第19話 踊る人魚

 グレィスですっ!先日は母シルビアが昔住んでいた村の跡地に作られた『シビルズ村』という所に来ましたっ!


 その村では、昔の母のように親を喪った子供達が保護されて有志の大人達に守られて大切に育てられていましたっ。


 母の両親をはじめとするかつての住民達の慰霊碑も見せてくれて、わたし達は先祖の遺志に想いを馳せて、また次に目指すべき所を見据えたのでしたっ!


 ……色々な事があって、季節は夏になりましたっ。朝早くにお母さんがわたし宛の手紙を持って来ましたっ。


「グレィス、マリーン族の集落から手紙が来てるわよ」

「あの双子の人魚からですねっ」


―――――――――――――――――――――


 グレィスさんへ。


 お久しぶりです。日に日に暑くなってきましたね。昨年は海の中の熱さを和らげてくれて本当に感謝しております。


 さて、ここ最近のグレィスさんの活躍の噂はマリーン族の集落にも届いております。今回はグレィスさんに直接仕事の依頼をする形でお送りします。


 一年前に使った穿ける尾びれの品質改良に成功しました。グレィスさんに使い心地を確かめて欲しいです。当日はまた海が熱くなる事が予想されますので、また協力してくれると嬉しいです。もちろん、お友達を連れてくるのは大歓迎でございます。


 きらめく海で、私達は待っています。


 クワルツ&クレール


―――――――――――――――――――――


「また、わたしの助けが必要みたいですっ」

「何見てるの?マリーン族って何?」

「うわっ!アーダーさんっ!いつのまにっ!」


 夢中で手紙を読んでいたら、すぐ後ろにアーダーさんがいましたっ。


「面白そうに見ているから気になって近付いてみたの。尾びれを穿いて泳げるとかですって?」

「そうですっ、昨年お友達と一緒に尾びれを穿いて泳いで熱い海を冷ましたんですっ」

「わたくしもご一緒してもよろしいでしょうか?」

「もちろんですっ!アーダーさんもきっと楽しめると思いますっ!」


 その後わたしはポース君とプレアリーちゃんにもマリーン族の集落へ行こうと告げて、四人で行く事になりましたっ。


・・・


 当日の朝。


 わたし達は海辺行きの馬車に乗って出発しましたっ。


「この人がグレィスちゃんの言っていたアーダーさんなんだね、初めまして」

「あなたがポースさんですわね、お会い出来て嬉しいわ」

「アッシはプレアリー!さすがに友達100人で海に行くのはまだまだ先かー!」

「今日はもっと楽しい事になりそうですっ」


 馬車の中で楽しくお喋りしていたら、あっという間に海辺に着いちゃいましたっ。小屋で着替えて、浅瀬の岩場に行くと、そこにはクワルツさんとクレールさんが待っていましたっ。


「ようこそいらっしゃいました……あら、そちらのお方は?」

「今年の春にアルブルタウンに引っ越して来たアーダーと申しますわ!」

「彼女も町のお手伝いを頑張っているんですっ」

「こちらに私クレールが丹精込めて作った尾びれと、外付けの酸素カプセルがあります」

「こちらも可能な限り生産しましたが、一人増えたぐらいでも問題なさそうですね」


 クワルツさんはわたし達にそれぞれ穿ける尾びれを渡しましたっ。今回新たに用意された酸素カプセルは、チューブで口に繋ぐ事によって水中でも呼吸可能になるみたいですっ。


「慣れてくれば以前のようにカプセル無しでも泳げますけど、まずはこちらの使い心地を試して下さいね」

「それじゃあ、ワタクシの海中ショータイムをお見せいたしますわ!」


サブーーン!!!バシャバシャ!!!


 アーダーさんは尾びれとカプセルを身につけると、初めてとは思えないほど華麗に泳いでみせましたっ!


