せんげどあいしょ

野良狐

第1話: 君よ、一体いつの時代なんだ?侍になる夢を叶えられるのか?

雪が降りしきる中、僕はただ強くなりたいと思っていた。あの頃のことはもうよく覚えていない。若い頃は世界一の侍になるのが夢だった。夢と希望と憧れがあった。今は、かつて存在した時代の話、つまり、僕の青春時代の物語を語ろうと思う。


僕は、街から遠く離れた小さな村で生まれた。両親は貧しい農家で、収穫が良く、作物を売ってうまくいくと、数日だけ贅沢な生活を送ることができた。父はいつも「想像を超える何かを目指せ」と言っていた。祖母が語る侍の物語に感銘を受け、僕は侍のように剣士になることを決意した。ある日、通りすがりの侍が森に捨てていった刀を見つけ、密かに森で剣の腕を磨いた。18歳になるまで、ひたすら修練を続け、父の農家を継ぐ時が来た。


父「息子よ、もう私も年老いてきた。お前も立派な大人になった。そろそろ農家の跡を継ぐべきだ。」


水城「でも父さん、僕は農家になりたくないんです。侍になりたいんです。それが僕の夢なんです。」


これが僕、阿羽水城だ。父は阿羽国吉、現農家の主人だ。


母「水城、お父さんはもう大変疲れている。医者にもそろそろ引退した方がいいと言われた。もうそんな馬鹿げた夢は諦めて、大人として振る舞うべきだ。」


母は阿羽照津。厳しくも優しい人だった。怒らせると山の大鬼よりも恐ろしい。


水城「母さん、理解できないのはお母さんの方ですよ。僕は家業を継ぎたくないんです。僕は自分の夢を追いかけたいんです。」


母「水城、もういい加減にしろ!夢だけでは生きていけない。近所の農家に話をしたところ、娘と結婚して農家の跡を継いでくれれば、畑の半分をくれるという話だ。彼の娘は美人で良い子だ。子供の頃からお前を好きだったと聞いてる。そんな素敵な女の子の夢を壊すつもりか!」


水城「お母さん、何を言ってるんですか!お母さんが僕の夢を壊そうとしてるじゃないですか!」


僕は怒って部屋に駆け込み、家出を決意した。しかし、父に気づかれてしまった。


水城「邪魔しないでください!」


父「旅の途中で食べる物と、お気に入りのぬいぐるみ、そして寒さをしのぐ布団と、危険な旅に備えた装備を用意しておいたぞ。」


水城「父さん、何でそんなことを…」


父「水城よ…想像を超える大きな夢を持て。世界で一番高い山だって、蟻塚にしか見えないほど大きな夢を持て。必ず戻ってくるだろう。」


水城「ありがとう…父さん。」


父「行ってらっしゃい、我が子よ。」


それから一週間後、僕は雨宿りをしながら、途方に暮れていた。食べるものも無くなっていた。…腹が減った。焼き芋が食べたい。…家に帰ろうか?母の言うことを聞けばよかったのか?「想像を超える何かを目指せ」と父は言った。あきらめてはいけない。父さんも僕のことを信じてくれている。夢を叶えられずに帰るなんて、父さんを悲しませるだけだ。雨がやむのを待って、侍として仕事を探そう。


一時間後…


雨は上がった。仕事を探さなくては!近くに侍が必要な村があるかもしれない。


水城「あれは何だ?」


看板にはこう書かれていた。「近隣の村が助けを求めています。報酬:金貨5枚」金貨5枚!?これで高級焼き芋が食べられる!村はすぐ近くにあるようだ。行ってみることにしよう。僕の壮大な冒険の始まりだ。将来は教科書に載るだろう。「水城伝説」「戦国水城」「伊達水城」…僕の伝説の始まりだ。


村に着くと…


人…人が多すぎる!報酬が高いから当然か。一体、この村は何を助けを求めてるんだろう?しばらくすると、村長らしき老人が現れた。亡くなった祖父を思い出させた。


村長「皆さん、こんにちは。きっとこの村の報奨金目当てに来たのでしょう。」


賞金稼ぎ「おいジジイ、何でこんな大金を払うんだ?何か裏があるんじゃないのか?」


村長「とんでもない。この村の作物を盗んでいる者がいるのだ。」


賞金稼ぎ「誰が犯人か分かってるんでしょ?」


村長「ああ、猪だ。」


賞金稼ぎ「猪!?こんな大金をかけるのはおかしいだろ!詐欺だ!」


皆、怒って立ち去っていった。残ったのは僕と、浪人風の男だけだった。男は棺桶のようなものを運んでいた。一体何のために?髪の色も変わってるな。新しい流行りだろうか?


