第2話


ピーターが姿を見せるのは、いつもというわけでは無い。

思い出したようにフラッと現れる。

何しろ彼は気紛きまぐれだから。

でも私にとって絶妙なタイミングに現れることが多い。


次にピーターを見たのは2歳の誕生日だったと思う。

それまでにも傍に居たのかもしれないが、はっきり記憶しているのはその日のことだ。

パパとママと私と3人で誕生日のパーティーが行われた。

ママは私の為にイベントを催すのが大好きだった。

何故か私はまだ赤ん坊のくせに、そんなママをシラッと見ていたように思う。

まぁ、赤ん坊だからイベントの味わい方が分からなかったとも言えるが、私的にはママの浮かれ具合に戸惑っていたような気がする。


この時も、私はイベントを盛り上げようと大はしゃぎするママに付き合っていた。


「いよいよケーキ登場!」


ママはけたたましい程ノウテンキな声を張り上げながら、赤ん坊のバースデーケーキにしては大き過ぎる手作りケーキを運んできた。

しかも特大ケーキの中央に殆ど存在感を失って釘のように差し込まれた小さな蝋燭ろうそくが2本。

あの釣り合いの悪さは赤ん坊の脳に、と言うか心に着実なインプットをもたらしたようだ。

何故なら、今でもあの憐れな蝋燭の姿だけはっきり覚えているのだから。

特大ケーキのデコレーションも味も記憶に無いのに。


とうとうお決まりの蝋燭消しが私に課せられた。

電気を消して蝋燭に火が灯される。


「アイちゃん!

はい、蝋燭消して! アイちゃんが吹いて消すの!

フーッフーッって!」


この時もママは必死の形相だった。

私がママの形相に圧倒されてたじろいでいると、勢い余ってママが蝋燭1本の火を消してしまった。


「あぁ………ごめんごめん」


「俺は2歳のママと夫婦なのか?」


とパパが笑った。

ママは照れ笑いしながら慌てて火をつけ直した。


今度こそ私が蝋燭の火を消す!

そう思った私は相当頑張ってフーフーしたつもりだったが、やはり1本だけ消えて残りもう1本がどうしても消えない。

それでも私は窒息ちっそくしそうになるくらい頑張り続けた。

しかし炎も負けじと赤ん坊をもてあそび続けた。


すると、小さな炎の中から見覚えのある光の玉がスゥーッと出てきた。


炎が揺れ出す。


その時、私は見たのだ。

小さな小さな男の子が、その子の全身くらい有る葉っぱで懸命に炎を扇いでいる姿を。


                 

            つづく


挿し絵↓

https://kakuyomu.jp/users/mritw-u/news/16818093094005722632




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