第4話 私、吸血鬼でした?
昔から変だなぁとは思っていたのです。
妙に力が強かったり、ときどき鏡に映らなかったり、日光が苦手だったりしましたから。
まぁ、魔法のある世界で、私は普通の人より魔力総量の多いとされていましたからそんな不思議なこともあるだろうと考えていたのです。
さらに周りの人間からも――
『無意識のうちに身体強化の魔法を使っているのだろう』とか、
『無意識のうちに視覚遮断の魔法を使っているのだろう』とか、
『夜更かしばかりしているから朝に弱いんだ』など、
そんな感じの解釈をされて事なきを得ていたのですけどね。
……いや、最後のはただ呆れられていただけですか?
とにかく、昨日までは大して疑問に思っていなかった私ですが、よくよく考えてみるとおかしなことがたくさんありました。
吸血鬼のテンプレ特徴はもちろんですが、一番おかしいのは、やはり胸部装甲の薄さでしょう。
周りの貴族子女の胸部装甲が二次性徴という名の天然改造手術によって増加の一途を辿っているのに、私にはまったく変化が見られませんでしたから、これはもう吸血鬼だから身体の成長が止まってしまったに違いありません。
成長の限界? ただの貧乳? ははは、この王女たる私にそのような不幸が降りかかるはずがありません。だからきっと吸血鬼とか、人魚の肉を食べたとか、そういった理由で成長がストップしただけなのです。
……自分で言ってて虚しくなってきました。
こほん。衆人環視のこの状況で吸血鬼の力を試すわけにはいかないのでそれはまたあとにするとして。
もしも吸血鬼であるならば
なにせ吸血鬼は年を取らないのです。
私は王女。何かと目立つ立場ですし、何度も公の場に足を運ばなければなりません。
十年くらいなら『若作りですね』で済むでしょうけれど、二十年三十年と姿が変わらなければさすがに怪しまれるでしょうし、いくら王族とはいえ吸血鬼であるならば討伐されてしまうはずです。
いえ建国王の奥さんの一人が吸血鬼だったという伝説もありますが、伝説を鵜呑みにしてはいけません。伝説よりも間近の危険。吸血鬼が『バケモノ』である以上、討伐対象にはなってしまうはずです。
魔法ならある程度の外見は誤魔化せますが、寿命は誤魔化せません。さすがに人間の寿命に合わせて自殺するのは嫌なので、80年くらい過ごしたら王宮から消える必要があるでしょう。
せっかく王族として生まれたのに、平民として生きないといけないとは!
…………。
……あれ? 特に問題ありませんね。
なにせ私は前世で平民。むしろ王族としての贅沢な暮らしは胃が痛くなる系の小市民なのですから。
しかも大嫌いな宴会(パーティ)にも強制参加ですし。立場的にお料理をパクパクするわけにも行かず、休む間もなく挨拶を繰り返されるあの地獄を、王族でなくなればやらずに済むのです。
問題はお金ですけど、この世界には冒険者制度がありますし、身元確認もテキトーなので何とかなるでしょう。原作通りの“力”があればドラゴンだって倒せますし。Sランク冒険者として何不自由ない生活を送れるはずです。
というわけで、予定変更。
これからはこの世界の平民としての常識を学びつつ、政略結婚の話が出たら逃げ出してしまいましょう。したくもない結婚をすることもないですし。
魔法少女(?)による惨劇と混乱を脇目に、私は今後の人生設計を決めたのでした。
◇
~おまけ・10年ほど前のやり取り~
「ミラカ殿下、明らかに吸血
「先祖返りしたんだろう。建国王と吸血姫の大恋愛は有名だからな。『バケモノ』である吸血鬼と違って吸血姫は人の血を吸わなくても平気みたいだし、大丈夫だろ」
「その辺は心配してないが……いくら子供とはいえ、あんな誤魔化しでいいのか?」
「無意識に魔術を使っているって説明か? 子供のうちから事実を教えるのは酷だし、大きくなれば自然に気づくだろ」
「そうだよな。大人になれば自然に気づくよな」
「気づかないはずがないって。吸血姫と人間は身体能力が違いすぎるんだから」
「……大人になるまで気がつかなかったりしてな」
「いや、さすがにないだろ。鏡に映らないんだぜ?」
「だよなー。ありえないよなー」
「ははは、」
「ははは、」
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