵家の者だからと調子に乗りおって!この愚か者を牢屋に叩き込め!10日後、賢王に楯突いた愚か者を公開処刑してやろう。もしも勇者召喚で外れを引いた場合は一人で死なせないでやろう…ガハハハ!せめて女であれば俺の子を孕ませてやったろうに―――」
だからこそ父上は私に男の格好をさせ続けたのだ!
この様な暗君に舵を任せていては、国は滅ぶ。
せめてオリーブ領に勇者召喚のことだけでも伝えなければクーデターに支障がでるやも…
ローザス「はぁ、はぁ、ろくな食事もせず3日目…堪えるな」
牢の頭上のかすかな隙間から木漏れる光を頼りに時間を数えて3日目、残り7日で処刑されてしまうのだろう。
ローザス「この身潰えても、いずれ我が弟がこの国を導いて―――」
ガシャーン!
???「ンゴーーー!」
だ、誰だ?【人物鑑定Lv5】…
『冠水 幻想夢』17歳
地球 K県出身
幼少に両親を失い、以降祖父に育てられる。
内向的な性格で大人しいが、一度怒ると冷徹で残忍になる。
武田家懐刀七家の一家、『冠水家』の秘伝戦術『冠水流兵法』の免許皆伝にして幾多の武芸に秀でている。
オリジナルアニメ『まじかる腹ペロプリンセス ミィア』のミィアをこよなく愛する。
ユニークスキル【町中華】
コマンド【屋台召喚LV1】【業務マーケットLV1】
ローザス「(ミィアって)誰だ?」
どみん「ほ、他にも人が居たンゴ?」
【町中華】…は支援系スキルだろう、きっとあの国王連中は戦闘スキル以外は外れと称してすっぱり切り捨てる。
しかし【人物鑑定】が本当ならば武芸に秀でている…らしいし、こんな状況だ…協力を仰ごう。
しかし、ひょろいし前髪が目にかかって邪魔だし、この男は本当に強いのか?
とにかく!協力してくれるのならこちらもどみん殿のスキルを深堀りしよう。
【人物鑑定LV4 コマンド詳細提示】―――
え!?金銭次第で物資を召喚!なんだこの破格のスキルは…。
考え方によっては戦場の常識を変えかねないとんでもないスキルだぞ?
と、とりあえず食事を…、
こ、この透明な袋(菓子パンの袋)!中の商品を密閉していたのか!?
以前どこかの書物で一部の物体は空気に触れることで劣化を早めると記載されていた。
もしそれが本当ならなんと画期的な技術だ!?
お、おおお!
透明な袋を開けた瞬間、甘い幸せの匂いがする…!
このパンは甘いのか…え!?白パン!?高級食材だぞ!!!
ファーーー!?中に入ってるのはカスタードではないか!!卵・砂糖・ミルクの高級3点セットの超高級甘味ではないかっっっっっ!!
私だって、私だって5才の誕生日にしか食べたことないんだぞ!
ま、まぁ品質は別だろう。
ぴゃああああああああっっっっ!!
口当たりがいい!パン生地はしっとり!カスタードが甘い!カスタード特有の卵の臭みもない!なんて…なんてしあわせ〜(/// ///)
だっは!もうない…(しゅん)、って馬鹿か私は!ここ、牢獄!
いけないいけない、旨すぎて意識飛んでしまった。
さて、この奇妙な形状の飲み物は濁っているが…「旨ーーーー!!」甘くてレモンの酸味らしき物で飲みやすくて染み渡るぅ〜〜〜。
今まで食べた甘味の中で指折りの物を牢屋で食べるなんて私ぐらいだろう…ん?
な、なんだその珍妙な建造物は!?え?動くキッチン?そんな馬鹿な…。
あっ?魔力枯渇を起こしそうじゃないか?異世界から来た者は最初魔力を持たないと我がオリーブ家の伝承にあった…。
ローザス「どみん殿、あまりその魔道具で水を出すと魔力が枯渇して倒れてしまうよ?」
兵士「貴様らーーー!!何をしている―――」
しまった!先程の兵士が戻ってきてしまった―――
このままではどみん殿のスキルが露見してしまい、王家に悪用されてしま――――――
兵士「―――なぁ!?」
えっ―――どみん殿ォ!??