村長「お二人さん!」


水城「はい!」


村長「お二人が残っている。この仕事は、お二人にお願いする。報酬は2倍だ。」


水城「承知いたしました。」


村長「猪は夜に来るから、今日はよく休んでくれ。」


夜…


水城「この村の人たちは親切だ。ご馳走にありつけ、綺麗な女性たちに体を洗ってもらい、服まで洗ってもらった。なんて素晴らしい村なんだ!」


棺桶の男「…楽しかったな…」


水城「そうだね。できればずっとこの村にいたいけど、叶えなきゃいけない夢があるんだ。」


棺桶の男「夢?」


水城「そうだ!最高の侍、剣士になるのが夢だ!宮本武蔵より有名で、佐々木小次郎より強くて、新撰組より強い侍になる!」


棺桶の男「それは一体何のためなんだ?」


水城「だって、そう決めたんだ。父さんはいつも『想像力を超える何かを目指せ』と言っていた。父さんはいつも僕の夢を応援してくれた。君にも叶えたい夢はあるのか?」


棺桶の男「関係ない。」


水城「そうか。ところで、なんでそんな重い棺桶をいつも持ってるんだ?」


棺桶の男「お前の知ったことじゃない。それに、この棺桶に手を出すと殺すぞ!」


水城「わかった。」


変な男だな。でも、彼にも事情があるんだろう。


棺桶の男「そして、一体何をしているんだ?」


水城「お腹がすいてて、焼き芋が食べたいから金がほしいんだ。」


棺桶の男「そうか。」


水城「君はどうしてこんなことをしてるんだ?」


水城(これはヤバい。殺されるかも。)


棺桶の男「金が欲しいからだ。」


ずいぶんとストレートだな。


水城「わかった。」


水城「自己紹介しよう!僕は阿羽水城だ!よろしく!」


棺桶の男「名前なんて聞きたいか?」


水城「いや…だって、初めて会った人に名前を言わないなんて変でしょ?」


棺桶の男「…そうだね…僕の名前は…ネロだ。」


水城「ネロ?」


棺桶の男「ネロと呼べ。」


水城「ああ…そうだな。」


ネロ「なんでそんなに驚いてるんだ?名前を知りたがってたのは君だろ?」


水城「いや、ただ名前を聞いて驚いただけだ。」


(音)


水城「あれは何だ?猪か?」


大きな音が聞こえた。ネロと僕は畑の近くに隠れた。


水城(小声で)ネロ、音を立てないように気をつけろ。猪を驚かせないように。僕が右から、君が左から行く。


ネロ「わかった。」


水城「慎重に近寄らないと。猪は危険だからな。」


ネロと僕はそっと猪に近づこうとしたが、枝を踏んでしまい、猪は森に逃げ出した。


水城「おい!逃げるな!」


僕は猪を追いかけた。かなり時間がかかった。


水城「ネロはどこにいったんだ?まあ、いいか。一人で報酬を貰おう。」


しばらく追いかけると、ついに猪を追い詰めた。ところが、猪がすごい音を立てると、さらに大きな音がした。


水城「何だったんだ?」


ネロが現れ、僕を岩のそばに連れて行った。


水城「ネロ、何をするんだ?もう猪を捕まえかけたのに。」


ネロ「…静かに…」


ネロは何かを心配しているようだった。すると、巨大な怪物が現れた。


怪物「どうしたんだ、小さいの?誰かに傷つけられたのか?」


猪「いや」


猪が喋った!


猪「人間に襲われたんだ。」


怪物「…あの憎い人間ども…早く死ねばいいのに。」


(…何だ、あれは…)


(水城の家)


母「どうして水城を一人で行かせたんだ!」


父「水城はもう大人だ。自分の道を選べる。」


母「バカな!水城は何も知らない!外の世界を知らない!」


父「心配しすぎだ。」


母「もちろん心配よ!私は…私は…水城を真実から守りたいだけなの。」


水城の妹「母さん、どんな真実?」


母「何もないわ。」


父「嘘をつくな。彼女はもう真実を知る年齢だ。」


水城の妹「父さん、一体何のこと?」


母「この世界の真実のことよ。」


水城の妹「この世界の真実?」


母「そう、この世界の真実とは…闇と危険に満ちた時代…悪魔の時代…だ。」


(水城のもとへ)


水城「あれは何だ?」


ネロ「アヤシの一種だ。」


水城「アヤシ?そんなものは存在しないよ!子供だましだよ。」


ネロ「この時代には、アヤシと呼ばれる存在がいる。彼らは、特定の概念を糧とする不思議な存在だ。中には、日々の生活を豊かにする者もいるが、多くは悪魔のような存在で、人間の苦しみを楽しみ、人間や生き物を使い捨てのおもちゃのように扱う。」


