第7話 戦力分析をしよう
床に座り込んで泣く女の子のまわりをオロオロとうろつく無能がいる。
むしろ泣かしたのは俺だから、無能どころかマイナス能のハルキリだ。
女の子が泣くとこなんて小学校以来見たことがなかった。
ましてや自分で泣かしたことなんてあるはずもない。
経験がなさすぎるんだよ。
でもこういう時頭撫でたりすると炎上するってことは俺だって知っている。
だからって何もしないでいるのが間違ってるのもわかってる。
結果、横でウロウロする人の出来上がりというわけだ。
……笑ってくれ。俺は無力だ。
異世界に来て、魔力までつかえるようになったというのに。
魔力。
「そ、そうだ。パーティを組むんだし。出来ることを見せあったりしませんか?」
魔法を見せてなんかいい感じにごまかそうとしたのに、
またなんかキモい感じになってしまって俺はもうどうしていいかわからない。
見せあったりしませんかってなんだよ。
ああ~、もう、こういう時のために国語を学んだんじゃないのか、俺は!
言葉に力がなさすぎる!!!
加速度的に自分が嫌いになっていくのを実感しながら、それを無視して、俺は魔弾を生成する。
威力こそないものの、師匠のスパルタ教育によってそれなりに扱えるようになった、俺の唯一の武器だ。
生成したそれを、地面に転がる小石に向けて射出する。
魔弾は着弾と同時に爆発して、小さなくぼみを作った。
爆竹が破裂するよりちょっと強いくらい。
小石は宙に浮いた後、俺の足元に転がってきた。
「まあ、今の俺ができるの、
嫌な空気を払うための苦肉の策だったが、フィリは泣くのを止めて地面の穴を見ていた。
そして、俺のほうを振り向いて目を輝かせた。
「すごいですよ! 集中までの時間があんなにはやいのに、あんなちいさな的に当てるなんて!」
「……え? 的?」
俺は一瞬、言葉に詰まる。
それを受けて、輝く花のようなフィリの顔が曇る。
そして俺の顔を伺うようにしながら、
「あ、えっと。ごめんなさい、あの小石を狙ったんだよね?」
と小声で聞いてきた。
「そう、だけど。わかるの、そんなの?
俺が何を狙ったか、あの一瞬見ただけで?」
「うん。ハルキリくんの魔力はまっすぐでわかりやすいから……
あとね、わたしは
こうやって……」
フィリが手を伸ばし、目を閉じる。
フィリの魔力が、俺の足元の小石に集中するのがわかる。
「【
と、フィリが宣言すると、小石は何かに飲み込まれるように消失した。
「ちょっと離れた場所にあるものなら、指定してしまっておけるんだ。
だからね、空間……っていうのかな。どこに物があるのかわかるんだ」
確かに師匠に軌道がわかりやすいとは言われていた。
でもそれって、フィリと師匠は目に関して同等レベルってことじゃないのか?
フィリは固まっている俺にえへへと笑いかけてから、また眉を下げてしまう。
「……わたしにできるのは、それだけ。戦闘系のスキルもないし、回復も……」
それから、意を決したように胸の前で両拳を握った。
「だ、だからね。わたし、身体は大きくて丈夫だから、前で守るよ!
ハルキリくんには指一本、触れさせないように頑張るから、だから」
「あの、フィリさん」
「は、はい!」
俺はこの自信なさげな美少女の能力に興奮していた。
どこに物があるのかわかる。
それは、空間把握能力に卓越しているということだろ?
それなら、
「例えばさ、そのストレージルーム、だっけ。
それで俺をしまうことはできる?」
「できないよお」
できなかった。
「生き物はしまえないんだ。あと、魔力みたいな形のないものも……
自分と、仲間の持ち物と、誰のものでもないこういう石とかだけ、です」
徐々にもしょもしょと小さくなっていく声。
「じゃあこういうのは。
俺が石を投げたのを、空中でキャッチ、みたいな」
俺は小石を下手であらぬ方向に放る。
と、石は放物線の頂点に達するかといったところで飲み込まれて消えた。
「できるよお」
フィリはぴかぴかの笑顔で遅れてそう言った。
その笑顔は、自己紹介の時の人形めいたものではなくて、蕾が綻ぶような柔らかいものだった。
それはこの世のものとは思えないくらいの美しさだったが、
「フィリさん……」
そんなことよりこの美少女が、自分を無力だと思っていることが嫌だった。
「めちゃくちゃ強いじゃん、【
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