第21話 ヴィオ昔話をする

 月に数日のヴィオとの話は、ネージュの密かな楽しみだった。秘密はいけないことだが楽しいので、セッティにも内緒にしていた。

 知らない人と会ってはいけないと言われても、ヴィオは大丈夫と思っていた。


「ヴィオのお誕生日って、いつー?」

「俺の誕生日は、十一月だ。あと二ヶ月だよ」


「二ヶ月って何日?」


「六十日くらいだね」


「うーん、手が足りないからわかんない。そうだ! 何週間?」


 手が足りないと言って足を出すのではないかとヒヤヒヤしていたが、さすがにやめたようだった。貴族の子女が、足を晒すなどありえない。しかし手で足りないなら、足の指は幼子ではよくやる行動だ。


「だいたい八週間くらいかな」


 ヴィオが答えると両手で数え出す。両手で数えられたようで、にっこり笑顔だ。


「八週間だね。ネージュがヴィオのお誕生日お祝いしてあげる!」

「それは楽しみだなぁ。仕事を頑張って終わらせて会いに行くよ」

「頑張り過ぎても疲れちゃうから、メッ。ネージュ疲れるの、嫌いだもん。楽しいことのためでもいーや」


 ネージュは、頬を膨らませて不満げだった。ヴィオは、その頬をつついて遊んでいる。


「うん、そうだね。俺に同じようなことを言った人がいるよ」

「そーなの? どんな人」

「俺が父上の…仕事を引き継いで、しばらく経った後に会った女の子でね。最初に会った時は、綺麗な子だと思っただけだった。けどその後にラベンダーを贈ってくれたんだ」

「ラベンダー? んと、紫のお花咲かないお花?」

「紫色の所が花だよ」

「そうなんだ。すごいねぇ、ヴィオ」

「俺もその子に教えてもらったんだよ。なんで花をくれたのかって、お礼と一緒にね。その子、俺は働きすぎだからせめてゆっくり休めるように、そういう効果のものを贈ったって聞いたよ」


 ヴィオは、ホストの前で疲れた顔をしていたのかと思い周りに聞いた。だが目に見えて、そういう風には見えなかったと聞いた。


「それから疲れて困るのは、自分自身で、他人は心配するふりしかしないから、休みくらい自分で確保しろと言われたよ」

「むー、ネージュちゃんと心配よ」

「ネージュが心配してくれてるのは、知ってるよ。でもその場で心配して行動してくれたのは彼女だけだったんだ。だからかなうれしかったんだ。俺は」


 ラベンダーの香りは、隙を見せないように強ばった体をほぐしてくれてよく眠れた。ヴィオは大丈夫だと思っていたのに、とても軽くなった体に感動した。


「ネージュわかんない」

「そうか。でも今はネージュと遊びたいと思うんだがトランプをしよう」

「トランプする!えっとね。神経衰弱コンセントレーションする」

「俺は得意だぞ」

「負けないもん」


 穏やかな時間がゆっくりと過ぎていく。

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