「アーダーさん、すごいですっ!」

「幼い頃からのダンスレッスンで、体幹もすごく鍛えられたのですわよ!」

「アッシも負けてらんないなー!」

「この尾びれ、ぼくだと慣れるのに時間かかったからね。もう少し泳ぐ練習をしていこう」


 しばらくわたし達は慣らしのためにしばらく自由に泳いでいると、クワルツさんとクレールさんが呼び出しましたっ。


「さて、ここからが本日の依頼となります。まだ働ける歳ではないポースさんとプレアリーさんも、お返しは出ませんがお手伝いしてもよろしいです」

「さあ、早くこちらへ」


 わたし達は二人の案内で、昨年と同じ猛暑で高温化した海域に泳いで行きましたっ。以前よりも尾びれの品質が良くなったからか、長く泳いでもあまり疲れなかったですっ。


「ここは、昨年わたし達で涼しくした所でしたねっ」

「昨年よりは少し暑さが和らいだとはいえ、海中の温度上昇は私達マリーン族をはじめ、海に生きる者達全ての問題になっています」

「今年は仲間が一人増えたので、きっとさらに効果的に出来る事でしょう」


 昨年の事を話すと、クワルツさんが先を泳ぎ、わたしが氷の魔力を放ちながら海を冷やし、その後ろをクレールさんとポース君とプレアリーちゃんが泳いで強い流れを作る事によって、海を冷やしたんですっ。


「昨年と同じフォーメーションで行こうと思いますが……」


 すると、アーダーさんが言いましたっ。


「ワタクシ、グレィスさんの後ろで踊りながら泳いでもよろしいでしょうか!」

「良いアイデアですっ!よろしくお願いしますっ!」

「この尾びれのさらなる可能性を見出せそうです、後ろからその踊り、見ていますよ」


 クレールさんもかなり乗り気のようですっ。わたし達はアーダーさんを加えてフォーメーションを組むと、熱くなった海に向かって泳ぎ出しましたっ!


「さてっ、わたしのチカラも世界の一部っ!」


シュバシュピィイイイイン!!!!!!


 わたしは両手からグラスさんより受け継いだ氷の魔力を放ち、海を冷やし始めましたっ。


「この感覚……最適な踊りが見つかりましたわ!!!」


シュパーーーン!!!ザブーーーン!!!


シュパーーーン!!!ザブーーーン!!!


 その後ろでアーダーさんは、まるでイルカを思わせるようなジャンプを見せてくれましたっ!これがダンスで鍛えた体幹の賜物なのでしょうかっ……!


「すっごい跳んでるーーー!!!」

「アーダーさんも、凄いチカラの持ち主なのかな……」

「ここまでこの尾びれを使いこなせる人がいたとは……!」


 わたしが氷の魔力を放つ中、アーダーさんは海中をキリモミ回転したり、蛇行遊泳したりと、圧倒的な泳ぎを披露してくれましたっ。


 こうしているうちにも、この海域は十分に涼しくなりましたっ。


「皆さん、今回もありがとうございました」

「アーダーさんの泳ぎ方、我々マリーン族から見ても前代未聞の泳ぎでした……」

「水中でもダンスレッスンした事あったから、その時の経験が真価を発揮しましたわよ!」

「アーダーさんなら、世界のどこでも踊りで解決出来そうですっ……」

「アーダーさんのその泳ぎ方、アッシにも教えて下さい!」

「これぐらい出来れば、ぼくも立派なドラゴンになれるのかな……」


 こうしてわたし達は、アーダーさんの活躍もあり、マリーン族の集落を再び救う事が出来ましたっ。


   * * * * * * *


 それからまたしばらくして、今度はアーダーさんがマリーン族の集落に呼ばれましたっ。


「泳ぎ方を覚え始めた幼いマリーン族のみんなに、アーダーさんの泳ぎを見せて欲しいのです」

「泳ぎ見たーい!ぴちぴちー!」


 クワルツさんとクレールさんの側には、マリーン族の子供達が小さな尾びれをフリフリしてアーダーさんを憧れの視線で見つめていましたっ。


「了解しました!それではマリーン族のみんなに、海中ショータイムをお披露目といたしましょう!!!」


 わたしとポース君とプレアリーちゃんも、その圧巻の水中舞踊を見つめていましたっ。今年の夏は、アーダーさんが引っ張っていきそうですっ!


 第20話へ続く。

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