第15話 外も心も日が昇る?
『こちらこそ夜中に付き合ってもらってありがとう! 次の土曜日空いてたら〇〇のカフェとかどうかな?』
実時間にして5分程度――、体感時間はその3倍くらいか……、ミズキさんからのメッセージが返って来た。それもこちらの期待通りというか、期待以上というか。
具体的な日と場所まで提案されているので、ミズキさんの方にも「会いたい」意思があるのは間違いない。いくら人より何倍も思考が後ろ向きな私であっても、これに関しては確信をもっていえる。
つい先ほどまで独り相撲で悶えていた私。今度はひとり小躍りをして、なぜか尻を振った後に冷静さと羞恥心が周回遅れでやってきて、またも「無」の表情をつくるのだった。
外の日は、あと1時間もすれば一番高いところへとやってくる。私はリビングのカーテンを開けずに、薄暗い部屋の中で朝食をとり、スマホと格闘していたのだ。
その隙間から陽射しが差し、部屋に一筋の「光」が入り込んだ。それはさながら今の私の心を映し出ているかのように……。
◇◇◇
土曜日、この日も外は晴れていた。あれからミズキさんと何度かSHINEのやりとりをして待ち合わせの時間と場所を決めた。
部屋のカーテンを人差し指で少しだけ開けて外を見る。こんな明るい時間に外へ出るなんていつ以来だろう? 日光を浴びるだけで眩暈が起こりそうな気がする……。
真っ黒な髪をブラシで解きながら鏡を見つめる。少しはお化粧の勉強と練習をしておくんだったと後悔した。
そう多くない余所行きの服の中から、私はなるべく大人っぽく見える服を探した。うまく言えないけど……、傍から見てなるべくミズキさんと対等に映るような――、そんな気持ちがそうさせていた。
ボーダーのシャツの上から濃い青色のカーディガンを羽織る。それから、深緑のカーゴパンツを穿いて、靴は合皮のブーツを選んだ。
服選びに時間をかけたのなんて本当に久しぶりだと思った。高校は制服があるし、引き籠る前からインドアだったゆえに、私服での外出は限られていた。
スマホの時計表示に目をやる。今から待ち合わせの場所に向かうと、約束の時間よりずいぶん早めに到着してしまう。だが、外出に慣れていない私は万が一のアクシデントに備えて家を出た。
――というか、他の予定がない私にとって、準備を終えた後の家にいる時間はとてもつもなく長く感じられるのだ。
それなら久々の、お日様の昇った時間帯での外出を楽しもうと思った。性格はインドアだけど、外出が嫌いなわけじゃない。単に出不精、面倒なだけなのだ。
もっとも、「知り合いに会ってしまうかも」という点に限って、外は嫌いといえなくもないけど――、今だけはそれを考えないようにした。
だって、会いたい人が待っているのだもの。
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