第41話
舞台は無事終わった。
全員でカーテンコールに出ると、座長が私達子役の方に手を向けて私達の功績を讃えた。
客席が拍手の嵐となった。
子役達が深々とお辞儀をすると拍手は一層強く大きくなり、グラグラする程の音量となった。
ふと雪野先輩に目を向けると、雪野先輩の視線とぶつかった。
私は雪野先輩から目を離さず軽く会釈をした。
雪野先輩も会釈を返してくれた。
それは本当に自然な成り行きだった。
知り合いと目が合って挨拶する、それだけの。
私はそれが出来たことに感動していた。
私が当然のように挨拶出来たこともだが、私の唐突な会釈に雪野先輩が応えてくれたことに鳥肌立つ程感激していた。
私と雪野先輩の間だけに存在する同志のような空気を確認した気さえした。
恋人同士の甘いアイコンタクトよりもっと私には嬉しいものだった。
雪野先輩の位置からなら、咄嗟のアドリブも見抜けていた可能性がある。
それも含めて雪野先輩は私を評価してくれたのかもしれない。
決して否定的な会釈では無かった。明らかに肯定の会釈だった。
『良かったよ!』と頷いてくれたような。
私は雪野先輩との一瞬のやりとりで、暫く興奮が収まらなかった。
この感動で『生きていける』とさえ感じた。
気がつけばピーターは、雪野先輩の肩に腰掛けてステージを見ていた。
「アイラはステージに立つと人が変わる!」
と、後からピーターが言った。
「どんなふうに?」
と聞くと
「凄く堂々としてる! 迫力さえ有る!」
と、珍しく真面目な表情で言う。
そして
「それに楽しんでるのが分かる!
アイラは舞台で生きてる!」
と、付け加えた。
ピーターのその言葉は私にも可也シックリくるものが有った。
私の難題は一通り終わり、取り敢えずクリスマスを迎える準備に勤しんだ。
まだ友達とパーティーをするような年頃では無かったので、パパとママにクリスマスプレゼントを用意する為、部活の無い休日にはピーターと街に出てあちこち物色するのが楽しかった。
つづく
挿し絵です↓
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