第3話

「慈善団体?ふふ、コナー君も面白いこと思い付きますね」


「咄嗟だったもので。まずかったでしょうか……」

 正式に所属が決まってから3日後のこと。今後の話し合いをするため俺はフリーデンさんとビデオ通話をしていた。

前回夜にあったことを包み隠さず話していた。

「ほんと偶然なんですけど、鋭いなと思って」

「?」

「すみません、こっちの話です!今後ともぜひそう言ってください」

 俺を押しのけ、リブが画面に割り込んで映ろうとした。

「ねえ見てみて!!かっこよくない?!」

 カメラの前で一回転し、届いたばかりの新しい服を見せていた。

 金色の装飾が施されたシンプルなジャケット、赤いリボンの腕章に描かれている花はプリムラといい、アンドロイドの象徴に決まったらしい。

「似合ってます!ヒーローみたいですね」

「ああ、シャルもな」

「……ふん」

 晴れて名前が決まった彼も着替えてはいたが反応は薄い。

 通常運転といえよう。

「コナー君は着ないんですか?」

 制服が届いていたのは二人だけではなく、俺宛にも届いていた。

 一生着ることはないだろうと思っていた白衣。普通のそれとは違って、二人の服のように腕章がついていたり、裏地があったり。

 嬉しいけど未開封だ。

「いつ何で汚されたり破られたるするかわからないもので……」

「な、なるほど………………」

 自室に来てから破壊されたものは数知れず、昨日はペン立てを、おとといは小さいテーブルをバキバキにさせられている。

 幸運にもまだ応急処置が可能なものであったこと、大事なものは実家に置いてあることから傷は浅くすんでいる。

 二人を引き受けた以上は仕方あるまい……学校の備品などは早急に返した。

 この暴れまくり問題に関してチャットでも相談をしたが、新学期が始まるまでは最低限の外出にしてほしいと。

 その分修理費負担や交換などのサポートはあるがしばらくは耐えねばならない。

 しかし世の親達はこいつらよりか弱いのに同じことをする人間をどう扱ってるんだ?

 すげえよ。

「雑談が長引いてしまいましたね!要件に入りましょう」


「新メンバーですか?」

「はい、もうこちらで選考が済みまして」

 前に言っていた進行中の企画の話だ。多様な学部、専攻が一つの敷地に詰まっているこの学校の性質を利活用し、分野を超えた共同研究を行おうというもの。

 残されている二人のアンドロイド、それぞれに”保護者”になる存在を与え経過を観察しようという試みだ。

「同い年ですし、仲良くなれると思いますよ」

「近い立場の人が増えるのは素直に嬉しいですね」

「で、今後もメンバーは増員予定なんですが……本研究に深い形で関わるのはいずれもコナー君と、これから保護者になる二人です。なのでその中から代表者、というかリーダーを決めてほしくて」

「つまりミーティングのミーティングみたいな感じです」

「なるほど……?」

「堅苦しく考えなくていいですからね!」

 そういわれてもやっぱり緊張する……どんな人なんだろう。

「ねえ暇ー!!ひまひまひま!」

「ちょっと静かに……!」

「ああっコナー君借りててすいませんリブ君、……それで日時なんですけど、本日の午後はどうでしょう?こちらの方でも予定が立て込んでまして」

「えっそれはまた随分急ですね……」

 即答はためらう。

 疲れが抜けきってないし、そろそろ何か作らないと気持ちが落ち着かないし。

「遊びに行くの?!行こうよ!みーてぃんぐ!」

「兄さんが行きたいって言ってるんだ。行くべきだよ」

 遊びじゃないんだけど、目をキラキラさせており完全に外出モードだ。

 さすがにこれを裏切るのは良心が痛む。

「こいつら落ち着かせたいので、行きます……」

 早めに終わるといいな……


 指定された場所は教養学部の建物内にある会議室。

 工学部など、科学系の建物が密集する東の現在地から少し西に進んだ場所にあり、1年以来に向かう。

 時間前に着くように寮を出たが、リブたちを寄り道から回収しつつ進んでいたら想定より遅くなってしまった。

 いろいろな不安を一度落ち着かせるため、深呼吸をしてドアを開ける。

「すみません、遅れましたか……?」

 やはり自分以外揃っている感じだった。

 初手からこれって印象最悪なのでは、不誠実だと思われるのでは……??

