第22話
小学校中学年の頃から5年生まで一緒のクラスだった男の子が居た。
1年2年、3年4年、5年6年とは2年間づつのクラス交替だったが、1年から6年迄通して同じクラスになることも有り得る。
シホちゃんとは何故かずっと一緒だったが、4年生頃からそれぞれ気の合う友達も変わってきたように思う。
中学年から5年生迄一緒のクラスだったその男の子は、今思えば私の初恋の人だったかもしれない。
吉野君と言う勉強も出来て穏やかな優しい子だった。
クラス委員などには必ず
先生を始め皆が心の何処かで信頼し頼っているような男の子だった。
ある時、グループ毎に演劇をする授業が有った。
私と吉野君は一緒のグループになった。
他のメンバーの家で練習をした日のこと、私は途中でトイレに行った。
トイレが済んで戻ろうとした時、全身が映る大きな鏡を見つけた。
我が家には無い大きさの鏡が珍しくて、私は暫く鏡の中の自分に見入っていた。
いろいろポーズを変えて遊んでいると、突然鏡の中に吉野君の姿が入った。
吉野君はニコニコ笑っている。
そして
「可愛いね!」
と囁いた。
私は顔中火照ってドキドキした。
吉野君も頬をピンクに染めていた。
あの時二人の中に流れていた空気は、紛れもない💖模様だったと思う。
ピーターもそれを感じて二人の頭の上からキラキラ輝く粉を振りかけてくれた。
でも残念なことに縁側から射し込む西日を浴びて輝く塵屑(ごみくず)と混じってしまった。
吉野君がピーターのプレゼントを見たとしても
「塵屑って綺麗だ………」
くらいにしか思わなかっただろう。
そんなことが有って以来、私は吉野君が何となく気になっていた。
吉野君も私と目が合うとニッコリ笑ってくれた。
5年生最後の日、担任の先生から衝撃的な発表が有った。
吉野君が転校の為お別れだと。
吉野君は、皆と一人づつ握手がしたいと申し出た。
そして窓際の生徒から順番に握手し始めた。
その頃私は、包帯をした私の手に触れられることに
私の手をあからさまに
私は、握手の順番が回ってくるのを複雑な思いで待っていた。
いよいよ私の番が来た。
私は包帯した両手を机の上に置いていたが、自分から差し出す勇気が無かった。
すると、吉野君の手が力強く私の手を机から引き離し、しっかり両手で握った。
そして満面の笑みを浮かべながら何回も何回も振った。
誰との握手より長い時間だった。
私は嬉しさと別れの寂しさで泣きそうだったが、必死で堪えて笑顔を作った。
へこたれている自分を見せたく無かった。
ピーターは泣きながら吉野君の手にしがみついていた。
吉野君の力強い手振りに
吉野君は、私の苦境を分かっていて、私への励ましと皆への忠告的な意味合いであのシチュエーションを
その優しさと強さと判断力は有った子だ。
ひょっとしたら、鏡の前での事だって、私への同情と励ましからのものだったかもしれないとも思う。
でも、私があの時、吉野君に初恋をしたことは間違い無いだろう。
もし私が有名人で『初恋の人』告白なんてことになったら、迷わず吉野君だ。
そして『初恋の人登場』………よく妄想する。
つづく
挿し絵です↓
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