高校生活の終わりを迎える若者たちの、心の機微を繊細に描いた青春ラブストーリー。物語は、卒業を控えた高校3年生の今村悠と彼女のいずみの関係から始まります。
物語序盤では、悠といずみの関係が冷め始めている様子が描かれます。二人は卒業後の進路の違いから、将来への不安を抱えています。悠は推薦で隣県の大学に進学が決まっており、いずみは実家のパン屋で働く予定です。この状況が二人の間に距離を生み、明日の約束をしなくなるなど、恋はすでに自然消滅寸前。
バレンタインデーを迎えた悠は、暇を持て余して近所の公園でバスケットをしていました。そこで後輩の八代凛音と出会い、彼女の提案で1日を共に過ごすことに…
登場人物たちの心情描写がこの作品の魅力です。悠の迷いや不安、いずみの優しさと強さ、凛音の純粋さと情熱が、読者の心に響きます。語り手である悠の内面の変化が特に丁寧に描かれており、彼の成長過程を読み手は追体験することになります。
日常の何気ないシーンや会話の中に高校生らしい瑞々しさが感じられ、思わず微笑ましくなる場面もあります。バスケットボールやゲームセンター、映画館でのデートなど、高校生活の断片が生き生きと描かれています。
青春の儚さと美しさ。人と人との繋がりの大切さ。同世代の若者にはもちろん、大人になった読者にも青春時代の日々を思い出させてくれる、そんな作品だと感じました。