第16話 待ち時間は通常の何倍?
太陽光ってこんなに強かったのか。これなら発電できるのも頷ける(?)。私は何日ぶりかの日差しの洗礼を浴びながら、なんとかミズキさんとの待ち合わせ場所にたどり着いた。
場所は最寄り駅の改札前。他に予定のない私は早々に外出の準備を終え、20分前くらいにそこに到着していた。
スマホの画面を見つめる。そこには「ミラクル探偵プリティー☆ミステリー」の初代主人公の顔が時計と重なって表示されていた。
好きなアニメキャラクターを見て、ほんの少し勇気づけられた私はSHINEのアプリを開いた。
『今到着しました!』
真っ白な吹き出しに文字を入力し、またしても送信の手前で躊躇する。先に着いたんだし、大人しくこのまま待っていたらいいのでは? こんなメッセージを送ったらなにか催促しているみたいだ。
いやいや、ミズキさんと私がきちんと約束して会うのは今日が初めてだ。相手がすでに待っているとわかっていた方が安心するのでは? それとも文章はやめて同じ意味合いのスタンプを送った方が軽い感じが伝わるのでは?
例によって私は思考の迷路を彷徨いはじめた。前回の教訓を活かし、とりあえず吹き出しの文章は一旦消して、白紙にしてからどうすべきかを考える。
電車が到着し、駅の中からぞろぞろと人が出てきた。私は改札を通り抜けていく人の中からミズキさんの姿を探す。けど、そもそもミズキさんってここまで電車で来るのかな? あのコンビニがバイト先ならひょっとしてこの辺に住んでいるんじゃ……?
駅から吐き出される人が徐々に減っていき、私はなぜか今度は不安に駆られた。まさかミズキさん、来ないなんてことないよね?
いやいや、まだ約束の時間より10分以上も前だし、今の電車には乗ってなくて当たり前。――っていうか、そもそも電車じゃなくて歩いて来るんじゃないのか?
勝手に早く来ただけなのに、わずか10数分の待ち時間がとてつもなく長く感じられる。駅の改札を行き交う人に目を凝らし、同年代と思しき人を見つけると目を逸らした。
どうしよう、ミズキさんが来なかったらどうしよう……?
約束の時間にはまだ5分以上ある。私が単に早かっただけ。時計の針が進んでいくごとに焦燥感に駆られた。
大丈夫、ミズキさんから声をかけてくれたんだもの、大丈夫……、大丈夫。
約束の時間の3分前、急に私は家に帰りたくなった。待って待って、まだ約束の時間にすらなっていない。なのに、どうしてミズキさんが来ないと思ってるんだろう?
心の中で私は自問自答を繰り返していた。わかっている、いろんなことを諦めて――、自分のことも諦めて日々を過ごしてきたから、久しぶりに湧いてきた「期待」を裏切られるのを恐れているんだ。
だから、先に幕を引こうとしている。傷口が広がる前に……。
「ごめん、コウちゃん! 遅うなったっちゃ!」
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