第23話

グループ演劇は、脚本、演出、演技、舞台装置、全てを自分達で考え創作するという勉強だった。


私はこの作業にたずさわっていくうち、自分で全てを生み出し創り上げることが、もの凄く好きで性に合ってると気づいた。

脚本作りも、演出も、舞台装置作りも、演技することも楽しくて堪らなかった。


グループでの話し合いだと、大概所謂『お勉強の出来る』メンバーが中心になって進む。

でもこの時、当然のようにリーダーの立ち位置についた女子が提示するアイディアは、在り来りだったり幼稚過ぎたりして全然つまらないと私は感じた。

私は思い切って自分の案を出してみた。

すると皆「なるほど」というように感心して、リーダー女子も驚いた表情で私に向ける視線の色を変えていくのが分かった。

吉野君も「アイラさん凄い!」という眼差しで、私を見つめていた。

あの表情は、私へのリスペクトを感じさせる初めてのものだった。


                        次第に私のアイディアが動き出し、自然に脚本、監督は私がつとめることになった。

全員が進んで私について来てくれる体勢になっていた。


いっちょ前に話し合いの一員ぶるピーターの胡座をかいた小さな姿は、密かに私の笑いを誘った。


                       

キャストは全員参加なので、全員が主役になれるよう演出した。

クラスで発表した時は私達のグループが断トツの好評価を得た。

私が考えた斬新ざんしんな演出が見事に受けたのだ。

私自身にとっては、ただ普通に思い浮かぶアイディアだったけれど、所謂『お勉強の出来る子』にも出来ない事が有り、私にはそれが出来るということに改めて気がついた。


それから私は『演劇』に興味を持ち始めた。

担任の先生もそんな私を見て、小学校最後の学年演劇発表会のキャストに私を選んで下さった。

本来なら『お勉強の出来る子』が選ばれることが殆どなのだが。


ただ、キャスティングはされたものの、主役はやはり『お勉強の出来る子』だったけれど。

それでも私は満足だった。


本番の間中ピーターがプロンプターを務めるべく私の耳元に座って待機していたが、結局最後迄ピーターの出番は無かった。 私が完璧に台詞せりふを言えたから。

ってか、私の台詞が少なかったから、が正解である。


                 

             つづく


挿し絵です↓

https://kakuyomu.jp/users/mritw-u/news/16818622170604124134

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