第11話
私はシホちゃんとママゴトや人形遊びや弁当びらきをするのが大好きだった。
人形遊びの縫いぐるみや着せ替え人形等はママが作ってくれた。
ママは絵を描いたり物を作るのが得意だった。
ママが作る物は何もかも既製品よりずっと素敵だった。
着せ替えの、ママがデザインした衣類や小物、それぞれ個性あるキャラクターを持つ小さな紙のマネキン人形。
そしてうっとりする程柔らかい縫いぐるみ。
等々………
私の夢を育んだ一番のベースと言える。
これにはシホちゃんも羨ましがったし影響されたようだった。
シホちゃんが後々大学で美術系の学部を選んだことを知った時、ママのささやかな作品がシホちゃんの人生にも関わったと実感したものだ。
ママが、私が生まれる前絵を描く仕事をしていたことを聞いたのは、私が高校生になって油絵の教室に通いたいと言った時だった。
『弁当びらき』と言う言葉は今でも使うだろうか?
恐らく『びらき』は『開き』だと思う。
各々弁当を持ち寄って、外に敷いたシートの上で食べるだけのことだ。
外と言っても自宅近くのことが多く、一見『家の中で食べれば良いのに』と思うかもしれないが、外で食べることが子供にとってはイベント的な要素を持ち、ピクニック気分や友達との特別な時間も味わえ、ほっこり楽しい食事会になる。
シホちゃんと私は、シホちゃん家と私家の間に有る細長い空間で、しょっちゅう弁当びらきをしていた。
外でチマチマ食事する。 それだけで充分楽しかった。
そんな時ピーターはと言えば、私の弁当とシホちゃんの弁当を往復して、チョコチョコつまみ食いをしていた。
勿論シホちゃんにピーターは見えないし、分かる程の量でも無い。
一度だけ、シホちゃんが最後に食べようと大切にとっておいたタコさんウインナーが突然コロッと転がった時、タコさんの足をせっせと引っ張っているピーターを見たことがある。
シホちゃんはキョトンとしていたが、私がピーターに
「無理無理!」
と言うと、
「えっ?」
と不思議そうに私を見つめるシホちゃんの箸は、無惨にも最後のタコさんを掴みシホちゃんの口へと運んでしまった。
ピーターは胡座をかいて腕を組み、顔を真っ赤にして口を尖らせていた。
その姿はまるでタコさんウインナー!
シホちゃんにもピーターが見えたなら、間違って食べられたかもしれないくらいタコさんだった。
私は思わず吹き出して口の中身を全部シホちゃんに飛ばしてしまった。
シホちゃんはそんな時にも決して怒ったりせず『何があったんだろう』的な表情で、手だけは着々と弁当箱を片付けているような子だった。
つづく
挿し絵です↓
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