第31話 未来へのハーモニー
春の暖かな日差しが街を包み込む中、芽衣は留学先での日々を充実させていた。異国の地で多くの経験を積み、音楽家としても一人の人間としても大きく成長していた。一方、莉奈も日本で音楽療法士としての知識と技術を深め、多くの人々に寄り添う日々を送っていた。
ある日、芽衣は莉奈にオンラインで連絡を取った。
「莉奈、実は大きなニュースがあるの!」
画面越しに芽衣の瞳は輝いていた。莉奈も興味津々で答える。
「なになに?教えて!」
「こっちで行われる国際音楽祭に出演することになったの!各国の若手音楽家が集まって、共同でコンサートを開くの」
「すごい!おめでとう、芽衣!それってとても素晴らしい機会だね」
「ありがとう!それでね、もしよかったら莉奈にも参加してほしいの。音楽療法の観点から、音楽と人とのつながりについてプレゼンテーションをしてほしいって話があって」
莉奈は驚きつつも嬉しさが込み上げてきた。
「本当に?私が参加してもいいの?」
「もちろん!音楽祭の主催者もぜひお願いしたいって言ってるの。二人で一緒にステージに立てるなんて、夢みたいじゃない?」
「うん、ぜひ参加させてください!」
こうして、二人は再び同じ舞台に立つための準備を始めた。
数週間後、芽衣のいる街に到着した莉奈は、久しぶりの再会に胸を高鳴らせていた。空港のゲートを抜けると、芽衣が笑顔で手を振っている。
「莉奈!こっちこっち!」
「芽衣!久しぶり!」
二人は抱き合い、懐かしさと喜びでいっぱいになった。
「長旅お疲れさま。大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ。芽衣に会えるのが楽しみで、あっという間だった」
「それはよかった。さあ、まずは街を案内するね!」
芽衣は莉奈を連れて街の名所やお気に入りのカフェを巡った。異国の風景に感動しながらも、二人で過ごす時間が何よりも特別だった。
音楽祭のリハーサルが始まり、二人は他の参加者たちと交流を深めていった。多様な文化背景を持つ人々との出会いは、新たな刺激と学びをもたらした。
リハーサル後、二人は公園のベンチで一息ついた。夕陽が空をオレンジ色に染めている。
「いよいよ明日だね、芽衣」
「うん、緊張するけど、莉奈が一緒だから心強いよ」
「私も。今日はありがとう。たくさんの人と出会えて、貴重な経験ができたよ」
芽衣は莉奈の手をそっと握った。
「莉奈、あなたと一緒にいると、どんな困難も乗り越えられる気がする」
莉奈も微笑みながら答えた。
「私もだよ、芽衣。あなたがいるから頑張れるんだ」
二人はしばらくの間、静かに夕陽を眺めていた。
音楽祭当日。ホールは多くの観客で埋め尽くされていた。芽衣はピアノの前に座り、深呼吸をして気持ちを落ち着けた。舞台袖では、莉奈がその姿を見守っている。
演奏が始まると、芽衣の奏でる音色がホール全体に広がった。繊細で力強いメロディーは、人々の心に深く響いた。
演奏が終わると、会場は大きな拍手と歓声で包まれた。芽衣は満足そうに微笑み、お辞儀をして舞台袖に戻った。
「素晴らしかったよ、芽衣!」
莉奈が駆け寄り、喜びを共有する。
「ありがとう、莉奈。次はあなたの番だね」
莉奈は少し緊張しながらも、自信に満ちた表情で頷いた。
「うん、頑張ってくる!」
彼女はステージに立ち、音楽療法の視点から音楽の持つ力についてプレゼンテーションを行った。言葉と共に流れる映像や音楽が、観客の心を動かしていく。
プレゼンテーションが終わると、再び大きな拍手が送られた。莉奈はほっとした表情で舞台袖に戻る。
「お疲れさま、莉奈!とても感動的だったよ」
「ありがとう、芽衣。みんなが真剣に聞いてくれて嬉しかった」
音楽祭の最後には、全員で合同演奏が行われた。芽衣と莉奈は隣り合って立ち、それぞれの楽器を手に取った。
「一緒に最高の演奏をしようね」
「うん、心を一つに!」
指揮者のタクトが振られ、壮大なメロディーが響き渡る。異なる背景を持つ参加者たちが一つになり、音楽を通じて繋がり合う。
演奏が終わると、会場は感動と興奮に包まれた。観客の拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
その夜、二人は音楽祭の打ち上げパーティーに参加していた。他の参加者たちと交流を深め、充実した時間を過ごす。
「今日は本当に忘れられない一日になったね」
芽衣がグラスを手に微笑むと、莉奈も頷いた。
「うん。音楽の力を改めて感じたよ。そして、芽衣と一緒にこの舞台に立てたことが何より嬉しい」
「私もだよ、莉奈。これからも一緒に新しいことに挑戦していこう」
「もちろん!」
二人はグラスを合わせ、未来への希望を胸に刻んだ。
日本への帰国日が近づき、莉奈は少し寂しさを感じていた。しかし、芽衣は明るく言った。
「次は私が日本に帰るとき、一緒にまた何かしよう!」
「楽しみにしてるよ。お互い頑張ろうね」
空港での別れ際、二人はしっかりとハグを交わした。
「気をつけて帰ってね、莉奈」
「芽衣も体に気をつけて。連絡はいつでも取り合おう」
「うん、約束だよ」
離れていても、二人の絆はますます深まっていく。音楽を通じて繋がる心は、国境を越えて響き合っていた。
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