第6話 破局(秋実編)

 秋実の頬に、冷たい風が当たった。


「秋実、伝えたいことがある」


 普段は温厚な彼氏は、険しい顔つきをしている。交際をスタートしてから、こんな表情を見たのは初めてである。よからぬことが起きるのではないかと思い、心は不安でいっぱいになった。


「夏生、どうしたの?」


 何も悪いことは起こってほしくない、胸の中にある不安のせいで、声はブルブルと震えていた。


 夏生は小さな息を吐いたあと、


「秋実、別れてくれないか?」


 と小さな声でいった。「別れ」と聞かされた直後、脳は一時的にストップする。


「どうして、どうしてなの。夏生が誇れるように、徹底的に体を絞ったんだよ。ときには水分まで我慢したのに」


 一グラムを絞り出すために、天敵となる水分を徹底的に我慢した。


 夏生はため息をついた。


「僕は好きなものを好きなように食べる、秋実を好きだと思っていたんだ。洗脳されたかのように、痩せることばかりを考える女性とはいられない」


「私が太っているせいで、夏生のプライドを傷つけられる。それを見ていたら・・・・・・」


 先ほどまで正面を向いていた男は、視線を右斜め下にそらした。


「いわせる奴にはいわせておけばいいんだ。そんなことに負けていたら、流されるだけの人生になるぞ。自分の意志を強く持つようにしろ」


「夏生・・・・・・」


 先ほどまで青かった空に、黒い雲がかかった。彼氏にフラれてショックを受けている、女性とどことなく似ているように感じられた。


「いろいろとありがとう。縁があったら・・・・・・」


 夏生にフラれたことで、体を支える力を吸い取られる。40キロまで痩せた少女は、元カレの目の前で倒れてしまった。

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