怪物「人間の臭いがする。殺して、彼らの先祖が我々の種族を料理したように、料理してやる。」


アヤシ猪・親「ブ。」


猪「父さん、人間のやつらが近くに隠れてるのをみた。」


アヤシ猪・子「タ。」


水城「あの怪物、ものすごい大きさだ。見つかったら終わりだ。」


僕は恐怖で体が動かない。


ブ「人間の臭いがする。二人いる。一人はオシッコしてる。」


タ「父さん、汚い。オシッコする人間は食べない。」


ブ「うるさい。何でもありがたく食べろ。さっき食べた人間だって、この村から放逐された人間どもだぞ。」


タ「なんで人間はあんなにおバカなんだ?」


ブ「彼らは我々より劣った存在だ。我々にひれ伏すべきだ。」


タ「分かった。人間はゴキブリみたいなものだな。」


ブ「そう!誇らしいぞ!お前は良い息子だ!」


タ「僕も父さんが誇りに思ってくれる息子で嬉しいよ!」


ブ「よし、人間を捕まえよう。そして、お前の好きなように料理してやろう。」


タ「本当だ!やったー!」


この怪物たちは僕たちを食べるだろう。


ネロ「水城、落ち着け。奴らは臭いで僕たちを見つけ出す。音を立てると、すぐに襲われる。」


水城「そうだ…そうだ…これは悪夢だ…ただの悪夢だ。」


ブ「人間の臭いがする。」


タ「父さん、本当にすごいね!」


ブ「大げさなことを言うな。人間が抵抗する方が面白い。」


(僕たちの場所がバレた!もう終わりだ!)


「必ず戻ってくるだろう。」


いや、あきらめられない。夢を叶えなくては。これは試練だ。侍は臆病者じゃない。


ブ「人間よ、降参しろ。そうすれば、殺さずに済むかもしれない。だが、抵抗するなら、もっと面白くしてやる。」


水城「…私…」


タ「ふふふ…人間は怖がりすぎて喋れない。」


水城「ああああああ…」


僕は突然叫んだ。そして、考えもせず怪物に飛びかかった。「生き残りたい!」「生き延びたい!」それしか考えられなかった。怪物は強烈な攻撃で私を吹き飛ばし、岩に叩きつけた。


ブ「簡単だったな。」


タ「父さん!やっぱり、簡単に人間を倒したね!」


ブ「そうだな。だが、まだ生きているぞ。」


タ「え?」


ブ「人間はまだ生きているが、血を出しすぎて、すぐに死ぬだろう。」


タ「分かった。」


ブ「哀れみをかけてやろう。次の攻撃で終わりにしてやる。」


タ「父さん!なんて優しいんだ!大きくなったら、父さんみたいになりたい!」


(どうして…まだ生きているんだ?こんなに血が出ている…もう終わりだ。母さんの言うことを聞けばよかった。近所の農家の娘と結婚すればよかった。農家の跡を継げばよかった。父さんを休ませるべきだった…すべて…すべてが、くだらない夢を追いかけたせいだ。)


(母さん…父さん…ごめんなさい。迷惑をかけたことを許してください…)


ネロ「水城、ここで諦めるのか?」


水城「ネ…ネロ?」


ネロは僕を助け、怪物に襲われるのを防いでくれた。だが、傷は深かった。


水城「ネロ…逃げろ…」


ネロ「ばかな、黙っていろ。これを飲め。」


ネロは痛み止めをくれた。


ネロ「これで少しは痛みが和らぐ。村に連れて行って、医者に見てもらわなきゃ。」


水城「ネロ…どうして…」


ネロ「お前には叶えたい夢があるんだろ?死なせるわけにはいかない。家族も待ってるはずだ。」


水城「ネロ…」


ネロ「もういい。僕が全てやるから、その棺桶は守ってろ。触るな。必要なときだけ触れ。」


水城「わかった。」


ネロは棺桶を置いて、怪物と対峙した。


ブ「そうか、お前がもう一人の人間か。これは面白いぞ。」


ネロ「何が面白いんだ?」


ブ「さっきの人間とは違って、お前をもっと苦しめてやるつもりだ。」


ネロ「そうだな。僕も、同じだ。」


ブ「ふふふ…。」


タ「ふふふ…。」


ネロは怪物の攻撃を華麗に避けた。だが、あの怪物は強すぎる。ネロは勝てるのだろうか。


ブ「わかった…なら、これくらえ!」


ブッ!