 などなど……よくない考えが駆け巡ったが、その緊迫感は一瞬で破らされた。

「かわいい~~~~!!」

「ぐええはなせ!」

「苦しい……」

 入るなり、二人は見知らぬ女性に捕らわれた。

 他にも大きな突っ込みどころがある。

「時間まだ2分前でした。セーフです!」

「フリーデンさん!!」

「なんですか?!」

「両方女子って聞いてないですけど……………………!」

 何話したらいいかわかんねえよ。無理だよ!

「21年生きてるんですよね?!耐性なさすぎじゃないですか?!」

「でも緊張するのはわかります。彼女たちは特殊ですから」

 うんうんと頷きそう話すが、全く見当がつかない。

「な……何があるっていうんですか?実はすごい学者とか……?専門外なのでわからないんですけど」

「えっ……本当に知らないんです……?」

「ちょっと!!そこ聞こえてるよ!!」

 巻き髪の女性は二人を解放し、声高らかに主張する。

 もう一人の女性の方をびしっと指を刺し、自信満々に話しだした。

「こっちのメリッサちゃんは最近まですっごい女優だったんだから!!学校どころか世界にもファンがまだまだいっぱいいるし!!私もその一人!」

「……」

 彼女は一言も発していなかったが凛とした佇まいで、静かに座っているだけで周りの空気を制すオーラがあった。

 それでいて華やかな容姿は、確かに人の目を引くには十分だろうなと感じる。

 けど本当に専門外のことだ……どうしよう。なんらかの広告で見たような気もするが別人だったら失礼だし、ここは包み隠さず事実を言うしかない……

「そういうの、興味なくて」

「入学してきたときめっちゃ騒ぎになってたのに!?!?!?」

 その時期は機械の新しい制御プログラミング開発に夢中だったからとか言ったら殺されるかな……

「ケイト、いいわ。ありがとう」

 メリッサさんという人はハイヒールをカツンと鳴らし、立ち上がった。

「知らなくたって構わないわ。だって今の私は教育学専攻のメリッサ・セシリアだもの」

 おおー!とケイトさん?は拍手を送った。同級生だが、ここだけ見たら完全に親分と子分だ……

「じゃあこのまま自己紹介といきましょうか」

 フリーデンさんの提案にええ、と相槌を打ってから、彼女は向き直って続けた。

「私が受け持つのは役者を目指す女の子のアンドロイドよ。まだ会ったことはないけれど、この研究で史上最高の役者に育てて、その過程で最高の教育方法を見つけてみせるわ」

「言っとくけど、女優だからって流されるまま参加を決めたわけじゃないから」

 冷静に説明を行っていたが、語りには確かな情熱が伴なっていた。

 メリッサさんが着席すると、続いてもう一人の女性が元気よく立ち上がった。

「じゃあ次わたし!わたしは経済専攻のケイト・サンフォード!」

「任される子は記者になりたいらしい~からわたしもメリッサちゃんみたいに色んなこと教えるつもり!ずっと姉妹がほしかったからほんと~~に嬉しい!!特に目標とかはないけどみんなと仲良くできたらいいな!」

