第2話 リレーで模擬戦!
本日の集合場所は御机神社ではなく四條畷神社。こちらも飯盛山のふもとにある神社である。南北朝時代の将士が祭られる由緒正しき神社。駅の方から見るとこちらの方がメジャーで立派な神社という感じがする。
午前十時。伊勢神宮から贈られたという立派な鳥居をくぐると、すでにそこには帝王寺中学校四天王の姿があった。メンバーのおさらいといこう。
「なにのんびり来てんねん」
ベリーショートの髪型で、男と見間違いそう。四人の中ではいちばんバランスのとれた筋肉をお持ちの部長。
「ちゃんと待ち合わせ時間に間におうとるやろ。ごちゃごちゃぬかすな」
「まぁまぁ、出会い頭に喧嘩しないの」
ロングヘア高身長お姉さんの副部長・
「どうも、こんちわッス」
ヘアバンドで髪をかき上げた、四天王の中でもひときわ筋肉の発達が著しい
「こんちゃーッス!」
この中ではいちばん下っ端なので、とりあえずあたしも元気にあいさつしておく。
「こんにちは~。気合入っとるね、天ちゃん」
馴れ馴れし……親しげに声をかけてくれるのは、卓美先輩とは方向性の違う可愛い系イケメンの
「さてさて、みなさんお揃いですね」
四対四でにらみ合っているところに、二人の大人が登場する。一人は我らの顧問・
「ほなとっととやるでぇ。今日は久々に和子の姐御と飲みに行くんやからなぁ、はよ終わらせないかん」
帝王寺四天王に負けず劣らずマッチョなおば様。金色のラインが入った黒ジャージを着こなし、青みがかったサングラスをかけている。こりゃ元ヤンに違いない。飲みに行くって、まだ午前中だけど。
「中田先生、あまり生徒の前でそういうことを言うのは……」
「すんまへん。ちょっと浮かれてもうて」
帝王寺中学オリエンテーリング部の顧問・
「それではさっそく、必要なものを配布しましょう」
「押忍」
本田先生が目くばせすると、中田先生がトートバッグからジップロックを人数分取り出す。受け取ったジップロックには地図と一枚のカードが入っている。
「今日は駅伝形式のリレー・オリエンテーリングです。その地図は、各区間のスタートとバトンパスの地点を示しているだけです」
この四條畷神社から山裾に沿って少し歩いたところにある御机神社がスタート地点。川沿いに斜面を登っていく第一区間。水飲み場を経て山中の
「コントロールは各区間に一つずつ設置してきた。その場所はマスターマップにだけ記してある」
コントロールというのは、オリエンテーリングで使うオレンジと白のフラッグのことだ。中田先生の手元には二枚の地図。あたしたちに配られたものとは違うらしい。
「このマスターマップは、スタートと同時に第一走者へ渡す。その後はこのマップをバトン代わりにリレーをしてもらう。君らはあらかじめ自分の走る区間を知っているが、どこにコントロールが隠されているのかは、バトンが渡されてはじめて知ることができるっちゅうこっちゃ」
ルールを把握し、一同うなずく。
「ほんなら、さくっと走順決めてくれや。制限時間五分!」
中田先生の合図とともに、チームどうし固まって作戦会議。
「第一区間は直線のスピード勝負ですから、卓美でしょうね」
作戦とか考えるのはやはり燐先輩の役割のようだ。
「あんまおもんなさそうな区間やけど、しゃーないな。スタートダッシュで差ぁつけといたるわ」
おもんなさそうなどと言いつつ、スピード勝負と聞いてニコニコしている。わかりやすくてカワイイ。
「第二区間は私がつないで、山頂前の登りは風子でしょうね」
おやおや、あたしの名前が出てこないぞ? そうかベンチか。ベンチあたためるぞ~。
「ほな、最後の下りは天ちゃんやね」
風子先輩があたしの肩にソフトタッチ。あー、やっぱオリエンにベンチはなかったか。
「えええ、いきなりアンカーですかぁ? 荷が重いっす」
とは言いつつ、この区間割だと、あたしの強みが生かせるのはたしかにココしかないのだった。
「オレらが大差付けてバトンつないだるから、大船に乗ったつもりで待ってたらええ」
などと話しているうちに、五分経過。
「よし、走順に並びなさい」
第一区間、木村卓美VS持田国恵。いきなり主将対決。走り出す前から火花がやばい。第二区間、森本燐VS多々良亜門。頭脳対筋肉の様相を呈している。第三区間、林原風子VS増井長谷子。期せずして副部長対決だ。第四区間、山川天VS広瀬藍。幸か不幸か、アンカーは一年生対決。
「それでは、各自スタート地点に移動しましょう。第一から第三走者は私とともに御机神社経由で行きます。第四走者はこちらの四條畷神社裏の登山道から行った方が早いので、中田先生誘導お願いします」
「ウッス。行くぞ一年ども」
第一から第三区間のスタート位置はみな、ここから見て山の反対側だ。あたしと藍ちゃんだけが中田先生側になる。
「ウッス」
「オイッス」
あたしと藍ちゃんはつられて返事をし、ヤンキーっぽいジャージの後ろに従う。
「第一走者の出発は午前十一時ちょうどとします」
「がんばろな~」
「健闘を祈ります」
「おっしゃスタート地点まで競争じゃ!」
「まだ始まってませんよ!?」
にぎやかな声が遠ざかっていく。
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