第50話

「えぇ〜!? 告られたってこと?!」


放課後チカに話すと、チカは身を乗り出して興味津々の御様子。


「いや別にまだ告られてはいないけど………」


「だけど告られたも同然でしょ!」


「まぁ、私が知ってしまったんだからね………

でも、これで告ったなんて言われたく無いな。

ちゃんと自分で行動してくれなきゃ!


それに御執心と言われても……… 私の何に対して御執心なのか不明だしね」


「そんなの決まってんじゃん! チョメチョメしか有り得ん!


で、何て言う名前の人?」


「チョメチョメって………」


私は思わず吹き出した。


「名前なんか聞いて無いよ! 聞くの忘れた!

ってか、聞く暇無かった!」


「駄目じゃん!

一番肝心な事忘れちゃ!」


「一番肝心?………かな……」


「そりゃそうでしょうよ! 名前が分かればこっそり調べることも出来るっしょ」


「確かにそうだけど………正直関心無いもん………


だいたい、私本人に他の女子から知らされるようなやり方、何か違うなって感じ」


「それはちょっと分かる気がする。

周りの人達に言いふらしてる感じだしね………

自分で告る前に、何となく伝わるようにして予防線張ってんのかな………

女子だってのもちょっとね………男子の友達ならまだしも………」


「でしょ………

告るのは半端なく勇気の要ることだから、気持ちは分からないでもないけど………」


でも、内心は名前を聞いておくべきだったと後悔していた。

チカには冷静を装っていたが、既にその男子を知りたくて堪らなくなっていたからだ。

『それが狙いか?』とも思うが、そんなことを考えれば考える程興味が抑えられなくなる。


「本気ならそのうち自分で告ってくるかもね!


えぇ〜! どんな奴だろう〜!」 


チカの方が興奮して夢見心地な表情だ。


「今度はこっちが偵察しようゼ!」


ピーターが腕を組んでニヤニヤしながら囁いた。

そして、私が返事をする前に3年生の教室が並ぶ方へスーッと飛んで行った。


「俺が見てきてやるよ!」


という声が私だけには聞こえていた。


                       

授業が始まってもなかなかピーターは戻らなかった。

私はソワソワして待っていた。


次の休憩は昼休みである。

もうちょっとで終業ベルが鳴りそうな頃、珍しく忙しそうな風情でピーターが戻って来た。


「さっきの女子達はC組、この時間体育だから例の男子を知るチャンス無し!

昼休みにまた調べてみる!

じゃ!」


ピーターはそう言って再び燕のように飛んで行った。

何だか活き活きしている。

私は精悍にも見えるピーターを頼もしく感じた。

そして、自分がクラスも聞いて無いことに気づき一人苦笑いした。


                 

             つづく


挿し絵です↓

https://kakuyomu.jp/users/mritw-u/news/822139837461541504

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