怪物は強烈な一撃を繰り出したが、ネロはそれをかわした。


ブ「速いな。感心したぞ。だが、次はかわせないぞ!」


怪物は次々と攻撃を仕掛けてきた。ネロはそれを次々とかわす。


ネロは華麗に攻撃をかわし続けた。


タ「父さん!」


ブ「生意気な人間め!いい加減にしろ!」


怪物は攻撃を仕掛けてきた。ネロは構え、深呼吸をした。そして、静止した。


ネロ「…」


ネロ「水」「天」「神楽」「鯉」「扉の先」「の竜」


ネロは刀を動かし、川に泳ぐ鯉の絵が現れた。そして、鯉が優雅に舞う。そのうちの一匹が龍に変身した。ネロは龍と舞うように軽やかに動き、怪物の腕を斬り落とした。


ブ「この野郎!よくもそんなことを!」


タ「父さん!」


怪物は激怒し、ネロに襲いかかった。ネロは落ち着いて最後の攻撃の準備をした。


ネロ「炎」「火」「儀式」「神楽」「踊る」「狐」


ブッ!


ネロは刀を構え、狐火のような技を繰り出した。怪物は勢いよく襲いかかったが、ネロは一瞬にして怪物の首を斬り落とした。


タ「父…父さん!」


小さい猪は、灰になる父親の傍らで泣いた。


ネロ「復讐したいなら、強くなれ。だが、弱いままだと死ぬぞ。」


タ「くそ!人間め!お前たち人間は皆殺しにしてやる!」


ネロ「お前の程度じゃまだ無理だ。もっと強くなってから来い。」


水城「ネロ…」


僕は意識を失った。目を覚ますと、古い小屋の中にいた。ネロは茶を飲んでいた。


ネロ「起きたか、水城。」


ネロは落ち着いて餅を食べていた。僕は何が起きたのか分からなかった。夢だったのか?と自問自答していたが、ネロが話してくれた。


ネロ「アヤシに襲われて気絶した時、お前に肩を貸して、村の医者に見てもらった。もう少し遅かったら死んでたよ。」


僕は驚いた。ネロは重い棺桶を背負って、僕を背負いながら村まで連れて行ったのだ。そして、あの怪物と戦った。そして、僕は死にかけたのだ。


ネロ「水城、これからどうする?」


水城「…」


ネロ「あの世の出来事を見てきただろう?この時代は、見た目ほど平和じゃない。歴史には載っていないが、この時代は、悪魔のような怪物が跋扈する、最も危険な時代だ。」


水城「分かった。」


ネロ「水城、まだ夢を追いかけるのか?」


僕は迷っていた。家に帰れば、食べ物には困らない。結婚して、子供にも恵まれるだろう。だが、父さんには顔向けできない。夢を諦めて、平凡な人生を送るのか。だが、夢を追いかければ、またあんな怪物に襲われるかもしれない。そして、命を落とすかもしれない。僕は死んだくない。


水城「ネロ、決めた。」


ネロ「…」


水城「もっと強くなるために、君と一緒に行きたいんだ!ネロ、頼む!一緒に行かせてくれ!」


ネロ「何だと?」


水城「ネロ、君と戦っている時、すごい感動したんだ。弱いけど、君とならきっと夢は叶うと思ってる。」


ネロは驚きを隠せない様子だった。


ネロ「邪魔になるだけだ。」


水城「分かってる。でも、それでもお願いだから。」


ネロ「仕方ないな。だが、ルールを設ける。」


水城「ルール?」


ネロ「1.棺桶には触るな。許可なく開けてもいけない。2.食料は自分で調達しろ。緊急時を除く。3.後悔させんなよ。」


水城「わかった。」


ネロ「よし、明日出発だ。寝坊したら、置いていくぞ。一人でも大丈夫だ。」


水城「わかった。」


ネロ「では、休め。」


水城「ネロ。」


ネロ「何だ?」


水城「ありがとう。」


ネロは小屋を出て、買い出しに行った。翌朝、村長から報酬を受け取った。大部分はネロに渡した。そして、僕たちの旅が始まった。


ネロ「これから先、危険が待ち受けている。準備はいいか、水城?」


水城「嘘は言わない。まだ準備はできてないけど、必ず強くなって、夢を叶える。」


ネロ「分かった。」


ネロと僕は村を離れ、旅を続けた。この物語は、異質な時代の話だ。架空の時代なのか、過去の話なのか、未来の話なのか分からない。歴史には記録されていない時代だ。平和に見える世界は、実際には、アヤシと呼ばれる悪魔のような怪物たちが跋扈する、危険な時代だったのだ。


第1章:君よ、一体いつの時代なんだ?侍になる夢を叶えられるのか?

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