前のエピソード――第29話　遠く離れても

春の訪れとともに、街には色とりどりの花が咲き誇り、人々の心も軽やかになっていた。芽衣は留学先での日々を過ごしながら、音楽の道を突き進んでいた。一方、莉奈は日本で自分の目標に向かって努力を続けていた。

ある日、芽衣からの連絡が莉奈のもとに届いた。

「莉奈、コンサートの日程が決まったよ。来月の15日なんだけど、ぜひ来てほしい」

そのメッセージを読んだ瞬間、莉奈の胸は高鳴った。

「もちろん行くよ！会えるのが本当に楽しみ！」

二人は再会の約束をし、それまでの間もお互いを励まし合う日々が続いた。

コンサート当日。莉奈は飛行機に乗り、芽衣が待つ街へと向かっていた。窓の外に広がる青い空と白い雲が、彼女の期待と緊張を映し出しているようだった。

「芽衣、どんな風に成長しているのかな…」

到着した空港で、芽衣が笑顔で手を振っているのが見えた。莉奈は思わず駆け寄り、二人はしっかりと抱き合った。

「久しぶり、芽衣！」

「莉奈、来てくれて本当にありがとう！」

お互いの顔を見つめ合い、言葉にならない想いが胸に溢れた。

コンサートホールは歴史ある美しい建物で、世界中から集まった観客で賑わっていた。芽衣は緊張した面持ちで準備を進めていたが、莉奈の存在が彼女に大きな安心感を与えていた。

「莉奈がいてくれるだけで、心強いよ」

「私は客席から精一杯応援するからね。芽衣なら大丈夫！」

舞台袖で二人は手を取り合い、互いに微笑み合った。

コンサートが始まり、芽衣の演奏の番がやってきた。彼女は深呼吸をし、ピアノの前に座った。静寂の中、最初の音が紡がれる。美しく力強い旋律がホール全体を包み込み、聴く人々の心を深く震わせた。

演奏が終わると、会場は大きな拍手と歓声で溢れた。芽衣は感極まった表情でお辞儀をし、舞台袖に戻った。

「素晴らしかったよ、芽衣！」

莉奈が駆け寄り、その瞳には涙が浮かんでいた。

「莉奈、ありがとう。あなたがいてくれたから、全力を出せたよ」

二人は手を握り合い、その瞬間、再会の喜びとこれまでの努力が報われたことを実感した。

コンサートの後、二人は夜の街を歩いていた。石畳の道に暖かな街灯の光が揺れ、異国の風景が二人を包んでいた。

「久しぶりに一緒に過ごせて、本当に嬉しい」

芽衣が静かに言うと、莉奈も頷いた。

「私もだよ。離れていた時間が嘘みたいに感じるね」

「うん。でも、離れていたからこそ、お互いに成長できたんだと思う」

「そうだね。芽衣の演奏、心に響いたよ。本当に素晴らしかった」

「莉奈が応援してくれたからだよ」

ふと、芽衣は足を止め、夜空を見上げた。

「星が綺麗だね」

「本当だ。まるで宝石みたい」

しばらく二人で星空を眺めていたが、芽衣は意を決したように口を開いた。

「莉奈、これからも一緒に夢を追いかけていきたい。離れていても、こうやって心は繋がっているから」

莉奈は微笑みながら答えた。

「私も同じ気持ちだよ。これからもお互いを支え合っていこう」

二人は再び歩き出し、未来への希望と共に新たな一歩を踏み出した。

翌日、芽衣は莉奈を自分が通う大学に案内した。キャンパス内の美しい景色や施設を見学しながら、お互いの近況やこれからの計画を語り合った。

「ここでの生活は大変なことも多いけど、その分得るものも大きいよ」

「芽衣が頑張っている姿を見て、私も刺激を受けるよ」

「ありがとう。莉奈も音楽療法の勉強、順調そうで良かった」

「うん。色んな人と関わる中で、自分自身も成長できている気がする」

カフェテリアで一息つきながら、二人はこれからの展望を語り合った。

「次は二人で何か一緒にできたらいいね」

「そうだね。オンラインでコラボレーションして、音楽を発信してみるのも面白そう」

「いいアイデア！早速計画してみよう」

再び別れる時間が近づいていたが、二人の絆は以前にも増して強くなっていた。

「次に会えるのはいつになるかな？」

「できるだけ早く会えるように頑張るよ。でも、それまでお互いの目標に向かって前進しよう」

「うん、約束だよ」

空港での別れ際、二人はしっかりと抱き合った。

「気をつけて帰ってね、莉奈」

「芽衣も体に気をつけて。連絡はこまめに取ろうね」

「もちろん。また一緒に演奏しよう」

「うん、楽しみにしてる」

飛行機が飛び立つのを見送りながら、芽衣は胸に暖かな想いを抱いていた。遠く離れていても、心はいつも繋がっている。それが二人にとって何よりの支えであった。春の訪れとともに、街には色とりどりの花が咲き誇り、人々の心も軽やかになっていた。佐藤芽衣は留学先での日々を過ごしながら、音楽の道を突き進んでいた。一方、高橋莉奈は日本で自分の目標に向かって努力を続けていた。