022秘密

拓はガラが普段の通りに話すと嬉しそうにするので、ガラは敬語を使わずに話すようになっていた。

本当に変わった主人に仕える事になったと思っている。


2人は今日から森に入り、薬草採取を行う。

未だ、暗い内に出発し、昼過ぎには町から離れた目的地に着いた。


「この先、色々と秘密を守ってもらう必要が有るけど良いかな。」

「奴隷契約の魔法が掛かっている。決して他人に話す事はないから安心してくれ。」

「魔法の力ではなく、ガラに守ってもらいたいんだ。」


拓は、ガラ自身に秘密を守ってもらいたいと考えていた。

拓はガラには奴隷ではなく仲間として対応して欲しかった。


「分かった。この先、どんな秘密だろうと決して話さない事をこの命に代えて誓う。」


ガラが誓うと、拓が空間魔法で収納したものを取り出す為にゲートを開いたのだが


「このゲートは何だ。」


ガラの目の前に現れたのは巨大なゲートだった。

取り出したのは1辺が3mはある濃い緑のテント。

それも、同じサイズのを3つも。


「拓さんは、初級魔道師だと聞いていたが。」


ガラが驚いていると、


「初級魔道師で合っているよ。ただ、俺の場合は、少し特殊。

 持っている魔力量そのものは上級魔道師を軽く超えているけど、放出出来る魔力は初級魔道師レベルなんだ。

 空間魔法も大量に収納できるけど、開けるゲートのサイズは今のが限界。」


空間魔法で収納した物は、保存時の状態を維持する事ができるという。

そんな空間魔法が使える魔道師は、この国全体を探しても何人居るだろうか。


「確かに、他人に知られると厄介事しか引き寄せないか。」

「大量の荷物を劣化させずに保管できるなんて、便利すぎる魔法だからね。

 それなのに攻撃力は無いとなると、下手に他人には話せないよ。

 さて、拠点とするテント型の小屋の説明をするよ。」


拓が取り出したのは、本当に小屋だった。

カモフラージュの為に布が貼られているが、実際の外壁は金属で出来ていて、魔獣の攻撃にも耐えられるだろう。

底も金属と言うので、砂利等の場所でも問題無く、平坦で有ればいい。

内装は木目調の材質だが、本物の木より防音、保温の効果も高い。

実際に拓が叫んでも、扉を閉めてしまえば外には声が全く聞こえなかった。

壁の一部はスライド式の扉となっていて、3つのテントは通路を延ばして繋げる事が出来る。

1つは寝室、1つは簡易キッチンとリビング、最後のは風呂とトイレになっていた。

寝室と風呂は壁3面を物が置かれ扉は使えない様になっていて、キッチンの付いた小屋は3面の扉が使用できる。

キッチンを中心に寝室とトイレ、風呂がつながれていた。

トイレの部分だけは地面がむき出しで、拓が土魔法で穴を堀り、便座をつける。


拓が土魔法まで使ったので、もしかしたらと思いガラが聞いてみると

火、水、風、土、木、雷、氷、光、闇の全ての属性魔法を使えた。

通常の魔道師だと1つの属性が使えるだけだと考えると、拓は特殊と言える。


「魔力量の事と良い、本当に拓さんは規格外だな。」

「全てが初級魔法でしかないから微妙だけどね。

 それでも薬剤師なら十分だから助かっているよ。」


ガラから見れば十分過ぎる話だ。

普段の生活で、拓ほど自由に魔法を使いこなしている人なんて初めて見た。


「寝る場所だけど、ガラはマットを用意するから我慢して。

 2つ並べる広さは無いから、その内巨大なベットを購入する予定。

 ただ、他の人にばれないように購入したいんだよな。」


ガラはリビングで大丈夫だと言ったが


「リビングと言っても狭いからね。

 同室だと色々溜まるものがあるけど、そこは男同士気を遣おうか。」


と面白い事を言ったかのように笑う拓。もしかして、下ネタだったのだろうか。

ガラは拓の奴隷に対する扱いもそうだが、笑いのセンスも独特だと思う。



奴隷にとって拓の下に居られる事がどれだけ幸運な事か・・・

ガラはそれを十分に理解し、今回の薬草採取で自分を選んだ事が間違いではないと思って貰おうと考えていた。

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