第51話
ベルが鳴り給食が始まると、またニヤニヤしながらピーターが戻って来た。
「名前は園田潤。
女子も男子もジュンて呼んでる。
さっきの女子達がアイラのこと話してたから、たぶんアイツだと思う。
中肉中背。 醤油顔のまぁまぁハンサム。 静かにしてるけど、けっこう芯は強そう!」
「有り難う!よく分かったわね」
「だいたい見当はつけてたんだけど、体育着姿だと名札が無いから名前が分かんなくて………」
私はクラスと名前を知ったことでホッとした。
しかもピーターの見立てが可也信用出来ることは経験済みで分かっている。
ここまで分かっていれば安心だ。
これ以上私からすることは何も無い。
と、思いながらも、放課後私はチカに園田潤について知る術が無いかと言ってみた。
私からピーター情報をチカに言うわけにはいかないからだ。
あわよくばチカにも園田潤を見てほしい。
案の定チカはやる気満々!
「私の好奇心と探求心刺激してくれるわねぇアイラ!
メラメラ燃えてきたぞ〜!
何げに調べてみる! 待ってろよ〜!」
チカと私は探偵のように3年生の動向を追い、何とか私を捜しに来た3人の女子達をチカに教えることが出来た。
以降チカは一人で頻繁に女子達の様子を探り、ようやく園田潤を見つけた。
そしてピーターと同じことを私に伝えてくれた。
その後は何かにつけチカは私に園田潤情報を提供してくれた。
チカの園田潤評価も悪く無い。
少しづつ私も園田潤に興味を持ち始めた。
それでも私のダルさは抜けなかった。
何かにつけ「どうでも良い」という結論が出る。
ピーターは園田潤を探し当ててからエネルギッシュだった。
いろんな園田潤情報を仕入れてきては、私に報告してくれる。
私のダルい病を軽くさせたい使命感に燃え出したようだ。
チカも同じだった。
ただ、ピーターと同じ使命感もありつつ他にも理由を抱えていそうだった。
チカは休み時間毎に園田潤情報を伝える口実で私のクラスに来ては、時間いっぱい私と過ごすようになった。
チカも今のクラスに馴染めていないことが少しづつ分かってきた。
やはり、私がチカ以外とは友達が出来難いのと同様、チカも私とじゃなきゃ駄目だったと 後から聞いた。
ピーターとチカの園田潤情報とそれぞれの見解は殆ど同じだったので、私にもだんだん園田潤が見えてきた。
と言っても実際に見ることはまた出来ていない。
しかしようやく園田潤に対面する日がやってきた。
3Cが音楽で使う為に私達の教室へ来たのだ。
ピーターが私の周りをグルグル旋回して
「3Cだ!3C! アイラ、3Cが来たよ!」
と叫んでいる。
私は緊張でフリーズしそうだったが、次の授業である科学の準備をしながら3Cの生徒達を目の隅で探っていた。
「アイラ! 今入って来たのがジュン!」
いつの間にかピーターは園田潤を馴れ馴れしく『ジュン』などと呼ぶようになっていた。
下を向いたまま、園田潤が入って来た入口の方へ意識を集中した。
それらしい男子が歩く気配を私の全てがアンテナとなって捉えている。
その後ろに3人の女子の気配も有った。
女子達は、私の方を向いてクスクス笑いながら園田潤と思われる男子をつついているのが分かる。
そのうち
「居るよ!」
と囁きながら一人の女子が男子を押した。
男子は少しよろけてから、ロボットのようなぎこちない歩き方で一番窓際の席を目指して行った。
私は教室を出る寸前、窓際の席をガン見した。
「キャ〜!」
3人の女子が小さな悲鳴をあげた。
私をじっと観察していたらしい。
3人の女子に囲まれて真っ赤な顔を俯け、強ばった表情をした男子がフリーズしたまま座っている。
私が初めて園田潤を見た瞬間だった。
つづく
挿し絵です↓
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