第8話 犯罪って知ってる?

拉致られた事からして、知らない誰かが通報してくれてるという淡い希望を持ちながら、腕を動かさないようにしていると、いきなり大勢のヤグザが入ってきた。


その中には顔見知りの人がいて、美咲の家の人達だということだけは分かった。


「なんでもうこんなに!?」

「ガキだ!ガキを盾にしろ」


焦った2人のうち1人は俺を盾にして、どうにかするつもりだろうけど、無理じゃないかなぁ。


明らかに殺意MAXのヤクザ相手に何が出来るというのだろうか。


「おい、お前ら来るんじゃねぇ!このガキがどうなっても良いのか!」


その男は俺の首根っこを掴んで包丁を向けていた。


「こういうのってドラマの設定じゃないんだ」

「お前は黙ってろ」


つい、思った事を口にしてしまったのだが、気に触ったようだ。


(練習試合間に合うかなぁ...)


とりあえず、俺の優先順位の1番上にあるのがサッカーなので、その事しか考えて居ないのだが、次の瞬間そんな事を考えられなくなった。


この男が俺を連れて移動しようとした時、1つの大きな音が鳴った。

それによって、俺の顔...というか体に血がべっとりと付いてしまった。


「えぇ...」


何が起こったかと言うと、吉原組の人が俺を盾にしていた男を撃ち殺したのだ。


これには、さすがの俺も足がプルプルして恐怖を隠しきれない。


もう1人の男は吉原組の人に捕まえられていて、俺は多分解放された。


「お久しぶりです。小林さん」


片付いたため、俺に向かってきた大男のヤクザが頭を下げてきたが、この人達の神経はどうなっているんだろうか。


「.....人殺し?」


俺がギリギリ考えて発言出来たのがこれだった。

普通に考えて欲しい。


一般人の俺がいるのに、人を殺すヤクザが居るとでも思うのだろうか。


「小林さんに怪我があったら、お嬢が心配するので」


お嬢とは美咲の事だろうけど、怪我はもうしてるんだけど...


「あ、うん。そうですか。じゃあ練習試合の会場行くんで」


とりあえず、言いたいことや聞きたいことはあるが、サッカーをしに行きたかった。


嘘である。

怖すぎて、この場所から一刻も早く逃げ出したかっただけだ。


(無理無理、人ってあんな簡単に死ぬもんなのか?)


美咲と関わりがあると言っても、こういう場面に出くわしたことは今まで1度たりともなかった。


だが、廃工場から出た瞬間俺は理解した。


「どこだよ....ここ」


確かに車で拉致られたから遠くではあるのだろうけど、全く知らない場所だった。


俺はぎこぎこと首を動かして、ヤクザの人に声をかけた。


「あの、会場まで送ってもらえるとありがたいんですが...無理だったらせめて道のわかるところまででも」


さっきのを見てお願いするのは恐怖でしかないが、これでは家に帰るのすら厳しいものがある。


「もちろんです。そのつもりでしたので」

「そうですか...ありがとうございます」


それして俺は黒塗りの車に乗せられて会場に向かった。


元々早い時間...一般的に見れば早すぎる時間に家を出ていたので、遅刻はしないだろうし、皆が到着する時に到着するくらいの時間だった。


(家早く出てよかった...)


そうして俺は車の中で付いた血を拭いながら、法定速度ギリギリのスピードで会場に向かった。

一応運転は安全運転だった。


ユニホームじゃなくて良かった。

こんなに血がついてたら洗っても落ちなかった。

俺は練習着からユニホームに着替えてジャージを着た。

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