※読み合い企画からのレビューです
幼馴染みの莉子にデートに誘われた翔太
しかし、その誘いは二度目であり、一度目は莉子にすっぽかされていた
莉子は、重い記憶障害を患っていて──という導入から始まる本作品は、映画「私の頭の中の消しゴム」を思わせる物語だ
莉子には前日の記憶がほとんど残らない
だから、翔太とのデートの記憶もきっと、明日には忘れているだろう
でも、翔太は覚えている
何度"初めてのデート"を繰り返したとしても、翔太だけは覚えているのだ
ラスト近くの台詞
「お前が何を忘れても、俺は覚えてるよ。」
この台詞が、翔太の覚悟と、この物語のすべてを表している
もしかすると、莉子の病状は、さらに進んでいくかもしれない
何もかもを忘れる日が来るのかもしれない
それでも、「覚えている」
翔太が忘れない限り、莉子との日々は実在していたのだから
絶望しかない状況にも関わらず、どこか爽やかで希望に満ちた余韻を持たせたラストが心に残る本作、一万文字少々の短編なので是非読んでみてほしい