第4話 青い春より暗い部屋?
小さい頃から私は、テレビアニメが大好きだった。
私が小学校1年生の時から始まった「ミラクル探偵プリティー☆ミステリー」は、今でもシリーズが続いている。そして私は、全シリーズ欠かさず見ている大ファンだ。
主人公はシリーズごとに変わるが、舞台はいつも中学校。探偵小説のいわゆる語り「ワトソン役」の子と探偵――、すなわち「ホームズ役」の子の2人ペアが主役となる女の子向けにしては一風変わったアニメだ。
物語は、学校で起こる怪事件を解決する話を中心に、主役の女の子たちの恋愛模様も並行して描く「青春ミステリー」。
幼い頃からずっとそれを見ていた私は、漠然と画面の向こう側の少女たちに自分を重ねていた。
ところが、いざ中学生になって私は気が付く。アニメやドラマで「当たり前」のように描かれている「青春」は、決して誰しもに与えられるものではない、ということに……。
私の中学校生活は、思い描いたそれとは程遠いものだった。日増しに積もる劣等感を抱えながら過ごす日々。なにをするにしても「私以外の誰かがした方が――」が先に来る。そうして周囲とのかかわりも閉ざしていった。
そんな私に残ったのは、決して得意ではない「勉強」。意外にもそれが、ひとりでできる最後のアイデンティティの砦となってくれた。
来る日も来る日も息を潜めて自分の席で勉強に明け暮れた。周囲が「姫森は今、勉強してるから――」と遠慮してくれるのが逆に気楽で、むしろ心地よくすらあった。
だからといって、名門高校に入学できたわけじゃない。人より何倍も勉強したつもりだったけど、私の場合、それでようやく「人並み」か――、あるいはそれ以下だった。
卒業式は、門の前で1人だけ写っている記念写真を撮ってもらい、寄せ書きのページが真っ白なアルバムを持って帰った。
他人とのかかわりを断った中学校生活は、本当に味気なくてくすんだ時間だった。
そうして、高校生になった私。こんな私でも新しい学校生活の前には、不思議と期待が膨らんでいた。
中学時代、1ミリも味わうことのなかった青春の1ページをここに刻む、と息巻いていたのだ。
だが、言わずもがな……、いかに新しい環境へ身を置こうとも、本質的に「私」はなにも変わっていない。
人付き合い、周囲に合わせる、なんてことがいきなりできるわけがない。
さらに中学時代、努力に努力を重ねてやっと滑り込んだ学校だ。そこでの勉強のレベルは本当にギリギリ理解できるか否か。
結局、変わったのは以前よりもずっとずっと勉学に追い立てられるようになったことだけ。あとはなにも変わっていない。虚無で味気なく、色褪せた学校生活が続くだけだった。
そして――、高校入学からおおよそ半年くらいだろうか、登校する意味を見出せなくなった私は学校を休んでしまった。当時はたった1日だけのズル休みのつもりだった。
ところが1度休んでしまったら最後、これまで障害とすら思っていなかった「登校する」が日毎に成長する巨大な壁となって立ち塞がってきたのだ。
もちろん私にそれを乗り越える力はなく――、無断欠席が何日か続いた後に休学の手続きをして今に至ってしまっている。
それは色味のない学校生活が、暗くて陰鬱な、自室での引き籠り生活に変わっただけだった。
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