第24話 町に出よう
にゃー……という声を上げるアヤネは放っておいて。
お兄様からのお願い(命令)ですし、リルに話したところ興味がありそうだったので町に出ることになりました。
まぁそれはいいのですけれど。
「……リル。着替えないのですか?」
今のリルは例の服。そう、原色でフリフリな魔法少女服。見慣れすぎてちょっと感覚が麻痺しかけていますけれど、それでも町中で魔法少女服というのは『ない』でしょう。
いえ、ここは中世ヨーロッパ風の世界観なのですから多少フリフリ&派手な服でも最新式のドレスということで――無理ですね。自分すら誤魔化せません。そもそもミニスカドレスがあり得ません。
リルを奇異の目にさらすわけにもいかないでしょう。
というわけで専属メイドさんたちを呼び出してリルに似合いそうな服を用意させた私です。町娘風から商人の娘が着るようなドレス、果てには冒険者風の衣装まで各種取りそろえています。
……なぜ王女がこんな衣装を持っているかですって? ふっふっふ、備えあれば嬉しいのです。変装して町に出て悪事を調査、王宮に呼び出した悪党共を前に『この銀髪に見覚えがねぇとは言わせねぇぜ!』とやるためには必要なのです。
『どこの遠山の金さんなのにゃ? あとミラカ様はその場で悪党を叩き潰すにゃ、物理的に』
アヤネのツッコミはスルーしつつ私も衣装を手に取ります。リルはいつもフリフリな魔法少女服を着ていますからね、ここは質素な町娘風で攻めるのもいいでしょう。
ちなみにこの衣装、前世的に言えばディアンドルです。もちろん胸部装甲が『ばい~ん』と強調されるヤツ。
『……十分派手だと思うのだにゃ。あと同性でもセクハラは成立するのだにゃ』
失礼な。私はただ純粋な善意で、リルが奇異の目にさらされないようにしているだけだというのに。
言い訳しつつ私はリルにディアンドルっぽい服を手渡そうとしました。
が、リルは腕で『×』を作って拒否します。
「男は敷居を跨げば七人の敵あり! 王女であり友達でもあるミラカを守るためにも、
「リルは男じゃないですし王宮に『敷居』はないですし魔法少女の敵は七人で収まらない――じゃなかった。魔王はまだ隣国の隣国の端っこに手を付けたくらいですし、敵なんていませんよ」
「油断してはいけません!」
「警戒しすぎだと思いますけど……」
そもそも悪巧みをする
しかしそんなことを説明しようとしたらこの世界が乙女ゲームうんぬんも語らなければなりません。……うん、イタイ子ですね。中二病と思われるだけならまだしも、頭の心配をされたら心が折れます。ボッキリと。
しかたなく。
私は魔法少女姿のリルと町に出ることとなりました。
万が一敵が出てきても『裏ボス』パワーで殲滅すればいいだけですし。
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