 ウインクをして終えた。

 メリッサさんが女優ならば、この人はタレントのような雰囲気だ。老若男女に好かれそうな見た目に振る舞いは、ニュース番組にいても違和感がない気がする。

 リブはさっき強く抱き疲れてから警戒気味だが…………

 そしてテンションと内容の温度差が大きすぎるだろう。両者とも。

 真逆の二人は衝突しそうなイメージがあるけど、そんな素振りはなく。

 先程のケイトさんように、メリッサさんも彼女について言及した。

「彼女、甘く見ない方がいいわよ。あんたが来る前に聞いたんだけど、もううちのビジネススクールに進むことが許可されてるんだから」

「すでに……?」

 フーストニア大学は幅広く成果を出しているが、経済・経営・法学に関しては歴史も長く、経営大学院であるビジネススクールは頭一つ抜けて評価が高い。

 自分は校風や立地の面から入学を決意したものの、受験者は将来的にそこに入ることを志す者も多かった。

 フリーデンさんは言っていた。”二人は特殊だから”……

 安易にその意味がわかった。

「えへへ~あんま自分から言いだしづらいんだけどねっ!安定するために頑張らないとなって」

 卒業できれば、企業に引っ張りだこで逆に安定じゃないと思う……

「なんというか、本当すごい人が集まってるというか……」

「こなーだってすごいじゃん!シャルなおしてくれたし!」

 手短に自分の説明を済ませた。

「おっけーあなたがコナーくんね!それで二人がリブくんと……」

「シャルです。一応」

「うん!覚えた!!しっかり見るのは初めてだけどほんとうにすごいね!人そのもの?」

「全くよくできているわ。説明書とやらを私も読んだけど専門用語が多すぎて何もわからなかった……これを書いた人もコナーも、きっと沢山努力したのでしょうね」

 研究所の都合上、アンドロイドのことはあまり表に出せないため面と向かって褒められたのはフリーデンさん以外だと初めてだった。こっ恥ずかしいが嬉しい。

「だから一体どんな自信家が来るのかと思っていたのだけど……想像の100倍なよなよしてて拍子抜けしてるわ」

「うっ……」

 知ってるか……?そういうの、昔の日本でチクチク言葉って言うらしいぜ。

「ほらほら、フリーデンさん?も自己紹介して!」

 場が沈まぬ配慮だろう、ケイトさんが話を回してくれて助かった。この人がいなかったら空気は凍り付いていた。

 メリッサさんは中々気が強く、少しシャルに似ている。

「秋から研究室を受け持ちます。フリーデンです。研究自体は学生時代にたくさん触れてきたので、皆さんの役に立てればと思ってます」

「そっか~!じゃあ教授ってこと?!」

「……確かに、そうなりますね。意識してませんでした」

 彼も自分と同じく下手に回って話すことが多い。しかし年長者だからだろうか……心の余裕からくるものに感じる。

 教授になるにしては若そうだし、あまり目立ちはしないがこの人も結構な超人だ。

「それで、事前にお伝えしたように三人の中からリーダーを決めてほしいなと」

 徴収された理由でもある本題を切り出される。

 とはいえ全員いまいちピンと来ていなかった。出会ったばかりだし無理もない。

 第一結構な人数と資金のある集団で、研究や面倒以外にリーダーがする仕事ってあるんだろうか。

「……あの、リーダーになるメリットってあるんでしょうか?」

 純粋な疑問だ。

 とはいえ確実に言葉選びをミスった!多分すごい感じ悪い人になった!

「よく聞いてくれました。リーダーには今後増えるメンバーの面接官をやってもらったり最終的な全体テーマの決定権などが与えられます」

 フリーデンさんは不安を抱く俺に構わず、説明は淡々と行われていった。

 何気にすごく重大じゃないか……?

「やりたい気持ちはあるけど、あまり目立ちたくないのよね……」

「任されたらやりたいってくらいかな~自分の勉強もあるし」

「俺も……」

 テーマの取り決めは魅力的だが面接がネックだ。今までは緊急だったから堪えていたものの、対人関係があまり得意じゃないことは今日でわかってもらえただろう。

「あれ?!ゼロですか?そうしたら本部の人に任せることになりますが……」

 その言葉を聞いて、心が揺らいだ。

 本部の人というとあまり良いイメージがない。

 もし3日前のように、リブやシャルを力づくで従わせるようなやり方を取るようなことが起きたら……そんな想像をせずにはいられなかった。

「……やっぱり、立候補してもいいですか」

 よほど意外だったのか、場は一瞬しんとした。少し怖いが、耐えて次の言葉を待つ。

 最初に口を開いたのはメリッサさんだった。

「理由は、何?」

 凍てつくような視線が向く。

「ほ、ほらなんていうか、みんなの気持ちを考えて行動したいと思ったから……」

 勢いで言ってしまったものだからうまく言葉が続かず、即興プレゼンは小学生のような有様と化した。

「ケイトやフリーデンさんならまだしも、あんたは信用ならない」

 まあこうなるよな。

 落ち着け、最悪本部の人じゃなければいい……!

