第49話

廊下に出てみると、見覚えのある女子三人が一斉に私を見た。

その一人が私に聞いた。


「アイラさん?」


「はい、アイラは私です」


するといきなり


「キャ〜!」


と三人揃って悲鳴を上げた。

でも決して悪い雰囲気では無い。 

ピーターもびっくりして一瞬飛び上がり、盛んに頭を撫でながら下降してきた。

たぶん天井に頭をぶつけたのだろう。


その後も


「わ〜っ!」


と感心したり


「可愛い!」


と褒めたり


顔を赤らめたり、三人ともいろんなパフォーマンスをしていたが、何が何だかさっぱり分からない。


「あの……… 何か……………?」


私は出来るだけ柔らかい口調て聞いた。


「ひょっとしてアイラさん、去年の文化祭でジュリエットやってた子じゃない?」


別の一人がそう言うと


「うっそ〜! 本当? あの子〜?!」


と、もう一人が目を丸くして繁々と私を見る。


「あぁ、そうだよ! ジュリエットだよ!」


「ね!そうでしょ!」


「はい……私です」


すると急に三人とも興奮して、ワイワイ言いながら私に触りまくる。

終いには再び


「キャ〜!」


の、悲鳴。

それから暫く三人は感動の極みで笑いながらピョンピョン跳ねていた。


「あの………」


今度は少し強めな声を出した。


「あぁ、ごめん!


実は、うちのクラスにさぁ、アイラさんに御執心な男子が居るの………」


「で、ちょっと見に来たってわけ!」


ピーターが「おぉ〜っと!」と言ってズッコケるのが目の端に見えた。


「見に来た………

つまり偵察に………ですか?」


私は笑いながら言った。


「どんな子かなって………」


「どんな子でしたか?」


私もふざけて聞いてみた。


「奴の好みが分かった!

こんな可愛い子なら許す!」


『許す』という言葉から、この三人は私に御執心な彼に好意を持っていることが分かる。


                       


そうこうしているうちに始業ベルが鳴り、三人はキャ〜キャ〜戻って行った。


席に戻っても私は暫く呆然としていた。


ーーーーーふ〜ん……………私に御執心?……………何だかな〜……………ーーーーー


決して悪い気はしない。

次第にどんな男子かとても気になり始めた。


                  

            つづく


挿し絵です↓

https://kakuyomu.jp/users/mritw-u/news/822139836932187161

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る