第3話 真沼盈、〈ぬめり屋〉での会合
大照律公団のイベントが五月半ばにある。これを足掛かりに、破壊師としての宣伝活動を行おうと盈は企図した。ホノイミ湾から渡って来る霊を迎え入れて、お返しする儀というのが行われる。そこらじゅうの霊道で、呪文が唱えられることとなる。霊道の全国整備という一大事業は七十年くらい前に終わって、しかし現代異相体形成学からすると、かつて霊とされてきたものやそれを扱った事業は、誤りや業者間の癒着も多く、無駄金が浪費された失策という見方が強い。それでも大規模な異相産業が稼働する契機となり、八海企業が本格的に形成される端緒となった歴史的意義は大きい。
大学の時の知り合いと集まり、話をすることにした。最も頼りになるのは盈の親戚である真沼
千種は謎が多く、入学当時の盈が出会った時は、痩せた背の高い神経質そうな青年だったが、ある日構内に赤い着物を着た狐面の小柄な怪人が出没し、千種諫を名乗った。この年寄り臭い口調で話す謎の人物は、千種の妹か、何らかの関係者と思われたが、変異した本人だと盛んに主張し、元の背の高いほうの千種諫は二度と現れなかった。
その他、天竺騎士団の一員水無瀬や、大照律公団司教令嬢である四月朔日、既に破壊師として実績を積んでいる西池などの面子が、ぬめり屋に集結した。ここは正式名称は神田飯店という中華料理屋で、テーブルも床も油でぬめっているのでそう呼ばれている。
「盈はもう破壊師として動いてんの?」と有世が聞いたので、この前、境犬を破壊した、と答える。
「ってことは
「免許はもう持っておるんじゃろ? あの一夜漬けでも問題ないやつ。川渕の方だと五十人中三十人が落ちておるがな。公団も太陽説法とか言っとらんで、もっと教育に力を――」
西池がノートパソコンを開き、この前買ったという呪いの映像を皆に見せる。それは、薄暗い海岸で、黒い服を着た長い髪の女性がこちらに背を向けて立っているものだった。三十秒ほどで映像は終了する。ネットオークション? と四月朔日が尋ねると、雑誌、と答える。この映像を武器として使えないか、と西池は考えているようだった。これを何度も繰り返し見ると、徐々に女性がこちらを振り向く。その顔を見たら死ぬという触れ込みだったが、四〇〇〇Cしか計測できなかった。ぼったくりじゃん、と水無瀬が無感情に言った――彼は兜を取らないので、食事はしない――増幅するにしても、反根源拡散考えるとアンプ繋いでフルテンでも一〇〇〇〇いくかどうか――しかも初見の者が一人でもいると最初からやり直しだという話だ。一から素材を集めて自作したほうが早い。
杏仁豆腐を注文したのだがなかなか来ず、代わりに人数分より二人前多いチンジャオロースが来た。
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