飛んだ?足で首と腰にカニバサミ―――手に持っているロングソードを奪う気か―――倒した!!いや―――顎に打撃!!??
って!ロングソードを構えてる?あ、兵士の持っていた剣を奪ったいたのか…。
この数秒の攻防で一体いくつの攻撃を仕掛けたのだどみん殿は…強い。
それもスキルに頼り切りのこの世界の住人とは違う、今見た卓越した技術は悔しいが私の技量では測れない。
―――ほしい、ぜひクーデターに加えたい…
はぁ、はぁ、はぁ、
3日の牢生活でいくら体力が落ちているとはいえ、端くれなれど私だって武人だ。
なのに、なぜどみん殿は息一つ切らしていない?
そもそも足音が聞こえないのだが?
どみん「ローザスさん、どっちに進めばいいンゴ?」
ローザス「はぁ、はぁ、えっと…左に出れば裏門に出れるはずだ」
どみん「了解ンゴ!ちょっと休むンゴか?」
ローザス「だ、大丈夫だ、問題ない」
どみん「(それはフラグじゃないンゴか?)」
正直辛い、だがこの通路を抜けてしまえば裏門だ。
そこまで行けば逃げ切れる―――はずだった。
???「へぇ〜これはオリーブ公爵家じゃあございませんか?」
???「うむ」
ば、馬鹿な?なぜ奴らがここに?
どみん「なんか美少年とごっついおっさんンゴ、知り合いンゴ?」
ローザス「…最悪だ、奴らは『ダーディラード』、このアクシツコレステ王国の精鋭部隊部隊だ。一人一人が一騎当千の実力を持っていて、一人相手に一個中隊でも敵わない化け物たちだ!」
どみん「はぇ~」
くそっ最悪だ、よりによって国の最大戦力7人『ダーディラード』が2人もなんて…。
あの勝気な短髪緑髪の男は神童『イグル・シルフィード』だろう。
風のスキルを使いこなす歴代最年少の剣士。
その隣の大男は鉄壁『ヨコズナ・ゴッチャンコ』だ。
チクゼン子爵領のスタンピードを一人で止めきったという豪傑。
イグル「なぁヨコズナ、確かあのバカ王がそこのオリーブとかいう公爵家のやつにご執心だったよな?」
ヨコズナ「ウス」
イグル「じゃあ生かして捕らえたほうがよさそうだ。よしっ!俺はあのヒョロ、ヨコズナはローザスって奴な!俺は手加減できずに殺しちまうからさ」
ヨコズナ「ウス」
ヨコズナが巨大な大盾を両手共に構え突っ込んでくる―――
ヨコズナ「【盾術LV3・シールドバッシュ】!!」
どみん「危ないンゴ!」
ドンッと背中を押され私は突進から間逃れた。
しかし、代わりにどみん殿が「んごー」と吹き飛ばされた。
なのに―――
ガランガラン!!
ふと大きな音に気を移すと、ヨコズナが片手づつ持っていた大盾を手離し、右腕をかばっている。
手の隙間から血が溢れ出る。
ヨコズナ「ぐ!?」
イグル「……おい?おいおい??どうなってやがる…ヨコズナ!?」
イグルがヨコズナに駆け寄る、
ヨコズナ「不覚。相手に当たる刹那の瞬間―――盾と盾の隙間に(ロングソードを)通された…」
イグル「馬鹿か!?盾と盾は重なって―――じゃあその僅かな隙間にあの一瞬でロングソードを忍び込ませたのか!?あの折り重なった僅かな僅かな隙間に!!?」
速すぎる。
刹那の瞬間と言っていい、私を突き飛ばしてあの大盾が当たる瞬きの間に剣がダンカンの持ち手に届いたというのか?
どみん殿は一緒に飛ばされたロングソードを拾って構える。
どみん「突きには自信があるンゴよ!」
突き!とんでもない精度…!
剣を振るう者として、私が先程のどみん殿と同じことをせよと言われても生きている間に到達できるかどうかだ。
ヨコズナ「片手はまだ効く。あの男先に2人で―――」
イグル「悪いが、俺にやらしてくれ!」
神童イグルがサーベルを抜きどみん殿に向けて―――
イグル「おいのっぽ!俺はイグル・シルフィードだ!お前の名前は?」
どみん「冠水どみんンゴ!」
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