14話
あの日も、寒い冬の日だった。
それなりに大きな会社の営業マンとして働いていた父は取引先の事務をしていた母と出会い、結婚した。
それから母は寿退社をしてすぐ兄を産んで、3年後にわたしを産んだ。
父は仕事が多忙ではあったけど、帰ってきたら宿題を見てくれたり、休日には公園や遊園地など色々な場所に連れて行ってくれた。
母もわたしが幼稚園に入るとパートとして働きだしたが、忙しいはずなのにいつも学校から帰ってくると手作りのおやつを用意してくれて、弱音を吐かず常に穏やかな優しい笑顔をわたしと兄に向けてくれる。
そんな優しい両親が大好きだった。
だけど、ある日。珍しく関東で大雪が降って、父が乗っていた電車が動かなくなってしまった。
途中下車させられた父を車で迎えに行くと行った母を、兄と二人で見送ったのが最期に見た姿だった。
父を迎えに行って合流した帰り道に雪でタイヤがスリップしてしまい、ガードレールに衝突して両親は病院に運ばれたが打ち所が悪く帰らぬ人となってしまった。
当時まだ幼稚園の年中になったばかりのわたしは、兄が何を言っているのかよく分からなかった。
『……だいじょうぶだ。あかねは……にぃちゃんが絶対に守ってやるから……』
後にも先にも、わたしが兄の涙を見たのはあの時だけだった。
それから身寄りの無いわたし達は近所の施設へと入る事になる。
「話は聞いたよ。大変だったね……でも、もう大丈夫! 今日からは家族たくさん! 仲良く暮らしていこうね~」
施設長こと間木さん(子供達からはあだ名でママさん)と呼ばれていたかなり細身の女性は朗らかな笑顔で、優しくわたしと兄を迎え入れてくれた。
施設長は身寄りがなくて困っている子供達を次から次へとお世話をしようとする人で、わたし達が入った頃はかなりの赤字経営でママさんは自分の食べる食事をかなり減らして帳尻を合わしていたのだ。
それに気が付いたら兄が施設長を問い詰めるも「私は気にしないで大丈夫よ~」などのんきに返されてしまい、このままではダメだと兄は経営学や書類の書き方などを独身で学び、施設の経営をなんと黒字にまで持ち直す事に成功したのだ。
そんなある日の事。
「みんな~、また新しい家族が増えたよ! よろしくね~」
施設長のいつもの困っている子供を放っておけないクセ(?)が発動したらしく、連れて来られたのが双子の姉弟であるあみ姉ととも兄だった。
基本的に施設には3~6歳の子ばかりで、それまでは13歳である兄が一番上、10歳であるわたしが二番で洗濯や家事を行っていた。でも、兄と同年代の二人が来た事でぐんと効率が上がったのだ。
最初は仲良く出来るか心配だったが、あみ姉もとも兄も穏やかな人柄で面倒見もよくて、子供達が懐くのも早かった。
基本的にわたしとあみ姉で家事や子供達の世話を行い、兄ととも兄が施設の運営をする。気難しいと言われてなかなか友人が出来にくい兄だったが、とも兄には心を開いたのか時には笑みを浮かべて会話する日も増えたほどだ。
あまり、兄とあみ姉はあまり接点がなかった。というよりも、妹以外の異性とは一切接点がなく、何を話せばいいのか皆目分からない兄があみ姉に近づこうともしなかったのが大きい。
でも、あみ姉はいつも施設や子供達の事を考えて行動する兄にいつの間にか惹かれていたらしい。ただ二人で話しかけるきっかけが見つけられず過ごしていたある日、兄が施設の壁を修理しようとしていたら指を切ってしまった。
気にせず作業しようとした兄をあみ姉は初めて大きな声で叱って、すぐに手当をした。呆気に取られた兄はされるがまま。
治療が終わってから、大きな怪我じゃなくて良かった、と可愛らしく微笑む姿を見てどうやら兄は初めてそこで恋心を自覚したようだった。
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