第18話 閑話 黒い猫
寝息を立てるミラカを見つめながら黒い猫は深くため息をついた。突如として現れた魔猫族や天敵である勇者(魔法少女)が同じ部屋にいるというのに、ミラカは気にすることなく安眠をむさぼっている。
警戒心が薄すぎるし暢気すぎる。
ただ、これで問題はないのだろうという思いもあった。
黒い猫がこの場に来たのは『始祖』に仕えるため。
しかし。ミラカを一目見た途端。黒い猫はすべてを察した。察してしまった。
黒い猫は知っている。
“彼女”の
(…………)
たとえば。寝ているミラカを襲ったとして。一体誰が“彼女”を害することができるだろうか?
伝説の勇者?
神に愛されし聖女?
邪神殺しの英雄?
どれもこれも“彼女”を殺せるとは思えなかった。
唯一可能性があるのは一振りの刀。だけれども、異世界である日本から一体誰が持ってこられるというのだろうか? 一体誰が“彼女”を傷つけることができるのだろうか?
あの刀があったとして、腕前が未熟なら“彼女”に近づくことすらできない。
神すら殺せる腕前があったとしても、あの刀がなければ“彼女”を殺すことなどできないはず。あの刀で殺されたということは、逆説的に、あの刀でなければ殺されていないことを意味しているのだから。
“彼女”とはそういう存在だ。そういう存在だからこそ、怪しい魔物や天敵たる魔法少女がいても平気で眠ってしまうのだろう。
……まぁ、どちらかといえば。寝入ってしまったのは“彼女”の性格が原因だろうが。
懐に飛び込んできた者なら、いくら怪しかろうが敵であろうが受け入れてしまう。良くも悪くも器の大きい
(騙されて。裏切られて。死したあとも死にきれぬほどの怒りを抱いたというのに……)
それでも“彼女”は人を恨んでいなかった。助けを求める人を救ってしまった。
結果として助けた
(相変わらず。無自覚に女性を落としてしまう方なのだにゃあ)
黒い猫のため息は誰にも知られることなく夜の闇へと溶けていった。
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