第20話 若いチカラ
グレィスですっ!先日は双子の人魚クワルツさんとクレールさんの依頼で、みんなで海へ行きましたっ。
昨年の仲間達に加え、新たにアーダーさんも加えて、昨年と同じように、夏の日差しで熱くなった海を氷の魔力で冷まそうとしましたが、今年はアーダーさんが泳ぎながら圧倒の踊りを披露してくれましたっ。
穿ける尾びれをここまで使いこなすアーダーさんに、人魚達も驚いてて、後日マリーン族の子供達に泳ぎを教えたそうですっ!
……暑い季節も過ぎ去り、実りの秋がやって来ましたっ。朝早くからプレアリーちゃんがわたしの家に来てこう言いましたっ。
「今度アッシの母さんの地元で運動会やるんだけど、グレィスちゃんも一緒に来ない?」
「運動会、ですかっ」
「地元で毎年やっているすっごい楽しいイベントだよ!母さんも昔脚に包帯巻いてでも走ってすごく活躍したって聞いてるの!今年はグレィスちゃんを招待して、アッシと障害物競争で腕試しをしようと思ってるんだけど、どうかな!グレィスちゃんも出たいと思うよね!」
わたしは答えましたっ。
「はいっ!出たいですっ!障害物競争、わたしもやってみたいですっ!」
すると、お母さんのシルビアが話を聞いて駆け寄って来て言いましたっ。
「その運動会、私も一緒に来てもいいかな?」
「あっ、あなたはお母さんの恩人の……確か、シビルと言ってましたっけ……?」
「それはもう過去の話、今の私はシルビアですが、シビルとしての思い出は今も持っていますよ」
「この際だからお母さんも一緒に遊びに行きましょうよっ!ビースト族の運動会、わたしも楽しみですっ!」
「よし来た!当日はアッシも全力全開で頑張っちゃうからね!」
* * * * * * *
そんなわけで、運動会当日となりましたっ。
わたしとお母さん、プレアリーちゃんとエルバさんは同じ馬車に乗ってビースト族の集落へと出発しましたっ。
「私達が昔暮らしていた集落は森の中にあるんです」
「そういえばシビルだった頃、初めてあの森に来た時にグラスが地図を忘れたからどうしようと思ってたけど、グラスの父の友人が助けてくれたの」
「ヴォイテクさんね!昔母さんも世話になってたよ!今はだいぶおじいちゃんになったけど、集落の
「一体どんな方なのでしょうかっ!」
馬車が到着すると、そこはビースト族達の集落があって、もうすぐ運動会の開会式が始まる所ですっ。
「グレィスちゃんとシルビアさんには、こちらの特等席を用意しているからね!」
「お気遣い、ありがとうございますっ」
「アッシは選手宣誓もあるから、向こう行ってるね」
「プレアリーの活躍、見ていて下さいね」
開会式が始まりましたっ。まずは集落の長ヴォイテクさんが始まりの挨拶をしますっ。だいぶ歳を召しているようですが、老いを感じさせないガタイの良さですっ。
「皆さん、今日この日によくぞ集まってくれた。今回はアルブルタウンから氷竜グラスのチカラを受け継ぐと噂のグレィスが来ているようだな。彼女は今回エルバとの障害物競争で実力を確かめる手はずだ。さて、話はここまで、みんな思う存分にはしゃぐが良い!」
続いて、プレアリーちゃんがヴォイテクさんに向けて選手宣誓をしましたっ。
「宣誓!我らビースト族ならびに種族関係なくここに来た人達は、精一杯持てるチカラを見せつける事を誓います!!!」
いよいよ、運動会が始まりましたっ!徒競走や綱引き、玉入れなど、様々な競技が繰り広げられていますっ!この集落の運動会では、一人一人に得点が付いて、最後は総合優勝が一人選ばれるようですっ。
「ビースト族の他にも色々な種族が参加しているみたいですっ」
「ここはずっと昔にグラスさんと一緒に来た時はビースト族のみ運動会に参加出来たけど、近年になって他の種族も参加可能になったみたいね」
ビースト族の他にはインセクト族やバード族、少数ながらドラゴン族も参加していましたっ。
ワーワー!!!ヒューヒュー!!!
プレアリーちゃんは6歳の頃からこの運動会に参加していて、毎年のように高い点数を取っていたみたいですっ。実際、今回もかなりの活躍を見せていますっ!
