僕のミューズ
今まさに 僕の目の前で
物語が閉じられようとしている
目を開けて 終焉を見届けるべきか
見ない振りをして 嘘の続きを始めるべきか
どちらも出来ない僕は
ゆっくりとおしまいのページをめくる指を
ぼんやり眺めることしか出来なかった
その終わりは 「めでたしめでたし」とは
まったくもってかけ離れていて
誰も笑顔にならないし
気持ち良く眠ることも出来ないような
散々なものだったけれど
君は この上なく安心した顔で
席を立ったんだ
残された物語は
後味の悪い余韻だけを置いて
「これからどうしますか」と 僕に訴えている
売ればいくらになるだろう(引き取り手などいないのに)
燃えるゴミに出せばいいかな(灰になって舞い戻るかも)
続編も 番外編も スピンオフも
もう君がいないから
どれひとつ書けないや
僕のいない これからの毎日で
君にはいつか「幸せに暮らしましたとさ」なんて時が
くるのかもしれないけれど
心の狭い僕は その言葉を書く境地に至れる気がしない
ハッピーエンドに出来なくてごめんね
君は 僕のミューズだったよ
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