第42話
一年かけてチマチマと貯めたお小遣いで、パパとママにクリスマスプレゼントを買い、クリスマスツリーの下に並べて置いた。
二人とも大感激してくれた。
いつの間にか、それぞれが趣向を凝らした余興発表会こそ無くなったけれど、無神論な我が家で毎年一番の華やかさを誇っていたのはその頃もまだクリスマスだった。
相変わらず豪華なクリスマスディナーを囲んで、パパとママと私の三人、正確にはピーターも入れて四人が、クリスマスイヴだけは夜を徹して語り明かした。
大概この時期くらいから私は冬休みに入るが、パパとママはまだ仕事が有るのにだ。
ママは自宅での仕事なので何とかなるが、パパは殆どのクリスマスは二日酔い状態の出勤となる。
それでも両親は、唯一素直に家族三人で語り合えるクリスマスイヴを大切にしてくれた。
それに関しては両親に心から感謝している。
両親とのそんな場所が無かったら、私が成長するに従って経験する様々な困難を乗り切る為の土台は得られなかったと思う。
年に一度の深い語らいが私にとってどれ程の糧になっていたか、今にしてようやく分かる。
さて、家族が語らっている時、ピーターはいつもどんなふうに参加していたかって?
勿論、同等に語らっていた。
時に批判したり、褒めたり、誰かに同調したり、泣いたり笑ったり、凄くお喋りで、よく食べた。
私しか知らないことだけどね。
この年の語らいは、終始私の舞台がテーマだった。
演劇部の発表も劇団の公演も両親共に観られなかったので、私は大得意でいろいろ話した。
ピーターも躍起になって舞台での私が別人だと説明していたが、両親に聞こえる筈も無い。
私がアドリブのことを話すと、両親も涙ぐんで感激していた。
アドリブについて劇団の方はあるがままに話したけれど、演劇部の方は、肝心の雪野先輩のことを話さなかったのでイマイチ ピンときてない様子だったが。
その時もピーターは
「雪野美月のこと言っちゃえよ!」
と、私をつついていたけれど、私的にはまだ話す気になれないで居た。
『雪野美月』をもう少しの間大切に保管しておきたかった。
仮に私が雪野先輩に告ってフラれたりすれば話せるだろうと思っていた。
それこそ大泣きしながらでも……………
つづく
挿し絵です↓
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます