聖者カイリエ

白河 遼

第1話

 文字通り世界を支配しているルクシオ教。


 その修道士であるマエリエは、今日、聖者との対面を命じられた。


 余りの光栄に身が震えた。


 聖者は、ルクシオ教の事実上の指導者。


 神を除けば、ルクシオ教、最高の存在だ。


 聖者は聖者が年を取った時、あるいは、亡くなった後に、世界中の少年から選抜される。


 幼い頃に優れた資質を持った少年が集められ、完全な英才教育の下に育てられる。


 世界中から集められた優れた資質を持つ少年の中で、聖者に選ばれるのは原則たった一人。


 それは、神の啓示によって選ばれるとされているが、実際のところは、単なる修道士であるマエリエには判らない。


 そして、非常に珍しい事に、今上の聖者は二人なのだった。


 ひとりの聖者は遠方の地で活動している。


 マエリエが会うのは、もうひとりの聖者カイリエだ。


 神殿に向かう足取りも軽く、強い期待に満ちてマエリエは心を飛び立たせる。


「中です」


 白い石で作られた大きな扉の前には、神殿長が待っており、扉を開いて、マエリエを中へと導く。


「聖者様。お弟子様がお着になられましたよ」


 太陽の光を浴びて、金色の髪が輝いているように見えた。


 空のような青い瞳、美しい唇、聖者の名にふさわしい姿だった。


「弟子などいらんと、あれほどいったのにな」


 聖者カイリエが、その水蜜桃のような口を開いた。


「そういう訳にはまいりません。聖者様は、ひとりは、弟子をお抱えになるのが慣習でありますれば」


 聖者カイリエがゆっくりと顔を上げる。


「本当に弟子などいらないぞ。お前に教えることなどなにもないのだ」

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