第2話

「帰れ。と言ってもお前は困るだけであろうな」


 本当に太陽のように輝いて見える金髪。そして、紺碧の瞳。


 マエリエはそれを眩しそうに見た。

 

 マエリエは十六歳ほどに見える、そこそこ筋骨が発達した少年だ。

 

 美術品にある男児の彫像のような容姿。

 

 修道士でなければ、女子が放ってはおかなかっただろう。


 部屋の中には、聖者の執務用の横長の作り付けの机があった。


 壁際には、これも作り付けの本棚があり、ビッシリと蔵書が並んでいた。


 聖者が博識なのは当たり前か。マエリエが聖者に向かって頭を下げる。


「当然でございます。そうなったら私は行く道を失ってしまいます」


「本当に教える事などないのだぞ。俺は弟子をとるような柄ではない」


 心底うっとうしそうな表情の聖者カイリエ。


「修道士マエリエでございます。今後、宜しくお願いいたします」


「この私に、弟子、か!」


 聖者カイリエが奇妙な笑いを声を上げる。


 それは明らかに嘲笑に聞こえた。しかも、自分自身への。


「数年前だったらあり得なかっただろうな」


「どういう意味でしょうか?」


「教団の上層部にでも訊け。口さがない噂を話してくれるだろう。ペラペラとよく喋る。喋るしか能がない連中だからな!」


 聖者カイリエが机に着いた。そして、マエリエにも椅子に座るよう促す。


「今更言うまでもないが、世界の殆どは我が教団が支配している。異教徒もいないではないが、我々からすれば少数派だ。そして、この教団を支配している者こそが、聖者。つまり、私が世界の王だ」


 聖者カイリエが淡々と事実を告げる。そこには何の気負いもないように見えた。


 ただ、やはりどこか嘲笑めいた雰囲気を感じさせる。


「存じております」


 マエリエが頷く。


「まあ、何故か今の時代、聖者は二人いるわけだがな。まあ、それは置いておいて」


 つまり、おめでとう、


「お前は、この世界の副王だよ」


 聖者のその言葉も、どこか嘲笑めいており、マエリエは素直に喜べなかった。


「失礼ですが、聖者様はお年は」


「見た目はどうだ?」


「大変お若いようにお見受けいたします。10年ほどしか違いがないように」


「そうだよ。実際、私は若いんだ。まあ、若いと言っても10歳差。あの時の騒動をお前が知らなかったとしても無理はない」


 マエリエが少し首を傾げる。


「今日はとりあえず用は無い。神殿内を見学でもして来たらどうだ? 荷物などは下々のものが、お前の部屋まで勝手に運ぶだろうしな」


「では、お言葉に甘えて」


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