今
8月中旬。今日は入試の結果発表の日。
やれることは、全てやった。
まぁたとえフィルヴェンに入れなくても、いつか校長に会える日が来れば、それでいい。
絶対入らなきゃいけないわけじゃない。どんな結果でも……
そう自分に言い聞かせながら、アルカナは封筒を開き結果を見る。
目にした瞬間、口元がふっとほころぶ。
抑えきれず、ニヤニヤと笑ってしまった。
その足で向かったのは、塾生たちと約束していたカフェだった。
ガラス張りの扉を開けた瞬間、懐かしい声が飛んできた。
「アルカナ〜! こっちこっち!」
ルクが大きく手を振っている。
「受かったか?」
ソルが真剣な表情で尋ねた。
アルカナが誇らしげに胸を張る。
「受かった!みんなは?」
「ソルもフィルヴェンに合格したよ」
エルフェルトが微笑みながら言った。
「僕とルクとメデスは、オルフェウスに受かった」
──オルフェウス学院。
フィルヴェンと並ぶ、二大名門魔法高校の1つ。様々な専門分野に優れ、多彩な人材を育てる名門のアメリカの高校。
「……二つに別れちゃうね」
エルフェルトの言葉に、誰もが少し寂しげな笑みを浮かべた。
「また電話とか、しようぜ」
ソルが前を向いたまま、ぼそりと呟く。
「寂しくなるな〜」
ルクが大げさに肩を落とす。
「フィルヴェンでも、頑張れよ」
メデスが、静かに手を差し出した。
アルカナは、その手を強く握り返した。
「うん。……みんなも、頑張ってね」
扉の向こうから吹き込む風は、それぞれの未来へと、そっと背を押す春風だった。
アナザークラウン 第1章 完
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アナザークラウン かき氷 @KAKIGORI777777
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