……お昼にはみんなでお弁当を食べて休憩して、休憩が終わると、わたしはプレアリーちゃんに呼ばれましたっ。
「グレィスちゃん、出番だよ!」
「分かりましたっ!」
「ただいまより、プレアリーとグレィスによる、エキシビションマッチを執り行います!」
わたしとプレアリーちゃんの前に広がるコースの上には、いくつもの障害物が置かれていますっ。それらを攻略してゴールを目指しますっ!
「本気で行ってもいいからね!アッシはいつでも本気だからね!」
「わたしも本気で行きますよっ!」
よ〜いっ……
ドン!!!
まずは短距離を走ると、目の前に長い木の板があって、その上には雑巾が置いてありますっ!
『第一関門、雑巾掛け!』
「こうすればいいんですねっ!」
「四足走行の練習の成果を見せる時!」
わたしとプレアリーちゃんはほぼ横一列で木の板の上を雑巾を手で押さえながら走って板の上を綺麗にしましたっ。この木の板は新しい建物を建設するために利用されるみたいですっ。
『第二関門、ヒヨコ拾い!』
ピヨピヨ!ピヨピヨ!
「ヒヨコちゃんがいっぱいいますっ!」
「10羽拾ったら先へ進めるよ!」
柵の中に沢山いるヒヨコを手で救って、10匹籠に入れれば先へ進めますっ。ヒヨコちゃんはあっちこっちに行って思ったよりも捕まえにくく、二人共かなり苦戦しちゃいましたっ……。
それから、網を潜ったり、平均台の上を通ったりなどして、気が付けば最終関門に辿り着きましたっ!
『最終関門!!!火の輪くぐり!!!』
目の前の巨大な輪っかに火が点けられましたっ……するとっ……!!!
ボオワアアアアアアアアアアア!!!!!!
燃料の量を間違えてしまったのか、このままくぐるにはどう見ても危険な感じに燃え広がっちゃいましたっ……!!!
「さ、さすがのアッシでもこれは無理があるような……!」
「ここは、わたしのチカラを使うべき時ですっ!!!」
わたしはありったけの氷の魔力を込めた手で、目の前で燃え盛る火の輪を握りましたっ!!!
「グラスさんっ……チカラを貸してっ……!!!」
シュピキィイイイイイイン……!!!
……。
火の点いた輪は氷漬けになりましたけどっ、わたしはほとんどのチカラを使ってしまいましたっ……。
「はあっ……はあっ……」
「グレィス、あとはアッシに任せな!」
プレアリーちゃんはわたしを両腕で抱えると、わたしが凍らせた輪を飛び越えてくぐって、そのままわたしを抱えてゴールテープを切りましたっ。
ワアアアアアア!!!ヒューヒューーー!!!
観客達も、わたしとプレアリーちゃんに歓声と拍手を贈ってくれましたっ。
「みんな、ありがとう!グレィスにも、ありがとうだよ!」
「プレアリーちゃん……かっこよかったですっ……!」
・・・
まっ、そういう事で運動会はなんとか無事に終了して、わたしとプレアリーちゃんは種族の長ヴォイテクさんとお話していましたっ。
「グレィスよ、よくぞあの火の輪を凍らせたんだな。まるでそこにグラスがいたんじゃないかと思ったぐらいだよ」
「あの勢いの炎じゃ、この集落にも危険が及ぶと思いましたのでっ……」
「今回の件で競技の安全性も見直す事にしたよ。来年もまた参加してくれると嬉しいぞ」
「今度はグレィスちゃんも選手として参加すれば盛り上がると思うよ!アッシが保証する!」
「分かりましたっ!考えておきますっ!」
「それとグレィスよ、グラスに会ったら伝えておいてくれ。お前の父の友人は今も同じ場所で待っているとな」
「それじゃあ、また次の機会にねー!」
こうして、わたし達はアルブルタウン行きの馬車に乗ってビースト族の集落を後にしたのでしたっ。走り去っていく馬車をヴォイテクさんはチカラ強い眼差しで見ていたのでしたっ。
「若いチカラは、いつの時代も侮れないものだな、我が友サクスムよ……!」
第21話へ続く。
グレィスと竜の世界 早苗月 令舞 @SANAEZUKI_RAVE
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