「立候補してくれるのは嬉しいけど~……やりたい人がいるなら任せたい!!」

「私も協力したいのは山々なんですが、自分の仕事が立て込んでいて」

 状況が複雑に。

 ケイトさんは、部屋の端の方で遊んでいる二人にも声をかけにいった。

「なら多数決にしよ!ふたりはどうかな??コナーくんがリーダー!」

「おれはいいとおもう!!」

「兄さんには悪いけど、俺もメリッサさんと同じ意見かも」

 そんな~とシャルを見つめるリブ。それでも意思は硬く変わらない感じだ。

 4人中2人が賛成、2人が反対…………

 その後も話し合いは難航し、結局決まらずまた後日ということになった。

 いまいち信用されてないんだろうか。

 会って一日目だし仕方ないんだろうけど……なんとかしなくては。


 帰りついで、フリーデンさん監視のもとに人目の少ない中庭でリブたちを遊ばせていた。

 せっかくついてきたのに大人だけで話してて申し訳なかったからな。

 ベンチに腰掛け、追いかけっこをする二人をぼーっと眺めつつ、俺は思った。

「フリーデンさんも昔は研究されてたんですよね。メンバーの人と、どうやって仲良くなってました……?」

 かつてできた友人は、大体向こうからのアクションで友達になった。

 リブだってそうだ。あの時話しかけられてなかったら、そもそも気づけなかっただろう。

 シャルやメリッサさんのようなクールなタイプとはお互い近づかなかったし、自分から興味を持つことも少なかった。

 磁石のN極同士がくっつかないようなものかもしれない。

「私は同じ時間を過ごしてるうちに自然と仲良くなってた気がします」

「年月、ですか……」

 時間も大事な要素なのかもしれないが、今はまだ実感がない。

「あの二人と仲良くなりたいんですか?」

「というか全体的に……?これから増えるであろうメンバーとか、アンドロイドとも上手くやれるか心配になってきて。今日はあまり話にもついていけなかったなあと……」

「そんなに悲観しなくても大丈夫ですよ」

 フリーデンさんはにこっと笑って夕暮れ時の空を見る。

「素直に向き合えばいいんです。共通点がなくたって、これから作っていけますし」

「……」

 今日会った2人とは、かろうじて学年と大学は一緒だ。しかし性別や生まれ、学んでいること、好きなこと、おそらく全部が違う。

 思うだけじゃ気持ちは交わらないだろう。なにか具体的な行動をしないと。

 一番素直な気持ちを示せる行動はなんだろう。

「暗くなってきましたね……そろそろ帰りましょうか?」

「えー!!まだ遊びたい!!」

 大きな声で駄々をこねた。

 無理もないだろう。寮に帰ってしまえばもとの幽閉生活なんだし。

 少し気の毒だ。新学期までとはいえ、行動を制限されるのは苦しいだろうに。

 何か気がまぎれることでもあれば……そう考えた時、一つアイデアが生まれた。

「帰ったら映画を見よう」

「えいが?」

「これなら多分、家にいても退屈しないだろうし」



 夜が明けて、2日目の話し合いへ突入した。

 1名だけを除き、昨日と同じ時間と場所に同じ面子が集まった。

 なんでもフリーデンさんはこちらに来れずリモートで、タブレットから様子を見守っていた。

「まず、俺からいいですか」

「……構わないわ」

「やる気だねえ!コナーくん」

 心身を整えて、反対勢力に挑む覚悟をする。

 最強の大魔王に挑む前の勇者はこんな気持ちだったのだろうなと、自分にしてはファンタジックな例えが浮かんだ。

 それも昨日見たもののせいだろうか。

 少し寝不足気味だったが、満を持して話を始める。

「一晩たちましたが気持ちは変わりません。他に立候補者がいないなら任せてほしいです」

「そうは言ってもあんた、まとめられるの?」

 かつて工学以外に興味を持ったことなどなかった。

 けど、今はリブとシャルがいるんだ。彼らを守るためには変わらなくてはいけないと、昨日を経て思った。

「これからは他の人を理解する努力をします。みんなが安心して研究できるような……そんなチームを、俺は作りたい」

「……」

「だから昨日は初めて、メリッサさんが出ていたっていう昔の映画を見ました」

「ねえ!それってもしかしてルオターレ?!」

 少ない情報だったのにケイトさんは見事に言い当てる。

 さすがファンを名乗るだけのことはあるなあ。

「よくわかりましたね」



