第3話

男の子のお陰で、ようやく蝋燭の火は消えた。


男の子はその後すぐ居なくなったが、消える寸前私の方に手を突き出して親指を立てて居たように思う。

今考えれば『グー!』の意味だったようだ。


パパもママも大興奮で拍手喝采し赤ん坊の偉業を賛えたが、偉業を成し遂げたのは赤ん坊では無くピーターだ。

その時も赤ん坊は、さも自分が成功したかのように喜んで見せた。

両親に歩調を合わせたのである。

私は末恐ろしい赤ん坊だったようだ。


しかもその時同時に、ピーターは私にしか見えないこと、ピーターの存在を口外してはならないことも感じ取った。

なんて赤ん坊だ!┐( ∵ )┌


                       

赤ん坊の誕生会が滞り無く終わりママが片付けを始めると、ケーキ皿の陰から緑色の何かを見つけた。


「あら? 何の葉かしら?」


ママは首を傾げながら紙ナプキンと一緒にピーターの葉っぱを捨てた。

それを見て赤ん坊ががっかり力を落としたことは言うまでも無い。

自分が抗議することもできず、他人の物を勝手に捨てる行為を見逃さなければならない世の中の不条理を赤ん坊は生まれて初めて味わった。

可也哲学的な赤ん坊でもあったようだ。🤔


                       

その頃から暫く、ピーターは頻繁に現れるようになった。


2歳と言えば微妙な年代だ。

一応幼児のジャンルに入るかもしれないが、まだ赤ん坊から抜け出せずに居る。

でも私の記憶は、その頃からはっきり残っている気がする。

少なくとも哲学好きな頭だけは赤ん坊の域を脱して居たと言えるかもしれないから、記憶を保存する脳は発達していたのだろう。

そのくせ、まだ紙のトレーニングパンツを履いていたのだから厄介な奴だ。


                      

後々両親は、その頃の私は一人遊びが好きだったと言うけれど、当時私は一人遊びをしたことが無い。

幼児期はいつもピーターと遊んでいたのだから。


              つづく



挿し絵です↓

https://kakuyomu.jp/users/mritw-u/news/16818093094079643575


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る