 昨日夜の21時、入寮以来使っていない大きなモニターを初めて起動していた。

「すごいね!ばめんがわーって変わって!」

「そうだな……」

「……」

 リブは食い入るように見ては大きく反応を示した。シャルも興味がないかと思っていたが、じっと見つめていた。

 初めてメリッサさんが主演を務めたという、イタリアが舞台の映画。

 ”ルオターレ”。

 小さな女の子が案内人と一緒に空想の世界を巡る、明るい雰囲気の話だ。

 本当に自分たちが小さなころのもので、興行収入は500億を超えていたとか。

 今まで関心がなかったが、当時イタリア製の家具が流行っていたのは知っていた。

 この映画があったからなんだ。

 物事は繋がっていたんだと実感した。

 それは新しい発明を閃いた瞬間のように、ふと空を見上げたら快晴だったときのような気持ち。


「知らない世界を知ることは楽しいんだなって、久々に思いました」

「伝えたかったことは、以上です……」

 これで信頼に足るかはわからない、できる範囲で精一杯答えを出したつもりだ。

 静かに主張を聞いていたメリッサさんは、ゆっくり話し出した。

「もし今までの態度が高圧的に見えていたなら、謝るわ。……悪かったわね」

「あれから帰って、私も強く言い過ぎたと反省したの。慎重になりすぎて判断を誤ったと思う」

 良い教育とはいえなかった、と小さく呟く。

「でもそれは別。あまり人に関心がなさそうだったから、あんた一人の都合でチームを歪めたりしないか忌避していた事実に変わりはない」

 ごもっともだ。素性のしれないやつが急に前に出たのだから不審がっても仕方ない。

 彼女は、けれど……と続けた。

「あの映画はたくさんの人が大切にしている作品よ。見当違いな感想を言おうものならリーダーなんてもっての他」

「……でも、監督が伝えたかったことをよく理解できているじゃない」

 遠回しな言葉が表す判決に、心はかすかに高揚した。

「それって……!」

「悔しいけど、やるからには頑張りなさいよ」

「やったねコナーくん!!」

「無事に決まってよかったです!一時はどうなるかと……」

 フリーデンさんと共に、安堵する。

 メリッサさんも口調は厳しいが一生懸命人を思ってこその対応だったんだ。

 大変なことがあっても、この人たちとなら支え合っていけるかもしれない。

 話し合いは終わり、その後はすっかり緩んだ空気となった。

「映画見たってことは感想言いあえるね!どうどう?ほかに何かいいと思ったこととか!」

 思ったこと……?

 年代のわりにCG技術が素晴らしいとか、クレジットに著名な技術士がいて興奮したとか……

 でも先程歩み寄る努力と言った以上、工学関係のことを話すのは痛手だし……!

 みんなに共感されそうな、他に思ったこと……


「子役のメリッサさん、かわいかったなって……」

「…………………」


「……コナーくんって意外とだいたんだね!教授?」

「はい!私の目に狂いはなかったです!彼は言う時には言う子だと!」

 ワイワイと騒ぐ二人をよそに数秒後、ようやく状況を理解した。

「…………あっ、ちがっ、違います!そういう意味じゃなくて!」

「どゆこと?褒めたらだめなの?」

「今はそっとしとこう兄さん……」

 怖え~~……気まずい~~……メリッサさんの方見れねえ~~……

 きっと昨日みたいな虫けらでも見るような目を向けられているかもしれない……

「まあ”色々と”頑張ってねリーダー!」

「は、はい……ケイトさん」

 にやーっと笑いながら小突かれる。

 明るく流してくれるのは助かるけど頼む。誤解しないでくれ!

「呼び捨てタメ口でいいよ~!これから同じ研究室の仲間なんだし!ねっ!」

「私も……?!……別に、なんとでも呼んだら」

「じゃ、じゃあ改めて、よろしくな」

 ああ、怒ってはいなそうでよかった。根は優しい人だしな。

 急がず、フリーデンさんの言ったように時間をかけて仲良くなろう。

 ここにいる皆と。 



 でも次の研究員はリーダー権限で、ぜったいに同性にさせてもらおう……



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NAZU研 なつかわなずな @nazumochi7

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